知識・Tips 2023年01月31日

接着剤はどうやって選ぶ? 接着剤カタログの読み方を知る!~耐久性編~ |接着剤の基礎知識

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接着剤にはたくさんの種類があります。どんなものでも、どんな環境や場所でも、万能に使える接着剤はまだありません。だからこそ用途に応じた耐久性、強度を持つ接着剤を選ぶことが大切です。接着剤カタログには、接着剤を選ぶためのヒントが隠されています。

カタログの読み方をマスターして、適切な接着剤を見つけましょう。

接着剤の耐久性とは

接着剤がさまざまな理由で劣化すると、接着力が低下して剥がれたり、破損したりしてしまいます。接着剤の劣化はさまざまな外的要因が複合的に作用することによって起こります。
主な外的要因を見てみましょう。

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このように、接着剤に影響を及ぼす作用はいくつもあります。
想定される劣化要因を踏まえて接着剤を選定しなければ、求める性能を維持できず、耐久性に問題が起こってしまう可能性があるのです。

カタログには耐久性試験の結果が掲載されています。カタログのデータを参考にすることで、適切な接着剤を選ぶ上でのヒントとなります。カタログに載せられた耐久性試験データの読み方を確認していきましょう。
 

カタログで分かる接着剤の「耐久性」

熱への耐久性

金属を接着する場合など、高温の環境下に置かれる可能性のあるものは耐熱性が要求されます。接着剤の耐熱性はカタログに記載されている熱老化試験(耐熱試験)の結果を参考にしてください。熱老化試験とは、試験片を所定の温度下に一定時間置いたときに、熱によって接着強度がどれくらい変化するのかを測定する耐久試験です。

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まず試験データで確認すべきことは、接着の強さを何の試験で測定しているかということです。例えば引張せん断接着の強さとは、接着面に平行な引張りせん断荷重により測定する試験方法です。すなわち、試験片を平行に引っ張ったときにどの程度の強さで剥がれるかという試験です。

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続いて、温度や時間が想定される使用条件に合っているかどうか、試験片の素材はどうかといった条件面を確認する必要があります。
被着体の素材は試験結果に大きく影響を及ぼすため、注意が必要です。
耐熱試験は加速試験として参考にされることもありますが、そういった面でもどのような条件で試験が行われているかの確認は大切です。

グラフの横軸は時間の経過を示しています。
短時間の暴露による耐熱性を見るのか、それとも中長期の耐熱性を見るのかを確認します。
この表では、短期では接着強さは上がり、その後はほとんど変化なく推移しているということが分かります。
 

水分への耐久性

構造用など屋外へ置かれることが想定されるものなどは、高温高湿度への耐久性が要求されます。耐湿試験は試験片を所定の温度・湿度下に一定時間置いたときに熱・水分による劣化で接着強度がどれくらい変化するかを測定する試験です。

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熱老化試験と同様に、試験の条件や、接着強さの測定方法を確認し、参考にしてください。接着強さがスタート時からどのように変化していくかがポイントです。
耐湿試験は、試験の条件のような環境に置かれたときの想定というよりも、加速試験として劣化予測のために実施されることが多いようです。
 

温度変化への耐久性

屋外における季節や昼夜の変化、機械のオンオフによる変化など、温度変化がある環境への耐久性を確認するためには、冷熱衝撃試験(冷熱サイクル、サーマルショック、ヒートショック)の結果を参考にしてください。

冷熱衝撃試験とは、試験片を高温・低温環境に繰り返し置き、接着剤と被着体の線膨張係数差で生じる剥がれや割れによる強度低下を見る試験です。

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試験条件のサイクル回数やサイクル周期、上限下限の温度が想定する環境に合っているかどうかを確認し、参考にしてください。


冷熱衝撃試験では接着剤の種類によっても大きく結果が変わります。

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表のとおり、弾性接着剤は初期強度こそ劣るものの、アクリル系・エポキシ系に比べて冷熱衝撃試験による強度低下はほとんど起こりません。これは弾性接着剤が低温下でも弾性を維持しており、応力緩和が可能であるためと考えられます。

一方で、アクリル系・エポキシ系の高強度タイプは冷熱衝撃によって急激に接着強度が低下してしまいます。アクリル系・エポキシ系の接着剤は、一般的に非常に硬いため応力緩和性に乏しく、繰り返しの急激な温度変化による接着剤と被着体の伸び縮み差に追従できず、剥がれてしまうことが原因です。

接着剤の使用環境を精査して、必要な耐久条件を見極めた上で接着剤を選定することが重要です。
 

薬品への耐久性

接着部位が薬品などに触れる可能性がある場合は、耐薬品性の結果を参考にしてください。耐薬品性の試験は、試験片を各薬品に浸漬した際に接着強度にどのような影響を及ぼすかを確認する試験です。接着剤の分解、変質、膨潤などの影響を見ます。

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まずは対象の薬品に適合するものがあるかどうか、薬品の分類は酸性、アルカリ性、オイル、溶剤のうちどれに該当するか、分類ごとの耐性の傾向を確認します。
さらに試験条件において、薬品の濃度や接触時間がどのように影響しているかを見ます。 表中の例で言えば、溶剤系は長期間の浸漬の場合、接着強さが大きく低下してしまいますが、洗浄など短時間しか接触しない場合はさほど影響を受けません。これらも接着剤の種類や、被着体の材質によっても変動します。実使用上、どの程度薬品に触れるのかを想定し、参考にしてください。
 

加速試験の考え方

熱老化試験や耐湿試験が加速試験として使用されるということは、先に述べました。
実際に製品設計をする上で、「どの程度耐久性が見込めるのか」ということは重要なポイントとなります。加速試験の考え方を簡単にご説明します。

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まずは実際の想定条件よりも厳しい、複数の熱条件で耐久試験を行います。試験で得られた値をもとに、劣化直線を引きます。より厳しい条件下では、早く劣化が進行するという結果が示されています。
はじめに接着強度の閾値を定めます。この試験では強度50%と設定しています。閾値まで劣化が進行した経過時間の値を寿命Lとします。ここで使用するのがアレニウスの式です。接着剤やプラスチックといった化学材料は、分解や酸化といった化学反応により劣化が進みます。ある温度での化学反応の速度を計算式で表したものがアレニウスの式です。

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先の試験で温度別に求められた寿命Lをアレニウスの式に当てはめ、プロットしたものをアレニウスプロットと呼びます。これによって温度と寿命の関係を予測することができます。
閾値をどの程度に設定するかによって予測寿命が変化します。
 

まとめ

耐久性の結果は、試験片の素材や試験方法、温度、湿度といった試験条件によって大きく値が変化します。そのためカタログに載っているデータはあくまで参考となりますが、接着剤選定の上では大きな手助けになります。カタログに載せられた試験結果の見方をマスターして、適切な接着剤を選定しましょう。

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