家庭用 2021年07月30日

<DIYクリエイタースワロさんに聞く>楽しさと醍醐味を味わった先は「魅惑の沼」、DIYの魅力とは?

「こういう家具や雑貨に囲まれた、このようなテイストの部屋に住みたい」。そのような夢を忠実に叶えたいなら、フルオーダーメイドかDIYで自作するしかない。だが、どちらも敷居が高すぎて「夢のような話」にしか思えないだろう。
しかし、その夢を何度も現実にしている人がいる。それが、DIYクリエイターのスワロさんだ。空間デザイナーとしてデザインの提案やDIYワークショップ、YouTube配信も行うスワロさんに話を伺うため、彼女の「作品」である自宅を訪問した。(取材・文 菅野りえ)

スワロ
インテリア空間デザイン、スタイリング、テレビ撮影、監修、執筆などフリースタイルにて幅広く活動中。
予算100万円で自身が住む自宅をフルリノベーション。古材、流木などを使った家具作りが話題となり、さまざまなメディアにて取り上げられている。
幼少期から物作りが好きで、何でもまず作ってみる、やってみる精神。
そんな好きが高じて、趣味から現在のお仕事に発展!

スワロDIYちゃんねる

 

9割はDIY、海辺のリゾートを再現したスワロさんの自宅

スワロさんの家に続く階段を上がると、ご本人が玄関から顔を出し、爽やかな笑顔で迎えてくれた。挨拶をして目に入ったのは、ドアの向こうに広がる「スワロさんの家」。筆者とフォトグラファーは口々に「かわいい!」「すてき!」と歓声を上げた。

決して広くはないが狭さも感じさせない空間には、各スペースにちょうどよいサイズで家具が配置されている。DIYだからこそ、すべての素材、色、テイストに統一感があり、どこかで見たような既製品の気配は一切ない。
細部までこだわったものがきれいに配置されたその部屋は、どこを切り取っても、どこに目を向けても絵になる。

この家のコンセプトは「リゾート」。ペットを飼い始めたために自由に旅行に行けなくなったことから「家にいても旅行に行った気分を味わいたい」と、ボヘミアンや海辺をイメージさせる空間をデザインしたという。流木や布などの自然素材を多く使った空間は確かに現実離れしていて、まるで海外の別荘。窓を開けたら白い砂浜と海が見えそうだ。

部屋にあるものの9割がDIYというこの空間は、スワロさんの実家の2階だ。それまで住んでいた賃貸住宅ではどうしてもDIYに限界があったが、実家ならどこまでも好きにできる。
「壁に穴をあけてくり抜いた」収納スペースを作るなど、スワロさんは思うがままにDIYを楽しみ、理想の空間を作り上げていた。

 

DIYを始めたきっかけは?

ーDIYを始めたのはいつ頃からですか?

顔
スワロさん

7~8年前です。ペーパーナプキンで花のようなオブジェを作る人のブログを見て『かわいい、やってみたい』と思ったのが最初で、やってみたら楽しくて。ペーパーナプキンの次は100円ショップの木箱を使った小箱、さらにその次はその箱を使った棚というように、少しずつ作るものが大きくなりました

ー今では家具も作っていますよね

顔
スワロさん

DIYを始めて1年目くらいに家具を作りましたが、少しずつステップアップしたので、自然な流れでした。大きなものを作るようになると、初心者の頃に買った道具では対応できなくなるため、作る作品の変化に合わせ、電動の工具やプロ仕様のものに買い揃えていきました

ーちなみに、工具はどちらに収納されていますか?

顔
スワロさん

こちらです。これは最近作った今のところの超大作。ちょうど隙間があったので、そこに収納できて、さらに作業用のテーブルにもなるスライド式収納棚です

ーすごい! とても便利でかわいくて、まさかこんな風に収納できるなんて……!!

顔
スワロさん

これは構想1週間で作りましたが、これだと思えるイメージが浮かぶまではずっと考え続けます。半年くらい考え続けることもありますよ

ーそれだけの長い期間、考え続けられるのは本当にDIYが好きだからですよね。DIYのどのようなところが、そこまでスワロさんを惹き付けるのでしょうか?

顔
スワロさん

最初はイメージでしかなかったものが完成品になり、予定した場所に置いて、空間全体の統一感が出たときはたまりません。作品が家に溶け込むと言葉にしがたい喜びがあります

ーわぁ……。実際に作った人でなければ、味わえない感情ですね。DIYをやるようになったことで、考え方や価値観に変化はありましたか?

顔
スワロさん

お店に行ってすてきなものを見たとき、欲しいより作ってみたいという感情が先にくるようになりました。100%理想のものが欲しければ、自分で作るしかありません。ですから、今では、家電製品以外のほとんどのものを買わなくなりました

靴箱、スツールもすべてスワロさんの手作り

ーお部屋の9割のものがDIYということは、理想を追求した結果なのですね

 

DIYの可能性とプラスαの楽しさ

スワロさんはDIYでたくさんの作品を作り上げてきた。今いる部屋自体もギャラリーのようなものだ。どれも魅力的な作品だが、その中でも特に思い入れの強い作品はどれだろうか。
聞いてみると、「初期の作品は特に思い入れがありますね」という答えが返ってきた。

DIYに限界なんてない、和室で再現した「インダストリアル+海外のショップ」

初期の作品の中でも特に忘れられないのが、賃貸住宅に住んでいたときに作った部屋だという。インダストリアルと海外のショップをテーマに、かなりの時間と手間をかけて作り上げた。

これがその部屋です」と見せてくれた写真は、ヨーロッパの街角で撮影したスナップにしか思えない。アパートの1室、しかも和室にはまるで見えない「作品」だった。

賃貸で原状復帰しなければいけないという制限の中「DIYでどのくらいイメージに近づけるだろう」と考え抜いて作った部屋は、退去するときに解体した。もう残っていないことが本当に残念だが、「100%イメージ通りにしたいなら、自分で作る」を、現実にしている。

失礼ながら、筆者が勝手に抱いていた「DIYでできるのはこのくらいまでだろう」というイメージを大きく超えた世界がそこにあった。

「DIYには限界なんてないんだ!」

今はもう存在しない部屋の写真を見ながら、心地よい衝撃に満たされていた。

資材から得るインスピレーションで、DIYがもっと楽しくなる

DIYクリエイターのスワロさんにとって、ホームセンターは馴染み深い場所だ。
スワロさんが主に訪れるのは資材館。作りたい作品に使えそうな材料を探しに行くことが多いそう。また、資材を見て「本来の使い方とは違うけれど、こう使ったら面白いのでは」とひらめくこともあるそうだ。

スワロさんのキッチンには、その例が詰め込まれている。シンク前の食器や調味料が置かれた棚を支える土台は水道管。調理器具がぶら下がるフックは、よく見るとスプーンを曲げて作られていて、これもDIY作品だ。

ひらめきが手伝って、最初のイメージを超える魅力的なアイテムが誕生したり、空間が生まれたりする。これもDIYだからこそ味わえる楽しさだといえるだろう。

 

作る喜びを知れば、DIYで人生がもっと楽しくなる

スワロさんは空間デザイナーとして、個人宅の空間デザインのアドバイスや、DIYワークショップを行っている。
DIYクリエイターとして活動している中、「DIYをやってみたいけれど、道具がないからできない」「やり方がわからない」という人がとても多いことに気付いた。
そこで、「私が道具を持っていって教えるから、一緒にやりませんか」と提案したところ、たくさんの人から「やりたい」という声が上がったのだという。

スワロさんがデザインを手がけた店舗

スワロさんの空間デザインは、「お客様と一緒に作り上げる」スタイル。「こういうものを作りたい」という要望にスワロさんが「もっとこうしたらおしゃれ」「実用的になるよ」とアドバイスし、スワロさんに教えてもらいながらDIYで作っていく。

「私は自分の作品が完成するときの感動を知っています。『うれしい』『自分が作ったものが形になる』という喜びや、そこで生活できる幸福は何にも代えがたい。それが『お客様と考える空間デザイン』の原点です」

手本を見せることはあるが、基本的にはすべて依頼者が自分で作業する。当然、素人が作るDIYは完璧な仕上がりにはなりにくく、時間もかかるが、スワロさんはそれでいいと考えている。
大事なのは、「自分でやる」という体験をすること。次は一人でやってみよう、やってみたいと思えたら、もっと楽しくなる。スワロさんは空間デザインとDIYワークショップを通して、DIYに興味がある人の背中を押し、人生に新たな楽しみが加わる手助けをしているのだ。

スワロさんは自身のYouTubeチャンネルで動画を配信するYouTuberでもある。コロナ禍でスワロさん自身も家にいる時間が長くなったことをきっかけに、動画を作り始めた。
DIYに興味がある人へ楽しさを伝えようと始めた動画作りだったが、蓋を開けてみればプロが多く視聴していた。大工や左官などの職人がプロの視点からコメントを書き込んでくれるため、You Tubeはスワロさん自身が学べる場にもなっている。それを「とてもいい循環」だと喜ぶスワロさん。コメントにはすべて目を通し、❤(ハート)で答えている。

撮影した動画の編集や投稿を行うのは、寝室の一角。デスクとチェアももちろんDIYで、空間にぴったりとはまる。サイズも材質も色も雰囲気も部屋全体になじんでいて、「この場所に置くために作られたデスクセット」だ。そこに座るスワロさん自身も部屋に溶け込んでいて、傍から見ていてもDIYの醍醐味が伝わってきた。

 

次はエクステリアに挑戦、いずれは家を作ってみたい

賃貸の和室を「インダストリアル+海外ショップ風」にDIYし、それを解体して引っ越したスワロさん。時間と手間をかけて作り上げた作品を解体し、手放すことに抵抗はなかったのかと聞くと、「前の部屋はやり尽くして、新しくDIYするところがもうなかったのです。それに、次に作りたいお部屋のイメージがありましたから」という答えが返ってきた。


そのような今の家も、壁、床、家具、雑貨と、家の中はほとんどDIYし尽くし、理想のお部屋を仕上げたように見える。
次にやりたいことがあるかを尋ねると、「外装や外に置くものにはまだ挑戦したことがないので興味があります。あとは、家を作ってみたいです。大工さんみたいに」と目を輝かせた。

ペーパーナプキンの花から始まったDIYが、本格的な家作りに向かうなんて、まさか当時の本人ですら想像していなかったに違いない。
「作る喜び」「完成したときの感動」がここまで人を動かすなんて。文字で書けばたった3文字のDIY。しかし、その中に広がる世界はディープで抗いがたい魅力があり、一度ハマればもう逃がさない魔性の何かで満ちている。
ハマってみたいけれど、ハマるのが怖い。しかしながら、実用的であり、楽しそうだから後悔はしなさそうだ。
スワロさんとスワロさんの部屋を見ていると、「積極的にハマりにいくのもアリ」という気がしてきた。

次はどんなものを作ろうか、スワロさんの情熱は尽きない


ライタープロフィール
菅野りえ
旅と取材が好きな半ノマドのライター。
医療、美容、サブカルチャーなど執筆領域は多岐に渡る。畑を借り、無農薬野菜の栽培にチャレンジ中。ベジタリアン。


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