知識・Tips 2026年08月07日

「世の中にないものを作る。」空山基が語る、創作とコラボレーションの哲学

 世界的アーティスト・空山基(そらやま はじめ)氏のアトリエには、冷蔵庫で保管されたセメダインや、使い込まれた筆、新旧さまざまな画材が当たり前のように並んでいる。その光景を見ていると、代表作「セクシーロボット」を生み出した秘密は、特別な才能だけではなく、「面白そうなものは何でも試す」という尽きることのない好奇心にあるのだと感じた。
 
「セメダインは空気みたいなものだった」
 
 子どもの頃から当たり前に使っていた接着剤の話から、高校時代に『世界の艦船』へ投稿したイラスト、台湾・スターラックス航空との大型プロジェクト、そして"本当のコラボレーション"とは何かまで──。空山基というアーティストの創作哲学は、すべて一本の線でつながっていた。

「セメダインはあって当たり前と思える空気のような存在だった」

——今日はよろしくお願いします。
 
空山:よろしく。
 
——セメダインさんのインタビューなので、まず最初にお聞きしたいんですが、子どもの頃からセメダインって身近な存在でしたか?
 
空山:子どもの頃は空気みたいなものだったよ。それしかなかったんだから。木で何か作るにしても、ゴム動力飛行機を作るにしても、とにかく貼るものはセメダインしかない。だから「接着剤を選ぶ」なんて発想はないんだよ。貼るならセメダイン。それが当たり前。当時はまだプラモデルもほとんどなかったからね。そのあと海外のプラモデルが入ってきて、透明なキャノピーなんかが付くようになるんだけど、昔の接着剤は透明パーツに付くとはみ出したところが溶けちゃうんだよ(笑)。だから神経使ったね。今は曇らない接着剤なんかもあるんでしょ?いい時代になったよね。
 
——そうですね。キャノピー(飛行機のコクピットを守る透明の風防)専用の接着剤まであります。これを使えばパーツが曇りません。
 
空山:模型だけじゃなくて、本当は飛行機でも自動車でも接着剤の塊みたいなものだからね。模型って趣味の世界だけど、本当のものづくりにも全部つながってる。だから接着剤って地味だけど、とっても大事なんじゃないかな。
 

こちらが空山氏が保有している接着剤の数々。中の接着剤の品質を保つために冷蔵庫で保管している
——子どもの頃から飛行機や船の絵もたくさん描いていたそうですね。
 
空山:描いてたね。でもほとんど残ってない。まだ10代そこらの頃に描いた飛行機の絵が一枚だけ見つかって外国で展示したことはあるけど、あとはどこ行ったかわからない。誰か持っていっちゃったんだろうね(笑)。「世界の艦船」に描いた絵も、一枚だけ残ってる。高校生の頃だったかな。もう無くならないようにこうやって額装してますよ。あの頃、「読者交歓室」っていう投稿コーナーがあってね。載ってる絵を見てたら、「俺のほうがうまいな」って思ったんだよ(笑)。それで六枚くらいまとめて送った。切手まで入れて、「返してください」って。そしたら返ってこない。しかも半年くらい毎月載るようになっちゃって(笑)。高校生だから、その時の代表作を送ってるわけだよ。釣り人が一番大きな魚を持って写真撮るようなもので、自分では一番いいと思った絵を送ってる。だから返してほしかったんだけどね。まぁ、そういうことはよくある時代でもあったからね。海人社にまだあったら、戻ってくると嬉しいなぁ。よろしくお願いします(笑)。でも本に掲載してもらったというのは本当に自信にもなって嬉しかった。自分が好きなことで誰かに認められるって最高でしょ。そんな経験したらもう好きなことに夢中で止まらなくなるわけよ。
高校生の頃に空山氏が描いた艦船イラストの一枚。このような作品を6枚「世界の艦船」へ投稿したところ、半年ほど毎号掲載が続いたという。そのエピソードにも納得してしまう完成度だ
——この船の絵はどんな風に描いていたんですか?
 
空山:当時は丸ペンなんか知らないから、普通の事務用ペンで描いてた。しかも紙に引っかかる。細い線なんか引けないから、ペンをひっくり返したりしながら描いてた。今見ると、「よくこんなので描いたな」と思うよ。当時、絵の師匠はいなかったから全部独学なの。デザイン学校には行ったけど、誰かについて絵を習ったことはない。結局、自分が会いたかったのは生きている先生じゃなくて、ダ・ヴィンチとか、そういう何百年も前の人たちなんだよ。「一緒に酒を飲むなら誰ですか」って聞かれたことがあるけど、俺は死んだ人の名前しか書かなかった。ダ・ヴィンチとかって絵の技術だけじゃないじゃない。どういう人生を送ったのか。そういう人間の膨らみ的な部分も彼らの絵にでてくるわけ。そこに興味があった。だから誰かの真似をするんじゃなくて、自分で考えるしかなかったんだよ。
数々の作品が生まれている空山氏の机。創作活動のための数々のアイディアが集積された、まさにコクピットと言える
——アトリエを見せていただくと、本当にコックピットみたいですね。
 
空山:そうだね(笑)。ここはもう、自分が一番仕事しやすいように何十年もかけて少しずつ変えてきた場所だから。新しい道具が出ると、とりあえず使ってみたくなるんだよ。画材でも模型用品でも関係ない。面白そうなら一回試す。それで残るものだけ残っていく。だからここには、何十年も使ってるものと、昨日買ったものが普通に並んでる(笑)。
 
——釣り竿なんかも利用するんですね
 
空山:ああ(笑)。あれも自分で考えた。釣竿って柔軟だからさ、描いている途中の絵をぶら下げたり、絵を描くための資料とかを浮かせて見ながら描いたりできる。とっても便利よ。一時釣りにハマっていたから、その時の竿を使っているんですね。僕の創作活動はそういうことばっかり。コックピットもそうだけど、仕事場っていうのは、自分の頭の中がそのまま形になってるようなものなんだよ。
 
 
——この銀色のマーカーも、すごい質感ですね。
 
空山:これね、最近知ったアイテムで一番良かった。去年くらいから使ってるんだけど、全然違う。普通のシルバーじゃない。鏡になる。塗料じゃなくて、本当に金属みたいになるんだよ。これを初めて使ったときは驚いたね。自分の好きな銀の質感がペン先から出てくるんだから。なので、サインはこのペンでよく描いてますよ。もらった人もうれしいでしょ。空山っぽさが出て(笑)。画材も「これにはこれ!」っていう意識が向いちゃうと表現の幅や発見が無くなっていく。だからいいものは全部使う。そして知りたいのよ。どんな物が今あるのかってことを。アンテナは常に張ってないとね。
銀のマーカーでサインを描く空山氏。近年、マーカーは目覚ましい進化を遂げている。紙だけでなく、プラモデルや陶器、金属などさまざまな素材に塗装できるものが登場し、各メーカーが独自の技術やアイデアを盛り込んだ新製品を次々と送り出している。
——筆もかなり独特ですよね。
 
空山:ここにある筆がまさに僕が実際に使っているもの。エアブラシもあるけれど、僕の絵はほとんどが筆で描かれています。エアブラシだけで塗った絵は全然ダメよ。筆が入らないと絵にならない。エアブラシはぼかしたり、広い面積に均一に色を吹き付けたい時だけに使ってるかなぁ。だから筆はとっても大事なの。特に自分が気に入っている筆があるんだけれど、なんとその筆がもうなくなると分かったんで、自分の残りの人生分買いました。これでもう心配はないです。あと売ってるままじゃ使わないね。柄を切ったり、長さを変えたり、自分でアダプター付けたり。一番使いやすい形に変える。だからメーカーの人に「どこの筆ですか」って聞かれても、もう元の形じゃない(笑)。道具ってね、そのまま使うものじゃない。自分に合わせていくものなんだよ。
——僕の好きな模型でも同じですね。
 
空山:そう。模型もさ、模型用じゃないマテリアルやツールが転用されたりしてるんでしょ。まさに使えそうな物、こう使ったらもっと良いかもと思える頭と目が大事なんだよね。昔、僕が描いたキューティーハニーを立体化してもらったんだけれど、その原型制作工程を見たときも、フェンシングの剣先を一生懸命細くしてた。でもさ、でも俺は違うと思った。「先を細くするんじゃない。根元を太くしたほうが、先端は細く見える」。人間の目ってそういうものなんだよ。すごく技術のある原型師はたくさんいます。でも「どう見えるか」という発想がない人が意外と多いんですよ。そこは経験なんだろうね。
——だからこのアトリエ全体も、「使いやすくする」じゃなくて、「どう見えるか」「どう感じるか」が積み重なっているんですね。
 
空山:そう。仕事場も作品なんだよ。ここで毎日何時間も過ごすんだから。使いやすいだけじゃつまらない。見ていて気持ちよくないと。だから道具も並べ方も、全部意味がある。そういう空間で俺は絵を描いたりしていたいんだよ。

「AIRSORAYAMA」。スターラックス航空との一大プロジェクト

©スターラックス航空
 スターラックス航空が今年1月に発表した、空山氏とコラボレーションした特別塗装機プロジェクト。2機のA350-1000を使ったアート機として展開。3号機を「STARLUX AIRSORAYAMA シルバー」、4号機(B-58554)を「STARLUX AIRSORAYAMA ゴールド」と命名。空山氏を象徴するメタリックシルバーとメタリックゴールドを用い、機体下部には代表作「SORAYAMA SHARK」を想起させる流線的なラインを配している。
©スターラックス航空
——スターラックス航空とのプロジェクトは、どんな始まりだったんですか?
 
空山:まずね、会長がファンだったの。会社のロゴも、僕が描くフォントや質感を取り入れていたから、「これは俺のこと絶対好きでしょ」っと思いましたよ。そして最初に来たときに、「ああ、この人本当に俺の作品が好きなんだな」って伝わりました。そして実際に一緒に仕事を進めていくと、会長は全部自分で決める人だった。超ワンマン。デザイナーにも、「ここはこうしろ」「ああしろ」って全部言う。そのやりとりとこだわりを見ていて、それくらい責任を持って仕事に取り組む人なんだとわかり、俺も全力でコラボしようと思ったの。
——今回のプロジェクトでは、カラーリングやロゴの配置なども手掛けられていますよね。
 
空山:最初は自分の名前なんか入れる気なかった。恥ずかしいじゃない(笑)。でも会長から「入れろ」って。内側にも入ってるしね。
結局三年くらいかかったかな。まだ終わってないけど。会長ご自身もパイロット。飛ばす人だから。飛行機が本当に好きなんだよ。だから話が早い。今回の企画で、まず塗料の重量を計算したら通常の飛行機よりも30パーセントも重量が増えたんです。普通だったらこの時点で企画がなくなるレベルですよ。でも会長はこのコラボを実現したいから、極限まで軽くなるように塗料から開発したんです。だって重いままの塗料で塗装したら株主総会とかで「燃費が悪くなる!」「安全性はどうなの?」「そこまでしてやることか!」とか、そういう話になるでしょ。でも会長は絶対に企画を成功させたい、そして何より「面白いからやろう」って言う。だから仕事になるんですよ。こういう流れが本当のコラボレーションなんだよね。このような企画のように、クライアントの中に「援軍」がいると強いんだよ。ものづくりが好きな人。こっちの考えを理解してくれる人。そういう人が一人いるだけで、全然違う。逆に、担当者だけ盛り上がっても、その上が理解してなかったら何も進まない。だから俺は、仕事するとき相手を見る。誰が本当に決める人なのか。誰が理解してくれる人なのか。そこは大事だね。
 ©スターラックス航空
——スターラックスのお話を聞いていると、「コラボ」という言葉の捉え方が、一般的なイメージとはかなり違いますね。
 
空山:そうだね。俺はコラボレーションを大事にしている。だって自分の中だけでは出ない新しいものを世に生み出せるからね。その点「今のコラボ」って、俺はあんまり好きじゃない。絵を一枚貸して、それを商品に貼りました。名前を貸してそれをプリントしましたみたいな感じで「コラボです」って言うでしょ。あれ、コピペだから(笑)。コラボじゃない。俺は昔からそう思ってる。世の中にないものを作ることができるからこそ「コラボレーション」なんだよね。もう、それだけ。スターラックスもそうだけど、「今までなかったものを作りたい」っていう人が来るから受ける。「この絵を使わせてください」だけなら、正直面白くない。もちろん仕事だからやることもあるよ。でも、本当に面白い仕事って、ゼロから一緒に考える仕事なんだ。スターラックスは、まさにそういう仕事だった。会長と一緒に、「この時代に何やってるんだ」って言われる壁を突破して、コンセプトを形にしていっている。何度も言うけど、そう言う「援軍」と一緒に仕事をするから本当のコラボレーションは成立するんだよね。援軍がいない会社とのプロジェクトは途中で止まったり、中途半端な物ができちゃうよ。
こちらは空山基 × 吉乃友酒造による限定スパークリング純米大吟醸『アフロディーテ』のボトル。スパークリングの泡と、泡から生まれる女神・アフロディーテを重ね合わせたコンセプトが、空山氏のアートワークとともに一本の酒へと落とし込まれている

常にびっくりさせたい。エンターテイメント精神を忘れない

——アイデアは、どうやって生まれるんですか。
 
空山:「アイデアを考えよう」なんて思ったことない。最初に思うのは、「なんでみんな、これやらないんだろう」なんだよ。
そこから始まる。世の中が右へ行くなら、左へ行ったほうが面白い。宇宙飛行士って銀色でしょ。だったら飛行機も銀だろ。靴も銀。そういう発想。エンターテインメントなんだから、びっくりさせなきゃ意味がない。ルーティーンなんか、一番つまらないよ。
 
——「人と違うことをする」というより、「誰もやっていないことをやる」。
 
空山:そう。だから真似はしない。流行も追わない。びっくりしないものを作ってもしょうがない。俺はいつも、「なんで誰もやらないんだろう」を本当に大事にしているの。スターラックスでも、飛行機だけじゃなく、制服や商品まで話が広がっていっちゃたのね。俺は「服飾デザイナーじゃないよ!」って言ったのよ。でも会長がね「それでも制服もやってくれ」って言うの。そんなチャレンジをもらったら応えたくもなるじゃない。だからたくさん調べたし考えたよ。今の制服って、昔からの流れ、それこそ二百年前の海軍のような制服を、今も航空会社が着てるじゃない。あれがなんだかおかしいと思えてきたの。宇宙飛行士なんか、記者会見も作業着も同じでしょ。だったら航空会社も、新しい時代の制服があっていいと思ってデザインしたの。これまでにあったものを見ながら、自分の中で思考する。できるかどうかじゃない。まず考える。それが俺たちの仕事でもあるからね。
 
——ここまで聞いてあらためて、コラボで一番大切なことを一言で表すとなんでしょうか?
 
空山:「共鳴」だね。お互いが、「面白いものを作りたい」と思ってるかどうか。そこが一緒なら、仕事はうまくいく。逆に、お金だけだったら続かない。だから俺は、自分の絵を貼るだけの仕事はあんまり好きじゃない。一緒に考えて、一緒に笑って、「こんなの見たことないね」って言える。それがコラボなんだよ。世の中にあるコラボレーション商品をじっくり見てみて。いいなと思えるものは、きっとそう言う環境から生まれたものしかないと思いますよ。

趣味の世界と空山流「カウンターパート」

——多くの人は「趣味」として創作活動をしていると思います。そのような趣味の世界に対して空山さんが思うことってありますか?楽しんでいるの世界って、知識が深くなるほど細かな指摘も増えてきますよね。
 
空山:趣味っていいですよね。俺も色々楽しんでるもん。でも趣味の世界って知識が深くなるほどちょっとややこしくなることおおいじゃない? 細かな指摘ばかりしてくる人とか。SNSとか顕著だよね。あれは良くないと思うよ。見ない方がいい。面と向かって言われても嫌なのにね〜。ちなみにこういう指摘ばかりする人には共通点があるの。それは「新しいものを作らない人ほど、知識だけで喋る」んだよ。あれが違う、これが違うとかばかり言ってさ。じゃあ結局あなたは何がしたいの? って思っちゃうわけよ。
 昔模型好きの人から聞いたんだけれど、模型の展示会に「零戦」が大好きで、ものすごい知識を持ってる人が来たらしいの。俺の絵にもいろいろ言ってきた人だったらしいのだけれど……。その人が零戦の話をしてたら、展示会に来た中学生と熱い議論を展開したんだって。大人と中学生だよ! その時点ですごく面白い展開なんだけれど、なんと中学生が論破しちゃったの。すごいよね〜〜。その中学生。そしたら大の大人が最後に「俺は零戦を見たことがある。お前は見たことないだろ。」って(笑)。そんなこと言い出したら終わりだよ。中学生と大人が、本気でそんな喧嘩してるだけでも恥ずかしいじゃない。趣味に真っ直ぐになりすぎるとそういう感覚も無くなってくるんだね。そんだけ知識があって、しかも本物を見ているんだからどんどん作って自分が思う零戦プラモをバンバン生み出していけばいいのよ。それだけじゃない。知識だけではなく、「作る」ほうへも向かうべきで、そこから絶対に新しい物が生まれるんですよ。何にも新しいものを作らない人ほど、後ろ向きなんだよ。「これ違う。」「昔はこうだった。」そんなことばっかり。でも、「こうしたらもっと面白いじゃないか。」っていう人は前を向いてる。俺はそっちのほうが断然好きだね。
 
——模型も、新しい素材が出るたびに表現が変わっていきます。
 
空山:そうでしょ。艦船模型の空中線(アンテナなどに貼られている細い線)に「釣り糸」を活用したのだってそうでしょ。最初は「そんなもので張るのか」って言われたんじゃない? でも今は超定番になってる。結局、新しいことをやる人は最初に文句を言われる。でも、それでいいんだよ。

ギラギラしたものを書きたいからこその「逆」を描く

——空山さんは「カウンターパート」という言葉をよく使われますね。
 
空山:使うね。ギラギラしたものを描くなら、その反対も知らなきゃダメなんだよ。美しいものだけ見てても、美しさはわからない。醜いものも見ないと。可愛いだけ見てても、可愛さはわからない。怖いものも知らなきゃ。グルメだって同じよ。まずいものを食べないと、本当に美味しいものはわからない(笑)。全部そう。対になるものがある。だから作品にも、必ず対極がある。ロボットを描くときも、必要なら錆を入れる。錆を入れることで一気に使用感や、そのメカの背景が浮かび上がってくる。逆にギラギラしたメカは崇高で孤高な存在に見えてくる。
 女性だって同じ。若いだけじゃ面白くない。描くテーマの女性ごとに自分なりの説得力をさまざまな部位に込めていくんだよ。酒もそう。熟成させるでしょ。新酒ばっかりありがたがる時代もあったけどさ、成熟したものには成熟した美しさがある。
それを描きたいんだよ。
 
——「ギラギラ」が好きだからこそ、その反対側も知っている。
 
空山:そう。だから俺は、キラキラだけ描いてるわけじゃない。反対側があるから光るんだよ。全部そう。片方だけ見てたら、本当の面白さなんかわからないんだね。

アトリエの中にはまさにカウンターパートとも言えるコレクションが集められたゾーンもある

自分ではわからない感覚を知るからこそ面白い

——SORAYAMA 光・透明・反射 -TOKYO-ではミュージアムショップも大人気でした。
 
空山:あれは反省したね(笑)。ソニーミュージックでグッズを担当してる人たち、みんな若い女の子なんだよ。企画を見せてもらうたびに、「誰がこんなの買うんだ。」って思ってた(笑)。でもね、孫を連れて行ったら違った。孫が喜ぶんだよ。俺が「こんなの売れない」って思ってた缶バッジや缶ケースを、「欲しい」って言う。三世代違うと、もう感覚が違うんだね。あれは勉強になった。絶対に「俺はもう全部わかってる」なんて思っちゃダメなんだ。この経験から、作品を作ることと、届けることはまた別なんだと改めて思ったよ。自分がいいと思うものはもちろん作る。でも、それをどう届けるかはまた違う。だから若い人の感覚も必要なんだよ。全部自分だけで決めるのは危ない。今回の個展では、それをすごく感じた。
 
——最後にお聞きします。乗り物をたくさん描いてこられましたが、一番好きな乗り物は何ですか。
 
空山:お姉さん(笑)。一番好きな乗り物は、お姉さん。飛行機じゃない。お姉さん。乗り物なんだから(笑)。
 
——飛行機ではないんですね(笑)。
 
空山:もちろん飛行機も好きだよ。子どもの頃からたくさん描いているからね。でも結局、人間が一番面白い。飛行機も、ロボットも、船も、全部人間が作る。だから最後は人なんだよ。まだまだ新しいことにチャレンジしていきたい。「もういいや」と思ったことは一回もないから。新しい道具があれば触ってみたいし、新しい仕事が来れば考えてみたい。世の中にないものを作る。そのために仕事してるんだから。だからコラボだって、作品だって同じ。貼るだけじゃ面白くない。びっくりさせなきゃ意味がない。俺は昔から、それしか考えてない。


ライター:丹文聡(たんふみとし)
1983年生まれ。12年務めた株式会社ホビージャパンで、月刊ホビージャパンの編集と広告営業を担当。その後フィギュアメーカー・マックスファクトリーで3年務めたのち、フリーランスの編集として独立。模型ウェブサイト「nippper」の副編集長も務める。

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