知識・Tips 2023年01月25日

接着剤はどうやって選ぶ? 接着剤カタログの読み方を知る!~性能編~ |接着剤の基礎知識

接着剤の選び方を知っていますか? ホームセンターや文房具店の接着剤コーナーを覗いたとき、あまりの種類の多さに困惑した経験のある人もいるのではないでしょうか。

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接着剤にはたくさんの種類がありますが、用途に合った接着剤を選ぶことがとても大切です。この記事では、適切な接着剤を選ぶ上で大きなヒントとなる、カタログの読み方を解説します。

なんでもくっつく万能接着剤はあるの!?

接着剤は主成分や形態、硬化方法などによって分類されますが、ただ目的のものを接着したい、と考える人にとってはとても複雑なものです。

例えば、主成分によって分類すると以下の通りです。

ⅰ)無機系 セメント、セラミック、ケイ酸ソーダなど
ⅱ)有機系
  1. 天然系 でんぷん、天然ゴム、アスファルトなど
  2. 合成系 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー

近年は、次々に新しい化学物質が開発され、合成系と呼ばれる接着剤にもたくさんの種類があります。しかし、現段階では“なんでもくっつく万能な接着剤”というものは存在しません。そのため、接着したい対象(被着体)、用途に応じた接着剤の選定がとても重要です。

接着剤の選定のヒントは、カタログに記載されているのです。

接着剤の選び方

接着剤のカタログには、このような表が掲載されています。
 

カタログ記載例

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測定条件が表記されていない場合は通常、常温(23度)での測定値になります。
温度により数値は変わるため注意が必要です。

接着剤の選定工程は、以下の点を考慮します。

  • 接着体の種類 何と何を接着したいのか?
  • 使用目的 どのような性能を期待するのか?
  • 接着接合部の設計 どの程度の強度が必要か?
  • 使用環境 どこで使うのか?
  • 作業条件 どうやって使うのか?

接着剤に求める内容がはっきりしたら、その上でカタログの項目を一つずつ確認していきましょう。

タイプ

1成分形とは、容器から出してそのまま使用できるタイプの接着剤のことです。

2成分形(多成分形)とは、2つ、もしくは3つ以上の材料を混ぜて使用することで固まるタイプです。二液性(多液性)とも呼ばれます。

1成分形にも、硬化の仕組みによっていくつかの種類があります。

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湿気/UV硬化タイプは、湿気に触れることやUV(紫外線)に当てることで硬化が進みます。表面から徐々に硬化していくため、表面は固まっているように見えても、内部は未硬化ということがあります。湿気硬化は、特殊な硬化装置を必要とせず、外部からエネルギーを加える必要がありません。UV硬化は、UVを当てるタイミングで任意に硬化させることができ、硬化時間が非常に短いなどのメリットがあります。

乾燥硬化タイプは接着剤に含まれる溶媒が揮発することで硬化し、硬化するにつれてかさが減り、やや肉痩せします。溶媒が低粘度のため、塗布性(手作業、スプレーなどの機械塗布)が良い傾向、接着物が多孔質の場合は染み込みやすく投錨効果および表面補強が得られやすい傾向にあります。

加熱硬化タイプは、熱を加えることで硬化成分が活性化して硬化します。熱を加えるタイミングで任意に硬化させることが可能です。

2成分形は、材料を混ぜることによって硬化するため、全体が均一に硬化します。
使用の際に材料を混ぜる手間や、2液性のコーキングガンなど特殊な道具が必要になる場合がありますが、内部まで均一に硬化するなどのメリットがあります。

使用環境や作業条件によって適切なタイプを選択してください。

主成分

主成分による接着剤の分類から、ある程度の特性や特徴が分かります。
合成系の接着剤の例として下記に3種類の特性を図で示します。

 

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熱可塑性樹脂

熱を加えると柔らかくなる樹脂を示します。例として、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられます。酢酸ビニル樹脂系接着剤は、木工用接着剤としてなじみの深い接着剤です。

熱可塑性樹脂は接着強さや硬さ、硬化速度、靭性に優れている傾向があります。その一方、熱により可塑化する樹脂なので、高温環境下にはあまり適しません。

熱硬化性樹脂

加熱によって硬化する樹脂を示します。エポキシ樹脂、フェノール樹脂などです。

熱硬化性樹脂は接着強さや硬さに優れているという点では熱可塑性樹脂と似ていますが、特に耐薬品性や熱老化性に優れている傾向があります。その一方、低温、高温の繰り返しや、衝撃に弱い傾向にあります。

エラストマー

弾力性のある樹脂を示します。例として、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ゴム系などです。

エラストマーは柔軟性に優れ、接着面がクッションのような働きをするため、接着部の動きに強い傾向があります。その一方、高い接着強さや硬さを必要とする場所にはあまり適しません。

 



これらの特性を、使用目的、接着接合部の設計、使用環境、作業条件の参考にしてください。

ただし、これらはあくまで標準グレード品での参考値です。グレードによっては耐衝撃性、耐熱性等が異なる場合があるので必要に応じて選択してください。

外観

接着剤は被着体の間にあるため、基本的に外から見えるものではありませんが、被着体が透明であったり、接着剤が外からも見えたりする場合は、使用箇所に合った色のものを選ぶという考え方もあります。

 

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外観に影響を与えないよう、より透明度の高い接着剤もあります。また、あえて接着部位とは色の異なる接着剤を使用することで、塗り忘れを防止するという効果もあります。
接着接合面の設計、作業条件の参考にしてください。

 

粘度

接着剤の粘り気の指標です。塗布性やレベリング性、すなわち塗りやすさに大きく影響します。粘度は一般的に、回転粘度計で測定します。

 

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測定する液体の中に、スピンドルと呼ばれる軸を入れて回転することで、液体の抵抗(トルク)を測ります。

 

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数値のイメージは、水で1/1000Pa・s(パスカル秒)、マヨネーズは10Pa・s、ピーナツバターは150Pa・sです。接着接合部の設計、作業条件の参考にしてください。

硬化性

硬化性にはさまざまな評価方法があります。

指触乾燥時間(JIS A1439(2016))

23℃50%RH(相対湿度)環境下で、接着剤表面に触っても指につかなくなるまでの時間です。
一般的に、温度が(湿気硬化形は湿度も)高いほど短くなる傾向があります。
1成分形の接着剤で測定されます。

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可使時間(ポットライフ)(JIS K6870(2008))

塗付するために調整した接着剤が使用できる状態を維持する時間です。
2成分形接着剤を混ぜたあとに、使用できる時間がどのくらいかということを示します。
「粘度」「押出量」「塗布」「表面粘着性」などの変化で判断され、一般的に、温度が高いほど短くなる傾向にあります。

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セットタイム(JIS K6861(1995))

被着体を貼り合わせたあと、どの程度時間がたてば動かせるかという目安です。
瞬間接着剤の場合は被着体を25mm×12.5mmの面積で貼り合わせ、5kgの重りに耐えられるようになるまでの時間とJIS K6861で規定されています。一般的に、温度が高いほど早くなる傾向があります。
指触乾燥時間や可使時間と併記される場合もあります。

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指触乾燥時間や可使時間は、セットタイムと合わせ、使用方法によって速乾性がよいのか、それともある程度余裕があったほうがいいのかを選ぶ際の参考となります。

接着特性

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さまざまな評価方法がありますが、主な2つについて説明します。

引っ張りせん断接着強さ

 

接着した試験片をせん断方向、つまり接着面を横にずらすように引っ張った場合の接着強度です。スライド方向の強さを測定します。

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T型剥離接着強さ

接着した試験片を剥離方向、つまり接着面に対して垂直に引き剝がした際の接着強度です。

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これらの試験ののち、破壊状態を下記のように記します。

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CF(Cohesive Failure/凝集破壊)

接着剤が硬化した部分で破壊され、被着体にはどちらも接着剤が残った状態になります。

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AF(Adhesive Failure/界面破壊)

接着剤が被着体の界面で剥がれるように破壊された状態です。片方の被着体には接着剤がそのまま残り、もう一方の被着体には接着剤が残らない形になります。

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MF(Material Failure/材料破壊)

接着箇所ではなく、被着体が破壊された状態です。
被着体の強度よりも接着強度が強い場合、引っ張る力に耐えられず被着体が先に壊れてしまったことを示します。

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U

接着剤の未硬化を表します。


また数値が記載されている場合は、その比率を示します。被着体の種類、使用目的、接着接合部の設計の参考になります。

 

硬化物性

硬度

接着剤が硬化したあとの硬さの指標です。使用目的の参考になります。
硬化した接着剤に硬度計(デュロメータ)を押し込み計測します。
同じタイプのデュロメータでなければ数値を比較できないので注意が必要です。軟らかい接着剤ではショアAE、硬い接着剤にはショアD、その中間にはショアAを使用します。

ガラス転移温度(Tg)

ガラス転移温度とは、プラスチックが柔軟性のあるゴム状から流動性を失い、硬いガラス状に変化する温度のことです。
これにはさまざまな測定方法があります。セメダインでは基本的にDMA(Dynamic Mechanical Analysis)を使用しています。測定方法により数値が若干異なる場合があるため、ご注意ください。使用目的や使用環境の参考になります。

線膨張係数

温度変化によって物体の大きさが変化する割合を示したものです。基本的に被着体と接着剤の線膨張係数が近いと、冷熱サイクルの際に接着界面の負荷が小さくなるため望ましいとされています。しかし、エラストマーなど弾性のあるものは、線膨張係数に差があっても緩衝作用が働きます。被着体の種類、使用目的、使用環境の参考になります。

破断強度・破断時伸び

接着剤硬化物が破壊するときの強度・伸びのことです。
接着剤を硬化させ、ダンベル状にカットした試験片を引張試験機にて測定します。

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試験片を破断するまで引っ張った際、どの程度の強度があったのかを数値で表します。さらに破断時に試験片が元の形状からどの程度伸びたのかを比率(%)で示しています。
もともと10cmの試験片の標線間が、破断時は30cmであったとすれば、伸長したのは20cmとして、伸びが200%となるのです。接着接合部の設計、使用環境の参考になります。

電気特性

体積抵抗率

電気の通しにくさを示す値です。絶縁抵抗測定器を用いて測定します。

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接着剤は一般的に絶縁体ですが、導電性を付与したグレードもあります。被着体の種類、使用目的、使用環境によって選択してください。

まとめ

このように、カタログには接着剤を選ぶために必要な情報が詰まっています。カタログの読み方をマスターして、より適切な接着剤を見つけましょう。

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