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知識・Tips
2022年10月28日
能登の古民家から80年前のセメダインCが発掘!? 他にもお宝がないか蔵を大掃除してきた。(ヨッピー)
こんにちは。ライターのヨッピーです。本日は金沢駅に来ております。
何故この真夏のクソ暑い時期に金沢にいるのか、まずはそこから話をさせてください。
古民家の収納を整理していたら、すごく古いセメダインC(未使用)が出てきました。何年前くらいの商品なのでしょうかねぇ。 pic.twitter.com/T4GB4sAAoF
— ぴんぽいんとさん (@pinpoint_m) August 8, 2020
全ての発端になったのはこちら、80年前のセメダインCです。
能登の古民家から出て来たこちらのセメダインですが、その後セメダイン社に寄贈され、セメダイン公式がそのことをツイートした所、全国から様々な古いセメダインの情報が寄せられることになります。
その結果、
社内でも「本当にそんなのあったの?」と都市伝説扱いされかけていた瓶入りのセメダインB&セメダインCまで発掘されるという奇跡が生まれます。
セメダイン
つまり、全ては能登の古民家で宿を運営する「ぴんぽいんと」さんのおかげなんですね。だからその古民家にお邪魔して、ぜひヨッピーさんにレポートして頂きたいんですよ。
ヨッピー
なるほど。つまり僕に現地に行けと。だから金沢なんですね。
セメダイン
おっしゃる通りです。そしてそのレポートついでに、古民家の蔵を大掃除して来てください。
ヨッピー
すいませんそこが良くわからないです。
セメダイン
我々としては「ぴんぽいんと」さんに大変な感謝の気持ちを持っていますし、なんとかしてお礼の気持ちを伝えたいんですよ。
ヨッピー
そうですね。ぴんぽいんとさんのおかげで貴重な実物があれこれ見つかったんですもんね。
セメダイン
だから、ヨッピーさんに古民家の大掃除をして欲しいんです!お願いします!
ヨッピー
論理が飛躍しすぎ。
問題の蔵。外装の板張りはおよそ80年前に施されたものらしいけど、中身の蔵は明治以前に建てられたそうです。
セメダイン
この蔵、ずっと手つかずで放置されていたそうで、ぴんぽいんとさんが「蔵を改装してカフェやスナックみたいなことをやりたいし、そろそろ整理しなきゃ」っておっしゃってたんですよね。
ヨッピー
なるほど。
セメダイン
それでつい、「それならうってつけのライターさんが居ますよ。その人にレポートついでに大掃除してもらえば一石二鳥ですね!」って言っちゃったんですよ。
ヨッピー
勝手に決めないでください!
セメダイン
道具類を美術商に引き取って頂くことも考えてるそうなのですが、綺麗に整理されていた方が高く売れる気がするんです。
ヨッピー
ちなみに蔵ってエアコンついてますかね?
セメダイン
蔵にエアコン……、うー——ん、無いでしょうね!
ヨッピー
状態は?
セメダイン
「モノが多すぎて手が付けられない」って言ってました!
ヨッピー
えー———。
というわけで石川県志賀町にある赤崎地区に来ました。
この写真1枚で、並んでいる民家の外観がビシッと統一されている事がわかりますが、80年前の大火事で近隣の住宅が全部燃え、その時に一斉に家を建て替えたので外観が揃っているそうです。こういう事例は全国でもなかなか珍しそう。
そしてこちらが古民家を改装した宿泊施設の「TOGISO」。
囲炉裏のお部屋は天井が高くてカッコいい!
寝室からは海が見えます!
そしてこちらがオーナーの「ぴんぽいんと」こと佐藤さん。
佐藤さんは東京のIT系の会社で働きながらこの古民家の運営をしているらしい。古民家の買い取りと改修で1,000万円以上かかってるんだとか。
佐藤さん
これだけバシッと統一感のある集落ってなかなか無いから一発で気に入ったんですよ。家の裏はすぐ海だし、いつかはこの地区まるごと買収したいなって。
ヨッピー
スケールがデカい。
佐藤さん
とは言え、東京から来た人間がいきなり押しかけて「家と土地売ってください!」って言っても「騙されるんじゃないか」って警戒するじゃないですか。なのでこの古民家を拠点に人を雇って住み込みで働いてもらってね。お客さんの対応をしつつ、「近隣の人とたくさんコミュニケーションを取って仲良くしてください」ってお願いして。今住んで頂いてる方は3代目です。
3代目は埼玉から一家3人で移住し、まだ小さい娘ちゃんは高齢者が多い集落の中でアイドルみたいな扱いを受けているらしい。おかげで近隣の方々との関係は良好。毎日のように獲れた魚をおすそ分けしてもらうそうだ。
ヨッピー
いやー、お金貰いながらこの環境で暮らせるのめちゃ良いですね。僕も雇ってくださいよ。
佐藤さん
ヨッピーさんは全体的に雑そうなので嫌です。
そして問題の蔵!
蔵の扉は3重の鍵がかかっていて、カギ2本でそれぞれ開錠したあと、こちらの変な形の棒を差し込んで扉の裏のカンヌキを外す事で開くようになる。
蔵の中!
こっちは蔵の2階
ヨッピー
うわー、1階には窓が無くて暗いしカビ臭い!
佐藤さん
すごい物量でしょ!? ホコリっぽいし!
ヨッピー
僕ハウスダストアレルギーなのに!でもこれだけ色々あったら、お宝も眠ってるんじゃないですか!?
佐藤さん
ここにあるものは残置物として持ち主が置いていったものだから、だいたいはそんなに価値の無いものだと思うんですけど、この量ならどこかにまだお宝が残ってるんじゃないかって。
ヨッピー
そう!なので美術商の方に来て頂く算段も取りました。せっかくだからついでに全部鑑定してもらおうと思って。
佐藤さん
「なんでも鑑定団」みたいなやつですね。
ヨッピー
おっしゃる通りです。ざっくばらんに言えば今回の企画、「出張鑑定団」の丸パクリです。
佐藤さん
パクリなのにそんな堂々としてて良いんだ。
そして作業開始!果たしてお宝は見つかるのか!?
※蔵の中は暗いのでコードリールをホームセンターで調達し、投光器を使って明かりを設置しております
もうもうと舞うホコリが見えるでしょうか?
ただでさえ環境が悪いのにめちゃめちゃ暑いっていうね。
棚に入ってる荷物をどける→どけた場所のホコリを払って雑巾で拭く→おろした荷物も
雑巾で拭く→元あった場所に戻す
みたいなルーチンを延々繰り返します。
ちなみに今回の作業にあたっては「1人だと不安だしプロを雇おう」と思ってハウスクリーニングの業者さんに片っ端から連絡をしたのですが、「蔵の掃除とかやったことないし無理」という理由で軒並み断られました。なのでTwitterで募集した手下2名と一緒に作業をしております。
桐の火鉢。細かい装飾が施されてるし、状態も綺麗だし高く売れそうな気がするけど……。
なんか古いお金も出てきた。
面白いのが古い新聞で、こちらは昭和5年の新聞に掲載されていた「主婦の友」の広告なのだけど、
・手がかからない赤ちゃんを育てる方法
・赤ちゃんを美人にする育児法
・誘惑と戦った人妻の告白
・政府が奨励する新しい副業
などなど、「書いてることが今とあんまり変わらんな」と思った。
※スキャンしました。
こちらは花王石鹸の広告。
「この品の純良と徳用とは 大衆の腹の底の底まで染みとおっています」
「大衆の幸福のために 健康のために 経済のために真剣な努力を続けた結果です!」
「なぜ品質が純良であるか? 原料の選定と配合比率と製法とに創業以来40余年の研究努力がこもっているからです!」
みたいな文言を見ると「全部主観やんけ」と思ってしまうので、今みたいに「××を〇〇%配合!」みたいに客観的な数字を並べる広告とはだいぶ違いますね。今、広告コピーとしてこの文言を提出したらクライアントに「は?」みたいな顔をされると思う。
あとなんで背景の絵が船なんだろう。
石鹸と船、あんま関係なくない……?
こちらはライオン歯磨きの広告。現在のライオン株式会社の前身となる小林商店の名前が見える。
ヨッピー
へー-。面白いな~~~。
佐藤さん
あ!気をつけてください!それやりだすと無限に時間が溶けますよ!引っ越しの時に古いジャンプを読み始めるのと同じパターンです!
ヨッピー
やべえ!気をつけます!
箱の中を見ると食器のセット?みたいなものが無限に出て来る。
あっというまにズボンがドロドロ!
そんなわけで拭いては戻して拭いては戻してバケツの水をかえて拭いては戻してを延々繰り返していたところ、
「なんか居なくなったな」と思ってた佐藤さんがデカいイシダイを突いて戻ってきました。
佐藤さん
見てください!晩飯ゲットです!
ヨッピー
それより掃除を手伝え!
※ここからはひたすら地味な場面が続くので、赤崎地区の美しい路地なんかをご覧ください
夏だなぁ~~~。
そうこうしている内に日が暮れたので、佐藤さんに晩御飯を作って頂く。
じゃん!
ヨッピー
うおおお!すげー!
佐藤さん
頂いたサザエやお魚と、昼間に突いたイシダイです!
ちなみに近所のスーパーではでかいカニが1匹500円で売ってます。物価、どうなっとるんや。
いよいよはじまりました。宴(うたげ)の時間です。
囲炉裏で炙ったカニはもちろん美味い。
ヨッピー
いやー、最高じゃないですか。それにしても東京で働きながらよくこういうのやれますね。
佐藤さん
元々はね、居場所が欲しかったんですよ。都心に住んでると家も狭いし、家族もいるから自分だけの部屋みたいなのが欲しくて。そんな時に「ボロッボロだけど激安」みたいな物件を見つけたから、それをDIYで修繕して綺麗にして自分の好きなものを置いて、っていう風にしてたら楽しくなっちゃって。
ヨッピー
へー——。
佐藤さん
だからね、最初は自己満足だったんです。でもせっかく綺麗にしたのに家は他にあるし、ずっとそこに居るわけじゃないしもったいないから時間で貸したりしてね。そうやって作った部屋が、ドラマの中で三浦春馬さんの自宅としてテレビに出たりして嬉しかったんですよ……!子どもに「テレビに出てるの父ちゃんの部屋だよ!」って。
佐藤さん
そこから「ボロボロの物件をDIYで直して人に貸す」みたいな事をはじめて、その一環でこの古民家も。ただ、ここに関しては地元にお金を落とそうという事でちゃんと業者さんにお金を払って修繕して頂きましたけど。
ヨッピー
でも囲炉裏もあるし海はすぐ裏だし街並みも綺麗だしめちゃ良いですね。
佐藤さん
でしょう。コロナは大変な事ばっかりだけど、テレワークが当たり前になった事は本当に良かった。なので夏になると家族総出でこっちに来て、テレワークで東京の仕事をしつつ、あいた時間に海に潜って魚を突いたりして過ごしてます。
ヨッピー
僕思うんですけど、今までの「勝ち組」のモデルケースって、なんとなく「都心のタワマンに住んで地上〇階だぜ」みたいな感じだったと思うんですけど、コロナになってからは自然の多いところに住みながらテレワークで働く、みたいなイメージに変わりつつある気がします。僕の周りでも長野とか鎌倉に引っ越した人多いしなぁ。
佐藤さん
それが一番の贅沢ですよね。
そしたらスマホでもこれくらいの写真が撮れるくらいには星が綺麗でした。
肉眼で天の川が見える……!
クアアァアアア!僕も田舎に第二の拠点が欲しい……!
【そして翌朝】
だいぶ綺麗になったぞ~~~~!
果たしてここに、お宝はあるのでしょうか!
ヨッピー
どうですか!?
坂井美術さん
すごい数ですね。ここまで一気に数が揃うのはなかなか無いです。
ヨッピー
でしょう!
坂井美術さん
ただここにあるものは、ほぼ日用品ですね。「美術品」というカテゴリーに入るような骨董品は相変わらず高いんですが、日常で使われるような古い食器類なんかは元禄の頃のものならまた別ですが、明治期の食器類となるとなかなか値段も下がってまして……。
ヨッピー
えー——。
ヨッピー
ほら!こういうお酒飲むやつとか!綺麗じゃないですか!
坂井美術さん
そうですね。状態も良いですし。
ヨッピー
でしょ。あとでこっそりパクろう。
坂井美術さん
ただ、こういうのもやはり数がたくさん出て来るから希少性があまりなくてですね……。
ヨッピー
えー————————。
坂井美術さん
ここ金沢では輪島塗りの食器なんかもたくさん出て来るんですけど、輪島塗りは食洗器が使えませんし、需要がそもそも少なくなってまして……。
ヨッピー
じゃあ、例えばこの桐の火鉢は!? 状態も良いし立派なものだと思うんですけど!
坂井美術さん
「火鉢」の需要がそもそも少ないのと、あとはこういうものもやっぱりたくさん出て来るんですよ。ちょうど、おじいちゃんおばあちゃんから孫の世代が引き継いだりする時期なんですかね。今回のようにこれだけまとまった数を一度に、というのはなかなかありませんが、こういうものが持ち込まれる事は正直言って良くあります。
佐藤さん
そうなのか……。
ヨッピー
佐藤さん、「本当かよ」とか思ってメルカリで「桐 火鉢」って検索してみたら確かにゴロゴロ出てきます。
佐藤さん
あ!そうだ!蔵のものではないんですけど、お宝がありますよ!
佐藤さん
この屏風、友達からもらったものなんですけど、この絵の部分が石でできてるんですよ!
確かに何かしらの鉱石で出来てる!
佐藤さん
これ運ぶのもめちゃくちゃ重かったんですが、こんなの加工に手間がかかるだろうから絶対高いやつだと思って!
坂井美術さん
あー、これはまあ、中国のお土産もので良くあるものでして……。
佐藤さん
……。
ヨッピー
これ、「なんでも鑑定団」で「5,000,000円 500円」とかになるパターンのやつだ……。
坂井美術さん
はい、まあ……。
佐藤さん
……。
ヨッピー
なんかしゃべれ。
その後、3時間くらいかけてみっちり鑑定する坂井美術さん。
待っている間、ヒマなので我々は魚を突きに来ました。顔が白いのは日焼け止めです。
ちなみに僕は夏も自然も大好きで、夏のあいだはしょっちゅう川で泳ぎ散らかしているので潜水はお手の物です。海に潜る僕の雄姿を見てください。イシダイ80匹くらい仕留めるのは余裕のはず。
※ちなみに1匹も獲れませんでした。
そして鑑定が終わった!
ヨッピー
うーん、やっぱり厳しいですかね……。
佐藤さん
いや、実は僕、「まあまあ高く売れるんじゃないか」って思ってますよ。だって、事前に送った写真を参考に坂井美術さん、こんなにゴツいトラックで来てるじゃないですか。
坂井美術さんが乗ってきたゴツいトラック。
佐藤さん
これを借りるのってそこそこ高そうだし、これを借りるコストをかけて、金沢からわざわざここまで来てるってことは、それなりの収益が見込めるってことでしょ!?
ヨッピー
あー確かに!
佐藤さん
だから2桁万円くらいにはなるんじゃないかと……。
果たして気になる結果は……?
坂井美術さん
そうですね、値段がつくもの、全部まとめて60万円でいかがでしょうか。
佐藤さん
うおー——!それはありがたいです!
札束が出てきた!
ヨッピー
うわー-、生々しいな~~!
佐藤さん
うわー!どうしよう!元々の家主の人に「大事なものが出てきたら連絡しますね!」って言ってるからこれも言った方がいいのかなー!
トラックに積まれたたくさんの品々。良い人に買われて欲しい。残されたものについては佐藤さんが骨董市なんかを開いてコツコツ売るつもりだそうだ。
坂井美術さん
数のわりにそれほど高い金額にならなくて申し訳ないのですが、ご説明した通りほぼ全て値段が下がり気味の日用品でして、美術品と呼べるようなものがなかったのと、比較的新しいものが多かったので……。
佐藤さん
ぜんぜん問題ないです!
ヨッピー
あ、そうだ。今回の件とは無関係なんですが、僕の実家に長曾我部盛親が使ってた鐙(あぶみ)があるんですよ。馬に乗る時に足置くやつ。あれって400年前とかのやつだし、京都の蓮光寺っていうところに片方があって展示されてたりするんですけど、もう片方は僕の実家にあるんですよね。あれ、売ったら高いですかね?
坂井美術さん
おお、それこそ「なんでも鑑定団」に出したらどうですか?
ヨッピー
おお、ン百万とかで売れるならマジで売ろうかな……。親父からは「ウチは長曾我部の末裔やぞ」みたいな事言われてるんですけど、僕わりとそういうのどうでもいい派だし……。
佐藤さん
バチが当たりますよ。
その後はスイカを食べたり、
暑すぎて熱中症寸前だったので古い大きな樽に水を張って水風呂に入ったりしました。
佐藤さんはここに新しくサウナも作る計画をしているそうで、その時はこの樽も活躍するに違いない。
ちなみに佐藤さん、この物件以外にも尾瀬の方にも趣味の拠点があって活用方法を模索しているらしい。
佐藤さん
この赤崎はもちろん良いんですけど、尾瀬も良いですよ。
ヨッピー
うらやましすぎる。
そんなわけで1泊2日の滞在中、古民家の大掃除を除いては「ザ・夏!」っていう感じの楽しい時間を過ごさせて頂きました。本当にありがとうございます。いやー楽しかった……。
ヨッピー
いやー、良かったですね。もちろんレポート記事書きますし、それを見た「僕も古民家で遊びたい!」みたいな人が予約ばんばん入れてくれるんじゃないですか?
佐藤さん
ただ、問題がひとつありましてね。夏の間は僕がここで遊びたいんで、一番の繁忙期にはお客さんの予約をブロックしてるんですよ。だから、夏はちょっと予約取りづらいかも……。
ヨッピー
公私混同しすぎ。。
そんなわけでめでたしめでたし、という感じなのですがひとつだけ、めっちゃ腹が立ってる事がありましてね。
鑑定に来た坂井美術さんが「すごい整頓されてて綺麗ですね」っておっしゃるから「いやー、来て頂く前に掃除しておこうと思って……」って言ったら「わざわざ!?別に汚いままでも値段は変わらないのに」って言われました。
今までの苦労はなんだったんだ。
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