接着剤の基本7.つかない素材。

「きちんと塗る」「モノがきちんと濡れる」のが大事なことは、もうこれを読んでいる皆さんの中では常識になりましたね。(まだの人は、第2章「塗るって大事。」を参照)
ところが、つける素材の中には「きちんと濡れない」素材があるんです。
きちんと濡れないというのは、接着剤を塗っても弾かれてしまうということです。

そういう素材の代表選手5つ。これは覚えておくと良いです。

  • シリコーンゴム(SI)
  • ポリプロピレン(PP)
  • ポリエチレン(PE)
  • ポリアセタール(POM、ジュラコン®,デルリン® など)
  • フッ素樹脂(PTFE、テフロン® など)

イメージとしてつかみやすいのは、フッ素コーティングされたフライパンに水や油を垂らした場合、思いっきり弾かれますね。水滴がコロコロ転がってしまう状態。あれが「濡れていない」状態なんです。

くっつくというのは、液状の接着剤が「きちんと塗れて」→「表面に馴染んで」→そのまま固まるから「馴染みっぱなし」=「くっつく」ですから、「弾かれて」→固まっても→「弾かれっぱなし」すなわち「くっつかない」わけです。

つかない素材の主な特徴は4点あります。素材の見分け方として覚えておくと便利です。

①水を弾く。油を弾く。
②水に浮く。(ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーンゴム)
③よく滑る。(ポリアセタール)
④油性マジックで書いても拭くと消える。

生活用品でいうと、水がかかりやすい場所で使うものに採用されています。例えば、洗面器のようなお風呂場用品とか、ガーデニングのプランターとか。あるいは、滑りの良さが必要な箇所、例えば、カーテンレールの球とか、家電製品のヒンジ部分とか、そんな様な所に多く使われている素材です。
ほかにも、シリコーンゴムは耐熱性の必要な箇所に使われていたり、ポリプロピレンは百均のプラスチック製品なんかにもよく使われています


では、これらをつけるためにはどうするかというと、「つかないもの専用接着剤」を使います。
セメダインでは2種類あります。
ひとつは、超多用途弾性接着剤のスーパーXシリーズ、「スーパーXハイパーワイド」。これは[シリコーンゴム][ポリプロピレン][ポリエチレン]の3種類をつけることが出来ます。
もうひとつは、難接着物専用接着剤「セメダインPPXセット」。こちらは先ほど挙げた、つかない素材の5種類全部に対応しています。
「スーパーXハイパーワイド」は軟らかく、「セメダインPPX」は硬く固まります。

つかない素材にはつかないもの専用接着剤があるということを覚えておきましょう。ただし、注意点をひとつだけ。
「つかないものがつくから強力」ではないということです。
むしろ、つかないものをつける為に何かが犠牲になっている。と考えた方が良いでしょう。

スーパーXハイパーワイドは、普通のスーパーXゴールドより、耐熱性は劣って90℃程度、さらに、完全には乾ききらないので、はみ出してしまったところはベタベタ感が残ります。完全には乾ききらないというのは、スーパーXハイパーワイドは、くっつく機構が「接着力と(テープの様な)粘着力のハイブリッドタイプ」になっているからです。接着力だけでなく、強粘着で表面をグリップするから、つかない素材もくっつけられるんですね。()
PPXセットは瞬間接着剤なので、広い面積をつけるのには向いていませんし、デコボコ面や歪んだ面には使えません。

というように、先ほどのつかない素材5種類でないのなら、スーパーXゴールドのような普通の接着剤を使った方が満足度の高い接着が出来るといえるでしょう

この〝強粘着でポリプロピレンもくっつく〟方式はセメダイン製以外の接着剤でも採用されています。いずれもネバネバやベタベタするタイプなので、ちょっと注意が必要です。ではそれをパッケージ表記で見分ける方法は...というと、代表的な表記として『つきにくいプラスチックもOK』や『つきづらいPP/PEも接着可能』といった「つきにくい材料もOK」パターンや、『強粘着』『硬化後も粘着性が残ります』といった「粘着表記 or 粘着併記」パターンがあります。ネバネバ感やベタベタ感が気になるという方は避けた方が良いかもしれません。チェックしてみて下さい。(接着剤売り場が小さく、品揃えが少ない場合に、この〝ほとんどの素材をつけられる〟が〝強粘着でベタベタする〟タイプのものが置いてあることが多くあります。)
また、お使いになる際は、塗るときにハミ出さないように気をつけましょう。 繰り返しになってしまいますが、「つかないものがつくから強力」ということではありません。


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