ものづくり 2026年11月06日

ジャンルは違っても通じ合う「夢中になって作る楽しさ」—みんなにも全部見てほしー! ギャル電のYoung Maker Challenge 2026レポ

Young Maker Challengeとは

Young Maker Challenge(YMC)は、学生メイカーを対象にしたコンテスト。個人や学生、企業が自分で作ったものを持ち寄って展示するイベント「Maker Faire Tokyo」の中で開かれてる。2022年に始まって、今年で5回目。今年のMaker Faire Tokyoは9月5日と6日に有明GYM-EXで開かれて、YMCには     53組がエントリーした。電子工作からロボット、楽器、宇宙開発まで、ジャンルはとにかく幅広い。審査では技術だけじゃなくて、発想のユニークさや熱意、続ける力、チームの力も大事なポイントになってる。
 
審査員は、多摩美術大学名誉教授の久保田晃弘さん、デイリーポータルZのライターで「ヘボコン」主催の石川大樹さん、そしてギャル電の3人。第1回からずっと同じメンバー。エントリー作品は毎年甲乙つけがたくて、ギャル電は審査のたびに寿命が何年か削れちゃうけど、そのうちおきるっていうシンギュラリティの恩恵でたぶん200年生きる予定だからプラマイゼロ! いぇい!
 
YMCの出展作品はギャル電にとって専門外のものが多いから、ブースを回りながら「これどうなってるの?」ってヤングメイカーにめっちゃ聞いてまわってる。みんな丁寧に答えてくれて、すげー尊い。パネルに書ききれないこだわりや、失敗や回り道の話が聞けるのが、毎年めちゃ楽しい。
 
レポートってどうしても受賞作中心になりがちだけど、このレポートでは受賞作に限らず、話を聞いて印象に残った作品をできるだけ紹介したい。メイカーフェア自体が面白い作品だらけで、YMCの作品はなかなか全部は見きれないけど、審査員は全部見てるから。とはいえ、本当は全部見てほしいのに、全部は紹介しきれなかった。ごめん! 受賞作は【公式レポートへのリンク】をどうぞ。
 

ごはんからロケットまで

 茶碗のごはんの表面をほぐしてふんわりさせる専用しゃもじを設計して3Dプリントで作った人がいるかと思えば、大勢のメンバーでロケットを飛ばして、その知識を後輩へつないでるチームもいる。いま欲しい身近なツールから、何年もかかる宇宙開発まで、同じコンテストに並んでる。この振れ幅がYMCの面白いところ。
 
だから審査でギャル電がいつも知りたいのは、作った本人やチームが、その作品やテーマの何を面白がってるか。なんでこれが欲しいと思ったのか、効率を考えたらまずやらないようなこだわり、計画通りにいかなくて別の道に夢中になっちゃった話。面白がるポイントは人それぞれだから、自分が知らないジャンルほど聞くのが楽しい。

YMCには、ほかのコンテストや大会に出た作品や活動の紹介をしているチームも多い。そういうチームの話を聞くと「こんなにいろんなコンテストがあるんだ!」って感動する。トマトを収穫するロボットの競技会に挑むトマト娘、鳥取の月面探査ローバーの大会で優勝したTSUKUBA ROVER TEAM、家事や片付けをこなすロボットで競うRoboCup@HomeのPyLoT Robotics、フライングディスクを撃ち合うCoREのこんてにゅ~、世界規模のロボコンFTC/FRCに挑むYabusame Technology。
コミュニティ活動をしているグループもあって、日本学生レゴ部ユニオンのレゴGBCは、レゴで作ったボール転がしのコミュニティ。ボールの受け渡し部分を規格化して、みんなが作ったモジュールをつなげていく界隈の共通ルールがある。単にボールを転がすだけじゃなくてアームが動いたりもする。その神業すぎる機構の仕組みを聞いたら、すごすぎてあんまり理解できなかったんだけど、推しの専門書まで紹介してくれた。それぞれの活動の目標に向けて磨かれた技術やノウハウが、ひとつの会場でみれちゃうのめっちゃ贅沢じゃん!
 

今年目立ってたのは「身近なテーマ」と「フィジカルAI」

今年は、自分の生活や身の回りから出てきたテーマの作品と、「フィジカルAI」系の作品が目立ってた。身近なテーマの作品はこのあとのピックアップで紹介するとして、まずはフィジカルAIの話から。フィジカルAIっていうのは、AIの判断力をロボットみたいな体と組み合わせて、現実の世界で動かす技術。動きをあらかじめ人がプログラムしておくんじゃなくて、たくさんのデータから学習したAIが、カメラやセンサーで状況をつかんで、どう動くかを自分で判断する。
YMCでも、この技術につながる研究の展示が去年よりぐっと増えた印象。たとえば東京農工大学のKAINA工房の双腕ロボット「KAINA」は、手の動きを地道にAIに学習させてる様子が動画で展示されていてよかった。手の造形もこだわりがすごくて、めちゃきれい。愛知工業大学のAIT鉄人プロジェクトは、鉄人28号をモデルにしたヒューマノイドを23年間作り続けてるプロジェクト。代々引き継いできたロボットに、いまはフィジカルAIを取り入れてる。長く続いてきたプロジェクトが、AIツールの進化でまた新しいことを始めてるのがおもしろい。

KAINA工房:双腕ロボット「KAINA」
AIT鉄人プロジェクト:鉄人23号
作り方のほうでもAIの影響は大きい。ハードウェアを作ろうと思うと、回路設計、プログラミング、機構設計、工作とカバーしなきゃいけない範囲が広くて、一人だとどこかで詰まりがち。苦手なところをAIツールで補えると、やれることの幅がぐっと広がる。
ワイヤレス給電で動く電子ペーパー名刺を展示していた、そうまめ部屋の得丸さんは、ずっとソフトウェア開発をやっててハードウェアは最近始めたばっかりなんだって。なのに、AIツールで基板を設計して、作品を会場で売れるレベルまで仕上げてた。Androidアプリ経由で表示内容も書き換えられる。で、会場での売上でiPhoneアプリのデベロッパー登録代を払って、iPhone版アプリもAIツールで作って、イベントが終わった夜にはもう公開したらしい。ハード開発もアプリ開発も資金繰りも、全部このスピードで回してるのすごすぎ。
そうまめ部屋:電子ペーパー名刺
話を聞いてると、みんなAIツールを特別扱いしすぎないで、ほかの道具と同じ感覚で自然に取り入れてて、真似したいなって思った。
AIツールに丸投げで全部任せるわけじゃなくて、先輩に教わったやり方や、実際に手で試す方法とも自然に組み合わせてる。設計や下調べが早く済むぶん、作って試すところまでのスピード感がすごい。AIを活用してシミュレーションでは完璧になったのに実機だとコケる、って話も聞いてそこはやっぱり地道に手を動かして詰めるしかないなと思ったけど、それにしても試行錯誤の速度と回数がめっちゃあがるのはいいよね。
ちょうどイベントの2日前の9月3日に、OpenAIの「GPT-6 Astra」が出たばっかりで、会場でも「Astraって3D CAD操作できるらしいよ」ってあちこちで話題になってた。ギャル電は3Dモデリングとかはできる気がしないし覚えるのめんどいなーって選択肢から外してたけど、みんなの話を聞いてたら、Astraに手伝ってもらって3Dプリンタやってみよっかなってやる気出た。
  

今年のピックアップ

 ★しゃりきり丸(筑波大学エンタテインメントコンピューティング研究室)
ごはんを正確に100g量ってよそうだけじゃなくて、「ごはんをふんわりさせる」ところまでやれるしゃもじ。バイトでごはんを盛りつけるときに、もっと手間を省きたいって思って、思いついたんだって。だからご飯をすくう部分の底に、突起のついたほぐしツールを付けた。これを使うとご飯の盛りをふんわりさせることができる。ギャル電はごはんをふんわり盛りつけることなんて気にしたことがなかったけど、これを見てから外食で出てくるごはんがちょっと気になるようになった。ごはんがふんわりしてたら、それはもう愛じゃん。作品を見たあとで世界の見え方が変わる、身近過ぎるけど自分では思いつかない作者本人のこだわりがめっちゃ印象に残った。

★かわいいロボたち(女子美術大学 ロボット研究プロジェクト)
普通なら消したいモーターの駆動音を、「ノイズじゃなくて、この子の鳴き声です」って言い切ってた。ずっと前にギャル電はEテレの「魔改造の夜技術者養成学校」に生徒として出演して、石黒浩さんの「生き物はモーターの音とかしない」って話に感動したんだけど、これを見たらモーターは鳴き声説もありじゃん! このプロジェクトは毎年かわいいロボを作り続けるうちに、「かわいいロボ」ってジャンルを新しい概念でどんどんアップデートしてる。「ノイズじゃなくて、この子の鳴き声です」は、今年のベスト名言。
★Suicaリーダー(桐朋電子研)
電子部品屋さんで投げ売りされてた出どころ不明の謎マイコンボードで、Suicaを読み出す。地味に見えて、難易度はめっちゃ高い作品。ネットにろくに情報がない謎ボードを調べ倒して、自分の扱えるものにしちゃうの、むちゃすげー! 根性がないギャル電は「これができる!」ってわかってるボードを最初から買います。作った本人も「手間を考えると全然安くないんですけどね」って笑ってて、割に合わないことを面白がってやっちゃう昔ながらの電子工作気質、めちゃめちゃよかった。
★ビーズの子鹿ロボット&ウサギのロボット(榎本ひらく)
去年「榎と卵」名義で優秀賞を獲った、ビーズとワイヤーで骨格を組み上げたロボット。今年は新作のウサギと、制作過程も展示されてた。ぬいぐるみの作り方を参考に粘土で頭の型を作って、型紙をとるようにビーズを編んだんだって。ロボットとビーズ手芸の融合っていう超オリジナルな作品の、試行錯誤の部分や制作過程が見れてすごくおもしろかった。ビーズの厚みの分だけ型を小さく作るとか、作ってみないと出てこない工夫もぎっしりあって、誰もまだ作ったことのないものを試しながらやっていることがよくわかる。改めてすごいなって思った。
 ★超小型衛星TCU-01(東京都市大学 宇宙科学教育コミュニティ TAC)
右の人がかぶってる黒い箱。ぱっと見、ただのキャラクターっぽい被り物かなと思ってたら、それを使って超小型衛星の説明をしてくれた。被り物にはパネルやアンテナなどの機能が表現されてて、小さくて見えにくい衛星を大きく見せる説明用の模型として機能してる。会場でも目を引くし、知識がない人も理解できるように工夫されたフレンドリーな展示で、とっつきにくい衛星の話がめちゃ親しみやすくなってた。

まだまだある、グッときた作品

・マイ・クラビクル(筑波大学エンタテインメントコンピューティング研究室)
骨折した自分の鎖骨のデータを3Dプリントして、ヒンジで接続。何度でも骨折を再現できるようにした作品。

・MTB-co-driver(にひにひ)
オフロード用の音声ナビ。自分でマウンテンバイクに乗って走り込んで作ったらしい。本気で使えるデータをつくるために、身体がコースを覚えてナビがいらなくなるくらい走った!って話がめちゃよかった。
・Fabレール(デジタルファブリケーション同好会 Fabri.)
MDF板にスリットを入れて曲げることでレールを作ってる。そのレールの上をMDFの汽車がちゃんと曲がっていく、工夫とこだわり。チームで共通のテーマを決めて、各メンバーがパーツを作ったらしい。メンバーの個性が出ていてバラエティ豊かなのに、組み上げたときにひとつの街としてまとまってるのもすごい。
・ミニモジュラーシンセ(筑波大学OPEN ESYS)
思わず「ふつうにほしい」って言っちゃった、小さくてかわいいブレッドボードのシンセ。
・星屑のささやき(もね)と素粒子検出器(加速キッチン)
どっちも同じ、宇宙線を見る装置。ひとつは宇宙線を音と光で「表現」として見せてて、もうひとつは中高生が自宅で観測するための「道具」。並べて見ると面白い。
・Ra-Geocaching(明星大学 情報学部 OpenLab)
会場に隠した発信機を手作りラジオで探す宝探し。自作したラジオのデザインもかわいいし、ラジオを使って遊ぶっていうアイデアがたのしい。

■ 長いプロジェクトの「今年の現在地」もみどころ

今年のエントリーのうち22組は過去に2回出展してて、そのうち12組は3年連続。
長い年月がかかるプロジェクトの毎年のアップデートを見たり、聞いたりするのも楽しみのひとつ。
高専生が粒子加速器を作る小山高専×長野高専のチームは、加速器の各パーツを毎年着実にアップデートして見せてくれる。それとは別に、ガウス加速器で遊びながら仕組みを伝える展示用ゲームも毎年新しく作ってて、今年のボーリング風ガウス加速器はめっちゃオシャレで完成度も高かった。神奈川大学 宇宙エレベータープロジェクトは今年は大きな方針転換があったって話をしてくれて、うまくいかなかったところも含めて途中経過をそのまま聞かせてくれたのが面白かった。こういう展示があることで、宇宙エレベーターの競技があることやそれに特化したロボットがあることを、Maker Faireを見に来たひとに知ってもらえる。いろんな人が興味をもつ機会になるのはすごくいいなってギャル電は思ってる。

ロケット開発のチームも毎年複数参加してくれてて、今年も燃焼実験の映像や実際のロケット、燃料まで展示してた。ロケットの打ち上げって、ギャル電みたいな電子工作界隈からすると想像がつきにくいけど、展示を見ると実際にどんなことが行われていて、ひとつずつどう作ってクリアしているのかがわかってめちゃ面白い。東海大学 学生ロケットプロジェクトは打ち上げ実験の報告書まで展示してて、中身をじっくり読めるのがよかった。名古屋大学宇宙開発チームNAFTはマスコットを新しくする予定なんだって。このマスコット、わりと味があるかわいさですき。
来年も楽しみにしてるよ!
 

おわりに

出展者に作品を作り始めたきっかけを聞くと、「暇だったからやってみたら沼った」「先輩に誘われて」「授業で作った」って答えもけっこう返ってくる。きっかけはそのくらいゆるくても全然いい。とりま作って、展示して、なんか楽しかったからまたやろっかなー、でいいし、それが次のモチベになったらうれしい。ギャル電も毎回、審査のあとは「なんか作りてー!」ってなってる。
 
YMCの参加資格は学生限定だけど、会場では、卒業後も一般出展者として作り続けてるメイカーたちにもよく会う。ギャル電も途中で嫌になったり、脱線したり、落ち込んだりしょっちゅうだけど、結局また何か作っちゃう。みんな自分のためのものづくりを好きにやったらいいよ、って気持ちを毎年もらってる。今年出展したみんなも、自分のペースで人生の中で物を作る楽しみをつづけてくれるとうれしい。
 
ここまで読んでくれた人に、YMCのおもしろさがちょっとでも伝わってたらうれしい。
学生の作品には「学校」っていう軸があるから、ほかのメイカーの作品とはすこしちがう作り方を見ることができたり、あたらしいやり方への柔軟さを感じたり、ヒントをもらえることも多い。
MFTに来たことある人も、まだ知らない人も、次はYMCに注目して会場を回ってみてほしい。来年もみんな要チェキ! 



 ライター:ギャル電 きょうこ
 
ギャル電
今のギャルは電子工作する時代!
ギャルによるギャルのためのテクノロジーを提案している電子工作ユニット。
ドンキでアルドゥイーノが買える未来を夢見ている。
X(旧Twitter)         @GALDEN999
Instagram   @galdenshikousaku
 

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