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ものづくり
2026年03月13日
プラモデルは、楽しむだけでよし ——パンクブーブー・佐藤哲夫が語る、接着剤から始まった“趣味を楽しむ時間”
プラモデルを作るとき、誰もが一度は「接着剤」を手に取る。それはパーツとパーツをつなぐための道具であり、同時に、ものづくりの世界に一歩踏み込むための“入り口”でもある。パンクブーブー・佐藤哲夫さんにとって、その入り口は、セメダインの赤い瓶だった。プラモデルを買うのを我慢して接着剤を買う。その小さな決断が、ただの遊びだった模型を「作る」という行為へと変えていった。
子どもの頃の記憶。家族と過ごした模型の時間。仲間と朝まで笑いながら作った夜。そして自分たちの模型サークル「吉本プラモデル部」の誕生……。
佐藤さんは語る。
「プラモデルは、楽しまなければいけない。それだけでいいんです」
この言葉の裏側には、道具と共に積み重ねてきた時間がある。
セメダインを“使ってきた人”の言葉は、静かに、しかし確かに、「趣味を楽しむ」ことの素晴らしさを伝えてくれる。
吉本プラモデル部は、ただの模型サークルです
ーー改めてですが、「吉本プラモデル部」について教えてください。
佐藤:よく聞かれるんですけど、ただの模型サークルなんですよ。目的も理念もなくて、ただプラモデルが好きな人が集まってるだけです。実はきっかけは家庭なんです。結婚して、子どもが生まれて、2歳くらいのときに現在のBANDAI SPIRITSから『ダンボール戦機』のプラモデルがゲームと一緒になって発売されたんですよね。この「ゲームの特典」に僕と息子が夢中になってしまったんです。
ーーそこから模型が再び日常に戻ってきた。
佐藤:そうです。「これは自分で作るやつだよ」って言ったら、やってみたいって。僕が組みながら、簡単なパーツを渡して、ギュッてはめてもらって。できたらママに見せに行って、褒められて。そこから一気にハマりました。そしてその話を楽屋で、ハイキングウォーキングの鈴木Q太郎、Qちゃんに話したんですよ。そうしたら「僕もやってるんですよ!」ってなって大盛り上がり。そんな様子を見ていた他の仲間からも、「実は俺もプラモデルやってるんですよ」っていう人間が出てきた。プラモ趣味って自分からは「やってます!」って言う人ってあまりいなくて、この件のようにあるきっかけで繋がれるもんなんです。だから『ダンボール戦機』がまさに僕たちを繋げてくれたんですね。そこからは気づけば朝までプラモデルを作る会になっていました。当時はプラモデルを作るのによく使われる専門用語が分からなくて……だからその言葉を使うのが面白くてゲラゲラ笑ってたんですよ。そしたら「これライブになるんじゃない?」って話にもなり、実際に模型好きのお客様の前でライブしてみたら大盛り上がり。僕らのプラモデルに対するモチベーションもさらに上がりました。そんな活動をしているうちに、今の「吉本プラモデル部」になっていったんですね。
“模型屋のおじさん”になりたかった
ーー佐藤さんが目標にしているモデラ—像ってありますか?
佐藤:ありますよ。子どもの頃、近所にいた“何の仕事してるか分からないけど、プラモデルめちゃくちゃ上手いおじさん”です。僕らが小さい頃にあった「模型屋のショーケース」ってとても特別な場所。あそこに飾ってもらいたい! あんな風に作りたいと何度も思いました。ちょっと頑固な親父さんがいるお店だと、「自分で作れるようになれ」って叱咤激励されたりもしました。今ではお店の方がそんな風に言ってくることなんてないですよね。でもあれが良かった。怒られながら教えてもらって、模型屋で育った感覚がある。だから僕らがやってるのは、模型屋のおじさんごっこなのかもしれません。
子どもの頃、プラモデルはもっと身近にあった
ーー最初に触れたプラモデルの記憶は?
佐藤さん:大分の田舎なんですけど、プラモデルって今よりずっと身近でした。歯医者のおまけにもあったし、薬の景品にもあった。だから、「そう。始めよう」じゃなくて、もう触ってる。そこから自然に大きいの、難しいの、って進んでいったんです。当時の小学生にとっては本当に当たり前の、誰もが通る玩具だったんですね。
最初のセメダインの思い出
ーー初めて買った接着剤って覚えていますか?
佐藤:これはもう「セメダインの赤い瓶」です。プラモデルを我慢して接着剤を買うの、あれは勇気がいります。でもマイ接着剤を持ってるのって、ちょっと誇らしかったです。当時はプラモデルの中に袋やチューブに入った接着剤があったのですが、あれを使いこなすのは難しかったです。でも、この赤い瓶の接着剤には最初から蓋にハケがついていて、綺麗に接着剤を塗ることができたんです。それだけで、プラモデルは今までよりも圧倒的に綺麗に組めるようになりました。あと、プラモデルの中に入っていた接着剤を部屋で踏んでしまったりして、家族に怒られたりもしました……。接着剤の存在はプラモデルの思い出にとって欠かせない要素なんですよね。
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※ リンク先は、セメダインのサイトではなく、外部サイトです。
※ リンク先販売者の都合等により、リンク切れ等の場合があります。
接着剤を買った瞬間、プラモデルと接する時間が伸びた
ーー接着剤を買った瞬間って、模型を続けられるか模型から離れていくかの分岐点のような気もするんです
佐藤:本当にそう思います。接着剤が使えるようになると、まずはいろんなプラモデルが組めるようになります。選択肢も増えるから、玩具屋さんや模型店にいる時間も自ずと長くなる。さらに接着剤の乾燥をまったりするので「その日で終わる遊び」じゃなくなる。今日は組む、明日は乾燥、次はヤスリ、次は塗装。プラモデルに接する時間がどんどん伸びていくから、その分思い出も増えるんです。だから接着剤を触ってプラモデルを作った人って、一度大人になってプラモデルから離れても、戻ってくる人が多いと思います。まさにセメダインは、プラモデルと人生をつないでる道具だと思ってます。
ちょっとした工夫があるからこそお気に入りになる
ーー今よく使う接着剤は?
佐藤さん:瞬間接着剤のゼリータイプです。セメダインでは「3000ゼリー状速硬化」という名前で販売しています。垂直面でも垂れないし、ちょっとした傷埋めにも使える。容器設計も素晴らしくて、横に倒しても押されない。落としても転がらない。作業中の失敗を前提に作られてる。そういう道具が好きなんです。可愛いやつですよ。
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プラモデルとお笑いは、驚くほど似ている
ーープラモデルとお笑いって共通点を感じますか?
佐藤:コンテストになると、めちゃくちゃ似てきます。上手い人はたくさんいる。でも心を打つのは「これをやりたい」って明確なものだと思っています。技術的なことよりも想い。すごく印象的なお笑いって、「噛んでもいい、荒くてもいい、伝えたいものが前に出ていれば、ちゃんと届く」。これって模型趣味も同じだと思うんです。俺はこのプラモのここが好き! こう作りたい! この箱絵のこんなところが最高で! とかその人なりのプラモデルを楽しんでいる姿勢って、上手い下手とかじゃない「想い」の部分が伝わってきます。僕たちはそれに共感したりして、さらにプラモデルを楽しんでいるんです。
「やってみなよ」と言わない理由
ーープラモデルを作ってみたいなと言う人がいたら、どんな言葉を送りますか?
佐藤:あえて何にも言わないです。「やってみなよ」とは言いません。興味を持ったら全力で僕らも応える。でも無理には勧めない。その距離感がいいと思うんです。特に仕事とかじゃなく趣味ですから、大切なのは「楽しんで行こう!」ってことだけです。ストイックな人は好きだけど、強要は嫌い。趣味は自由でいいと思っています。
プラモデルは、人生のどこかで、また戻ってくる
ーー:冒頭でお話しされていたお子さんは、今もプラモデルを楽しんでいますか?
佐藤:受験で休んでます。その他にも部活や友人たちとの遊びも楽しいので、プラモデルに夢中になっていると言うわけではありません。でも今でも部屋の隅には積んであるんですよ。彼にとっても楽しいものの一つとして。
ーー:いつでも戻ってこられる趣味ですよね。
佐藤:そう。ずっと続けなくてもいい。でもプラモデルや接着剤を触った記憶が、必ずどこかで楽しかった思い出を蘇らせてくれる。そうなったら好きな時に戻ってくれば良いと思います。
ライター:丹文聡(たんふみとし)
1983年生まれ。12年務めた株式会社ホビージャパンで、月刊ホビージャパンの編集と広告営業を担当。その後フィギュアメーカー・マックスファクトリーで3年務めたのち、フリーランスの編集として独立。模型ウェブサイト「nippper」の副編集長も務める。
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