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ものづくり
2026年03月27日
高いゲートはどう乗り越え、くぐられたのか?「高専ロボコンをふりかえる会2025」開催レポート
全国の高専生たちがアイデアと技術を競い合う「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」。毎年秋に開催される全国大会には、各校が工夫を凝らしたロボットを携えて集結し、多彩な戦略と独自の機構が激しくぶつかり合います。
そんな大会の見どころから、ロボットに込められた技術的こだわり、さらにはルールやジャッジの裏話までをまるごと愛でる恒例イベント「高専ロボコンをふりかえる会2025」が、2026年1月17日、渋谷ソラスタコンファレンスにて開催されました。
当サイト「CEMEDINE Style」が主催する「ロボコンをふりかえる会」は、全国大会の映像を振り返りながら、ロボコン卒業生やものづくり系ライターとともに競技を深く読み解いていく企画です。これまでは関係者中心のクローズド開催でしたが、今回は初の試みとして一般来場者を招いた公開収録形式で実施されました。
会場には、熱心なロボコンファンからものづくりに関心のある親子連れまで幅広い来場者が集結。スクリーンに映し出される試合映像やルールブックの行間を読み解きながら、選手たちの執念が宿るロボットの動きに一喜一憂する時間が続きました。解説が進むたびに客席からは笑いや驚き、そして大会当日さながらの歓声も沸き起こります。
ロボコンを初めて知る人も、かつて青春を捧げた経験者も、それぞれの視点でものづくりの奥深さを味わった、熱気あふれる1日の様子をレポートします。
熟練から初心者まで、多彩なメンバーが集結
ルールブックを味わい尽くす
イベントは2025年の競技課題「Great High Gate」のルール確認からスタート。「ロボットがボックスを積み上げてゲートをつくり、そのゲートを人が乗った台車と一緒に通過します!」と銘打たれたその競技の中身を、じっくり見ていきましょう。
⓪ 試合前に準備する
競技には1分間の「セッティングタイム」が設けられており、この時間内にチームは「専有ボックスエリア」内のボックスを、あらかじめ積み上げることができます。
① パイロンを動かす
競技開始後、ロボットはまずフィールド上のパイロンを作業エリア外へ移動させます。移動させたパイロンの数に応じた得点が加算されます。
② ボックスを運び、ゲートを作る
「専有ボックスエリア」および「共有ボックスエリア」から大小さまざまなボックスを組み合わせ、高さのあるゲートを構築します。
③ 人を乗せた台車でゲートを通過する
ロボットと連結した台車に人が乗り、その状態で完成したゲートを通過すると得点が加算されます。ゲートの高さ、通過した回数に応じた得点、そしてより高いゲートを成立させたチームに追加点が加算されます。
ロボットの構造設計からボックスの管理、操作精度、さらには人間の動きや時間配分までが問われる、まさに総合競技と言える内容です。
NEKOPLA:基本的にはボックスを積んでゲートを通過する競技ですよね。どうして最初に「パイロンを動かす」という工程があり、それが点数にもつながるのでしょうか?
花守:良い質問ですね!これは「美しい競技とは何か?」という哲学に近い話になります。挑戦する課題として、頑張った分だけ得点に繋がる「階段」がある方が面白い。加点ポイントが細かく設定されていると、観ている方も楽しいですし、レベルが上がれば僅差の熱い戦いになります。最後のゴールだけでなく、手前の段階で点差が生まれるよう、運営側が意識して設計したのだと思います。必ずしも100%のパフォーマンスを発揮できないチームであっても、得点できる余地を残しているのもポイントですね。
実際、出来立てほやほやの地区大会のロボットでは、「動かしてみたけれど、あれ?」みたいなハプニングも多いんです。今年はゲートを積む以前に、パイロンをどかすだけで精一杯という戦いも見られました。例えるなら「素材そのものの味」を楽しめるのが地区大会、しっかり「調理されたもの」を楽しむのが全国大会。通こそ地区大会がおすすめです。
田中:全国大会だけでなく、ぜひ地区大会も見に行ってほしいですね。全国は勝ち抜いた限られたロボットしか出てきませんが、高専生が心血を注いだ結果の多様性は地区大会にあります。私は以前、1シーズンで5地区を回りましたが、ファンの間では「修行」や「聖地巡礼」と呼ばれているようです(笑)。
淺野:2025年の競技ではロボットが人間を牽引するんですね。運搬される人のバランス感覚や体型も影響しそうですし、左右でフィールドの感覚も変わりそうです。人間の物理的な条件がこれほど影響するのは、今年の特徴でしょうか?
花守:こちらも、いい視点ですね!運搬される人は軽い方が有利ですし、ロボットをコンパクトに設計する上でも体格は影響します。自分自身を「システムの一部」として最適化する発想はあったはず。また、当日まで左右どちらのフィールドで試合をするか分からない中で、最適な構造やオペレーションを準備しなければならないのも、難しくも面白いところです。
田中:2023年の競技「もぎもぎ! フルーツGOラウンド」でも審判をしましたが、点対称でロボットがぐるぐる回るので、審判も一緒に走らされました(笑)。選手のみならず、審判もフィジカルを要求されるんです。今年も、ゲート周回時の境界チェックや、パイロンの重なりなどを目視でチェックするのに苦労しました。
また、ロボコンファンなら見逃せないのが、ルールブック公開後に更新されていく「FAQ」。各チームから寄せられる質問に対し、実行委員会が細かな解釈を示していきます。そのやり取りは単なる事務的な補足ではなく、勝利を目指す学生側の戦略と、それを受け止める運営側の思想が交錯する場となっています。
花守:「距離を測るために市販のメジャーは使えますか?」という質問に対し、運営側が「いかなる道具の使用も認められません」と回答したうえで、「そこにこだわりすぎず、『ロボットが』ボックスを高く積んでゲートをつくる様子を見せてください」と付け加えていました。運営側の期待が漏れていますよね(笑)。
淺野:事実だけが並んでいるはずのFAQなのに、良い試合やロボットを見たいというパッションがにじみ出ていて、とても味わい深い。
NEKOPLA:質問側と回答側の立場の違いが見えて面白いです。学生たちは「どうやったら勝てるか」を考えている。一方で回答側には「番組として面白いか」「安全に運営できるか」といった視点があることが窺えます。
田中:学生側もFAQを戦略的に使うんですよ。質問回数には制限がありますから、一度の質問で情報を出しすぎないよう工夫したりして。
花守:質問の内容から自分たちの戦略が読まれる可能性もありますからね。僕の現役時代にも「この質問を出すとバレるかも」といった秘匿性についての議論が何度も行われました。ロボコン精神のぶつかり合いが、このFAQにも現れているんです。
そして、ルールブックを読み解く中で花守さんが注目したのは、意外にもその「前書き」でした。
花守:僕が毎年いちばん楽しみにしているのは、実は前書きなんです。2025年は「ロボコンの父」森政弘先生が1月にご逝去され、その哲学に立ち返るメッセージが記されていました。『教育実践の場』『感動を生む創造』といった言葉が並び、卒業生として胸が熱くなりました。ルールブックを読むたびに元気づけられています。
リスクとリワードがせめぎ合う、手に汗握る試合展開
ルールを把握したところで、実際の試合を見ていきましょう!イベント会場のスクリーンに映像を流しながら、印象的なロボットや戦略についての解説が行われました。
まずは、大会のスタンダードな流れが凝縮された「1回戦④奈良高専 vs 香川高専(高松)」の一戦から。
花守:まずは奈良高専と香川高専(高松)の試合を見ていきましょう。試合が始まると両校とも、まずは「共有エリア」のボックスを確保しに行きますね。相手に取られてしまうと、高得点に必要な高いゲートを立てられなくなってしまうからです。
淺野:パイロンを丁寧に一つずつどかす、イメージ映像のような牧歌的な世界はないんですか?
花守:よく見てください、移動のついでにロボットをぶつけて弾き飛ばしています(笑)。パイロンをどかさないと競技が始まらないけれど、3個のパイロンを律儀に運んでいる時間はない。そこで、勝ちを狙うチームは「移動しながら弾く」という結論に達しています。無駄のない軌道で、パイロンを払いながら共有エリアへ向かう姿は美しいですね。
NEKOPLA:ボックスの運び方もバリエーション豊かですね。縦からつまんだり、横から挟んだり。
花守:そうなんです。この年は「グリッパー(挟む方式)」と「吸盤(吸い付く方式)」の二大勢力がありました。吸盤は触れるだけで拾えるのでスマートですが、ボックスの表面が荒れていると吸着しなかったり、システムを作る知見が必要だったりします。その違いにチームの個性が凝縮されていますね。普通の人生で、3分間でこれほど多彩な「段ボールの掴み方」を見る機会はまずありませんよ。
特に奈良高専は、スムーズな動きで箱を並べていく精度が凄まじい。縦長の箱を自動でスッと起こしていますが、これは地区大会ではなかなか見られなかった動きで、全国では「E縦」と呼ばれ、どのチームも当たり前のようにやっていました。
淺野:そして、積み上げたゲートを自らくぐり抜けて、ようやく得点!一発勝負の、とんでもなくスリリングなことをやっていますね。相手チームより高いゲートを通れば50点のボーナスが入りますが、倒してしまったらすべてがゼロになる。
NEKOPLA:まさにリスクとリワードの設計ですね。高く積むほど点数と同時にリスクも高まるので、その葛藤がありそうです。ルール設計側としては、どこまで積めるか事前に検証しているのでしょうか?
花守:検証している場合もあれば、あえて未知数にしている場合もあると思います。2014年の「出前迅速」では、30個のせいろを載せて坂道を進み、そのまま崩れ落ちる動画が公式から「参考」として送られてきたことがあって。「これを見てどうしろと!」と現場は困惑しました(笑)。
今年は低いゲートを作って負けの可能性を減らす戦略もあり得ましたが、全国では高さがないとまず勝てません。奈良高専のように正確さに自信があるチームは、迷わず一発で最高難易度のゲートに挑んでいきました。
淺野:最後にゲートをくぐった「台車」ですが、これ、めちゃくちゃ小さくないですか?人間そのものが、台車というシステムの一部として設計されている感じがします。
花守:最適化されすぎて、乗っている学生のお尻にベストフィットする形状になっていますね(笑)。台車の大きさが作るべきゲートのサイズにも直結しますから、できるだけコンパクトにしているのでしょう。
機能とロマンと可愛さと。異なる美学が共存
続いて紹介されたのは、異なる設計思想がぶつかり合った「1回戦⑦東京高専 vs 鈴鹿高専」。
花守:東京高専のロボットを見てください、とにかく格好いい!……僕がただ好きなだけなんですけど(笑)。アームを大きく伸ばして、先端の吸盤でボックスを吸着する。先ほどの奈良高専と比べるとスピードには少し不安が残りますが、僕はこういう「やりたいことを詰め込みました」というロボットが大好きなんです。写真集が出せるくらい、たくさん写真を撮らせてもらいました。
NEKOPLA:安定性の面では、長いアームがフラフラと動いて制御が難しそうです。そこは「魅せたい」という気持ちが勝っているんでしょうか?
花守:もちろん勝ちにこだわった上での設計だと思います。でも「やっぱり長い腕は格好いい」「腕が長ければ強い」というロマンもあるはず。あと、外装が黒くて光っているのもいいですよね。
花守:それから、足回りのタイヤにも注目です。最近は全方向に無限回転できる構造がトレンドなのですが、タンブラー程のサイズまで作り込んでいて感動しました。さらに、アームにはカーボンパイプを使って軽量化しているし、左手前にはレーザーサイトの十字も見えますよね。遠目からでもボックスの最適な位置がわかるよう、目印を照射しているんですよ。
田中:重量制限がある中で、ここまで完成度を高めて作ってくるのは素晴らしいですね。
花守:対する鈴鹿高専のロボットは、猫のような見た目がとても可愛らしい。なぜこの2台が同じフィールドに並んで戦っているんだ?という組み合わせが見られるのも、高専ロボコンの面白いところです。
淺野:あぁ〜っ!その鈴鹿高専ですが、「専有ボックスエリア」からゲートを運ぶときに、惜しくも倒れてしまいました。
花守:残念なシーンですが、今年の競技を象徴する場面でもありますね。ゲートが一度崩れてしまうと、制限時間内でのリカバリーが非常に難しい。会場全体が「あぁ〜!」「うわぁ〜!」と一つになる。一発勝負の重みが大きいだけに、ボックスが揺れるだけで観客席も揺れる。お客さんのざわざわも含めて、非常にドラマのあるルールでした。
まるでパレード。見た目と機能が融合するロボットたち
試合の結果のみならず、個性が光るロボットや、選手たちのパフォーマンスにも注目が集まりました。
淺野:「1回戦①神戸市立高専 vs 都城高専」に登場した都城高専のロボットは、カニがボックスを抱きかかえるようなフォルムや、ファンシーな装飾がとても可愛らしいですね。
花守:都城高専はコンセプトや装飾も含めて、「お客さんに楽しんでもらう目線」を毎年大切にされています。そういう姿勢もしっかりと評価されるのが、高専ロボコンの良いところ。勝敗だけ見ると優劣があるように思えますが、実は目指している方向が違うんですよね。しみじみしちゃいます。
NEKOPLA:ルールブックにもちゃんと「オリジナルの装飾をすること」が明記されていて、おぉっと思いました。見ている人を楽しませるのも、高専ロボコンならではのポイントなんですね。
田中:実は審判って、当日は忙しすぎて自分の担当以外のフィールドをじっくり見ている暇がないんです。前日のテストランで説明は受けるのですが、本番でどうなったか知らないことも多くて。気になっていた「1回戦②国際高専 vs 広島商船高専」の試合を見せてもらえますか?
花守:いいですね、是非!国際高専は三人ぐらいでロボットを作るので、機能を減らすことを意識したそうです。勝つことではなくて完成させることを重視するのは、ロボットを作る上でとても大事な考え方。その一方で、カニの目がゆっくりとまわっていたり、甲羅を裏返すと「蟹味噌」と書いてある手の込みようも面白い。
花守:あ、見てください!この審判の必死な姿勢を!
田中:そうなんです、そうなんです……!ゲートは浮かせた状態で移動させなければならないので、接地していないかを地面スレスレでチェックしています。実は「審判がジャッジしやすいロボット」を作ると、判定が速くなって競技進行がスムーズになる。それは巡り巡って、自分たちのタイムを縮めるというチーム側のメリットにも繋がるんです。
花守:強いチームはジャッジしやすいですよね。審判に余計なリソースをかけず、旗が上がるまでの速度が速いから、自分たちのタイムも速くなる。丁寧すぎるように見えても、それが勝ちに必要なことだったりしますよね。
田中:対する広島商船は、地元の厳島神社をモチーフにした「大鳥居」型のゲートを作ろうとしていました。ゲートをくぐった後に、背負った照明でゲートを真っ赤に照らすつもりだった。鳥居は赤くないといけないという、凄まじい信念を感じました。残念ながら本番では完成に至りませんでしたが、真っ赤なゲートはぜひ国技館で見たかったですね。
淺野:ほぼ「仮装大賞」の領域ですね(笑)。地域をレペゼンする覚悟が、全国大会という舞台で爆発している感じがします。
花守:自分たちの土地を背負う覚悟の人もいるでしょうね。地区大会で負けた高専もいる中で試合が進むので、周りからの応援も背負うことになる。あとは、キャラクターを持たせた方が覚えてもらいやすいという面もありますね。
田中:「1回戦③米子高専 vs 明石高専」の米子高専も紹介させてください。最初は正方形に収まっているロボットが、展開して形が変わる。パイロンも押し出しやすい形状になっています。
花守:米子は「運ぶ」の定義をクリアするために、地面スレスレに薄いフィルムを通しているんです。もはや、地面自体を自分たちで作って運んでいるようなもの。僕が会社でこんな無茶な設計をしたら怒られますよ(笑)。でも、こうしたルールの解釈の自由さがロボコンの良さでもあります。
淺野:これで「浮かせている」ことになっちゃうんですね! すごい発想だ。
田中:最後の台車も見てほしいです。横にカバーがついていますよね。乗っている人間がゲートに触れるとルール違反になるので、ちゃんと守るための壁を台車につけている。練習での失敗を解決するために、こういう泥臭い工夫をしているのだと思います。
花守:キャッチーな見た目に惑わされますが、しっかりと工夫されていますよね。米子高専は「ペラペラなシート」の使い方が巧みで、下に滑らせたり、台車を囲んだり。どこまでがロボットか分からなくなるような、境界線を攻めるアイデアが光っていました。
NEKOPLA:ルールという制約があるからこそ、人はそれを潜り抜けるためにアイデアを発揮する。その思考の過程に、ものづくりに熱中する人間の凄みを感じます。
最強対最強。白熱の決勝戦を振り返る
イベントもいよいよクライマックス。会場の全員で、伝説となった決勝戦を振り返ります。
花守: 決勝戦はぜひノーカットで見てほしいですね。ワイルドカードから這い上がってきた熊本高専(熊本)と、圧倒的な独自の戦い方を見せる旭川高専。まさに最強対最強の激突です。
淺野: 実は僕、この試合の結果をあえて予習せずに来たんです。
花守: えっ! まだ見てないんですか? ……羨ましい、今から初見で味わえるなんて!(会場笑)
淺野:試合がスタートすると、旭川高専は共有ボックスには目もくれず、自作のゲートに直行しました!これで完成ってことなのかな。
花守:ゲートの上部をうまく吸盤で押さえているので、このスピードで移動しても崩れません。接地面は、先ほどの米子高専のようにシートを潜り込ませる方式ですね。
淺野:ゲートが得点エリアに置かれると、すごい勢いで回り始めました!台車に乗った学生が真顔で、こんなに縮こまって……!隣で着々とゲートを組み上げる熊本高専と比べると、全く別世界の戦いですね。
花守:会場の人たちが、淺野さんの「初見の反応」を温かく見守る場になってきました(笑)。旭川高専はゲートを一周して追加される5ポイントを、ひたすら積み重ねていく作戦。対する熊本高専は、いかに高いゲートを建てて高得点を叩き出すか。そういう戦いになっています。
NEKOPLA:残り20秒で、熊本高専のゲートが立ちましたね!
花守:そして、気になる試合結果は、490対475で旭川高専の勝利!現場で見ていたとき、声を出しすぎて喉が終わるかと思いましたよ(笑)。15点という差は、パイロンを動かした数や周回数ひとつでひっくり返る極めて僅差の戦いでした。最後の光景を見たら、これで左が勝ったってどういうこと?と思いますよね。点数設計をした人も、ここまで僅差の勝負になるとは考えていなかったと思います。
田中:どの試合でも、審判はゲートの得点ゾーンの出入りをシビアにチェックしていたのですが、旭川の点数はミスなく回り続けたから実現したものです。当日は判定の旗を上げ下げしすぎて、翌日は猛烈な筋肉痛でした。これは余談ですが、旗の釘が外れて布が飛んでいってしまったことがあり、セメダインさんの接着剤でしっかり修理できました(笑)。
花守:審判の苦労が伺えます(笑)。旭川のアイデアは奇策に見えますが、ハードも丁寧に作り込まれているんですよね。タイヤの角度をハンドルを切った状態で固定し、直進入力だけで決まった半径を回れるようにしていたり。床の摩擦係数や痛み具合に合わせて、微調整を繰り返したり。ゴムローラーの素材も、かなりこだわって探し出したみたいです。
淺野:回転を始めるタイミングも難しそうですね。まさに一点突破の努力と積み重ねだ。
花守:台車に乗っていた学生は、練習でゲートを1日1,000回は回ったそうです。他の人が乗るととても耐えられないらしくて。
淺野:やっていることは、ほぼ宇宙飛行士やアスリートだ。
花守:熊本高専も、真っ正面からこの競技に挑んだ素晴らしいロボットでした。あれほど高いゲートを安定して立てられたのは、相手が旭川だったからという側面もあります。相手が共有ボックスを取りに来ていたら、こうはならない。最強同士だったからこそ生まれた必然の結末で、今年の面白さが詰まっていますね。
NEKOPLA:熊本高専のアームは、たった二つで色々な掴み方に対応しているのが素晴らしいですよね。吸盤も使っておらず、練習の成果が感じられます。
花守:一度離して持ち直す調整なんて、相当練習してないと思いつかないはず。熊本高専は中の機構を地区大会から変えず、安定したハードでひたすら練習と改良を積み重ねてきたそうです。努力に裏付けられていた、素晴らしい成果だと思いますね。
ロボコンの魅力を噛み締めた一日
会場からの質疑やリクエストも交え、大いに盛り上がった「高専ロボコンをふりかえる会2025」。最後に、登壇者4名からのコメントであっという間のイベントが締めくくられました。
淺野:熱すぎる決勝戦を、この場で見届けられたのは本当にラッキーでした。ロボコンは理系競技のように思われていますが、フィジカルを絞ったり、操作技術を磨き上げたりと、体育会系のような熱さもありました。また、ルールブックの解釈という文章がベースにあることで、文系・理系の枠を超えた奥深さを感じました。噛めば噛むほど味のする、多層的な楽しみ方ができる競技だと思います。
田中:僕が現役だった頃は、ロボコンを「体育会系文化部」なんて表現していました(笑)。学生たちがルール発表から半年かけて積み上げてきた結果を、こうして改めて振り返ることができて良かったです。運営に携わる身ですが、それを抜きにしても純粋に楽しめる最高のコンテンツ。ぜひ、皆さんも地区大会巡りをしてみてください!
NEKOPLA:ロボコン初心者として参加しましたが、ルールを読み解くだけでもこれほど考えるポイントがあるのかと驚きました。毎年ルールが変わり、そのたびにゼロから新しいアイデアを生み出し、形にしていく。その労力と挑戦する熱い気持ちに触れられる大会ですね。毎年見続けることで見えてくる積み重ねもありそうなので、これからも注目していきたいと思います。
花守:長時間にわたってありがとうございました!公開収録は初めての試みでしたが、一緒に楽しく振り返れて良かったです。現役も審判も、運営もスポンサーも、いろいろな立場の人が一堂に会するイベントは本当に貴重で、感謝しています。
改めて試合を見返すと、現役時代を思い出して胸が熱くなると同時に、社会人エンジニアとして働く今だからこそ気づくすごさもあり、一言では言い表せない思いが去来しています。やっぱり「ロボコン最高!」ですね。帰ったらぜひ、地区予選から見返してみてください。ものづくりを愛する人たちが、それぞれの場所で活躍し、応援し合える。そんなきっかけになる一日だったら嬉しいです。
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