ものづくり 2026年04月17日

30年分のロボットを保管する小山高専「なんなら全部動きます」

「ロボコンは地区大会予選こそ見るべし!」
 
ロボコンは、完成度が異常に高いロボットが出る全国大会よりも、完成度はそんなに高くないけれど愛嬌のあるロボットが見られる地区大会予選が大好きだ。
そんなことをSNSで言っていたら、セメダインさんから「ロボコン常連校の小山高専さんを取材しませんか?」といううれしいご依頼があり、二つ返事で引き受けさせていただいた。
 
小山高専は、細部までこだわった装飾が特徴のチーム。
 
昨年の全国高等専門学校ロボットコンテスト2025では、小山高専Aチームの「レッサー☆はぐ太郎」が全国大会のエキシビションに出場、Bチームの「オヤマシュランラン」が全国大会で1回戦突破、という輝かしい成績を収めた。
 
というわけで、取材で聞きたいことを整理しながら、東京から約3時間かけて栃木県までやってきた。
 
こちらが小山高専の正門。
「エネルギー変換実験室」という教室でロボットを製作している。
「ガリレオ」のような難しい計算式と、かわいい猫のイラストが同居するホワイトボード。
この写真に小山高専のキャラクターがぎゅっと詰まっている。
 
今日は取材よろしくお願いします!
 
こちらが小山高専のロボコンチームに所属する皆さん。
「レッサー☆はぐ太郎」を製作したチームだ。
写真左から明間さん、廣瀨さん、德倉さん、箱守さん、大貫さん。
右から2番目の箱守さんはこの中で唯一の4年生で、下級生たちの面倒を見る立場だという。
 
早速、昨年出場したロボットを見せていただいた。
手前が「レッサー☆はぐ太郎」、奥にあるのが「オヤマシュランラン」
 
ここでロボコン2025のルールを説明しておこう。
 
対戦する2チームのロボットが様々な形の段ボールを積み上げ、凱旋門のようなゲートを作る。
1名がロボットに乗り、そのゲートを何回も周回する。
 
そのゲートの高さと、周回した回数で競うというルールだ。
 
「レッサー☆はぐ太郎」は段ボールを積み上げる時にはぐ太郎の腕が伸びるのが特徴。
 ダンボールを積み上げた後、人間が乗った台車と合体しゲートを周回する。
私も乗らせていただいた。
台車に座ると、はぐ太郎に抱かれているような妙な安心感がある。
はぐ太郎と台車が合体すると、はぐ太郎の口がキスマークになるという仕掛け。
このロボットはそういった細かい芸にあふれている。
細部を観察すると…
バーの部分が竹になってる!
 子どもをだっこしてる!
頭にみかんのへたがついてる!
 「レッサーパンダって有袋類じゃないよな…」とか「なんで頭にみかんのへた?」とか
そんな野暮なツッコミはNG!
かわいいからオールOK!と思いながら隅々まで見ていると気になる部分を見つけた。
人間が乗る部分の足元を見てほしい。
足を乗せる部分に「足1つ分あけたか」という手書きの文字が。
練習時に足1つ分あけていなくて失敗することがあったのだろう。
「本番で凡ミスは許されない」という勝利への執念が感じられ、こういうところがロボコン常連校たる所以なのだろうと思わされた。
 
そして、このロボットを作ったのが大貫さん。
そして、このロボットを作ったのが大貫さん。
 
——小山高専のロボットはどういう段階を経て、製作されるのですか?
 
大貫さん
「小山高専は校内審査会っていうのがあって。4月中旬に今回の大会のルールが発表されてから1ヶ月の間でそれぞれがやりたいアイデアを考えた後、先生の前でパワポを使ってプレゼンします。今回は7チームほどが発表し、その中から2チームが選ばれました。」
 
——なるほど。いくつもの審査をくぐり抜けてやっとロボットを作り始めることができるんですね。ちなみに、そのアイデア段階の資料って見せていただくことはできますか?
 
大貫さん「いいですよ」
 
そして、見せていただいた資料がこちら。
本邦初公開!「レッサー☆はぐ太郎」の手書き資料。
 途中まではガッツリ理系の資料なのに、突然レッサーパンダが出てきて意表をつかれる。

ロボット1体作るのに約40万円!

ここからはロボコンのいちファンとしてあれこれ聞いてみた。
 
1つ目の疑問
——出場したロボットは大会後すぐ壊しちゃうんですか?
 
顧問の先生(※以下、「先生」)
「ここ最近のは全部残してますよ」
 
——えっ!?ここ最近というのはいつぐらいからですか?
 
先生
「90年代後半ぐらいのものから残してますね」
 
——90年代後半ということは、毎年出場してるとして…最低でも30体ということですか!?
 
先生
「そうなりますね」
 
——次年度のロボットを作るために部品を取ることもないんですか?
 
先生
「はい、毎回新しく部品を買ってますね。あとはモーターを提供してくださる企業の方もいるのでそういった支援もあって、バラさずに保管していっています。」
 
2つ目の疑問
——1台ロボットを作るのにいくらぐらいかかるんですか?
 
先生
「だいたい1年間で約40万円と少しぐらいですかね。」
 
——40万円!?
 
先生
「はい、高専ロボコンのレギュレーションでは30万円以下のロボットを作ることにはなっているんですけど、試行錯誤の段階でお金がかかるので、出来上がったロボット自体は30万円以下ですけど、概算ですが1台あたり、40万円ぐらいはかかってますね。」
 
(※小山高専のロボコンに関わる予算は競技備品や2チーム分のロボットの製作費を合わせて約100万円程度)
 
——学生さんが頑張ってバイトして、そのお金で作るっていうわけじゃないんですか?
 
箱守さん
「はい、そういうわけではないです。でも回路系や接着剤やテープ類は足りなくなったら自分達で出して最後にみんなで痛みわけって感じですね。」
 
とはいえ、潤沢に資金があるわけではない。
経費を節約するため、たくさん穴が空いた廃材を利用している。
 

ミニ四駆世代の筆者は「穴を開けて軽量化?」と一瞬思った。
3つ目の疑問
——装飾を一切せず、機能性重視の無骨なロボットで出場するのってありなんですか?
 
先生
「ルール的には何かしらの装飾をしないといけないというのはあります。他校さんでいうとオリジナルのロゴをステッカーで貼って出場しているところもありますね。」
 
大貫さん
「小山高専は幼稚園児や小学生に実演して見せる活動も行なっているので、そんな子どもたちが見ても楽しいロボットにしているんです。」

約30年分のロボットたち

前述した過去のロボットが眠っている倉庫を見させていただいた。

扉を開けると、戦いを終えたロボットたちが整然と並べられていた。
比較的最近のロボットが置かれている倉庫
20年以上前(?)に作られたロボットが眠る倉庫
だが、ただ置かれているというわけではない。
今大会のロボットを作る際、先輩が作った「持ち上げる」ことに特化したロボット3体を参考にしたという。
現役生だけでなく、先輩の力も借りた“総力戦”という感じがして胸アツだ。
こちらが今回の参考にされたロボット
そして驚くことに、ここにあるほとんどのロボットが実際に動くらしい。
しかも説明書があるわけではなく、動かし方は代々口伝で伝わっている。
2008年に生まれた恐竜型ロボットと、2008年生まれの德倉さん。
小山高専のロボットといえば、この「潤んだ目」が特徴だそう。

ここで伝説のロボット「アクセル姉さん」登場

倒れている状態から自分の力だけで1本足で立ち上がり、4回転半の「クアッドアクセル」を決めるという、アクセル姉さん。(※2021年のロボコンに出場)
練習段階では1度も成功していなかったが、本番(しかも大トリ!)の大舞台でだけ成功し、審査員から唯一の100点満点を獲得したというレジェンドを持つ。

来年の大会はロボット同士が「接触あり」の戦いをするかも?

——では、1年生に今後の展望を聞かせもらっていいですか?
 
廣瀨さん
「自分は30回大会の『大江戸ロボット忍法帖』を見て高専ロボコンにハマりました。普通の大会は2つのチームが別のエリアでミッションをするんですけど、その『大江戸〜〜』っていうのは直接対決型でロボット同士が接触できるんです。」
 
——それは、面白そうですね!
 
廣瀨さん
「で、調べてみたら20回大会も接触ありのルールらしくて。(※「風林火山ロボット騎馬戦」)10回ごとに行われているっていうことだから、自分は3年生というノリにノッている状態で40回大会の直接対決型に参加できるので、そこでロボコン大賞を取れるように頑張りたいなと思ってます。」
 
もし、本当に40回大会が直接対決型の大会だったらめちゃめちゃ楽しみだ。
廣瀨さんがリーダーとなって戦うのを見たら確実に泣いてしまうだろう。
 
今日は貴重な話を聞かせていただいて、ありがとうございました。
今後も応援させていただきます!
最後はみんなでハイ!ポーズ!
ライター:ヒロエトオル
放送作家(東京在住) 担当番組:『相席食堂』 / Netflix Japan(YouTube)/ COCHO COCHO (YouTube)/趣味:短歌

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