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ものづくり
2025年01月17日
「接着剤で貼る」からこそプラモデルを自分のイメージする形にできる。 漫画家・藤島康介とプラモデル

今回セメダインスタイルでは、藤島氏にプラモの楽しさやご自身の模型趣味に対するルーツ、漫画や絵を描く上で模型趣味が果たしている役割などを聞いてみました。その中にあった藤島氏の「接着愛」にも注目してください。

藤島康介
1964年7月7日生まれ。千葉県出身。漫画家・イラストレーター。代表作に『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神様っ』などがあり、現在は「月刊アフタヌーン」誌上においてバイクレース漫画『トップウGP』を連載中。また『サクラ大戦』『テイルズオブシリーズ』といった大ヒットゲームシリーズのキャラクターデザインも手掛けている。
接着剤でベタベタのプラモが、兄の一言で輝いて見えた
ーーまずは「接着剤」を初めて使った時の思い出を教えてください。
藤島:4歳から5歳くらいの時だったと思うんです。タミヤの「ホンダ N360」という車のプラモに入っていたチューブタイプの接着剤です。かつてプラモの箱の中には「袋タイプ」や「チューブタイプ」の接着剤が入っていて、それをセメダインが作っていたんですよね。その接着剤を適当な紙の上とかに移して爪楊枝を使いながらパーツに塗ったのが、接着剤の初体験です。でもやっぱりきれいに貼ることができなくて、ベタベタの車ができちゃったんです。完成後に少し残念だな〜なんて思っていたのですが、学校から帰ってきた兄が「すごい! 完成してるじゃん。かっこいいね〜〜」と、僕が貼った「ホンダ N360」を褒めてくれたんです。その言葉だけで、接着剤でベタベタの「ホンダ N360」が僕の中で一気に素敵なものへと変貌しました。接着剤を使って何とか形にしたからこそ、兄が一緒になって喜んでくれた・褒めてくれたことがより一層嬉しく感じたんだと思います。この経験があったからこそ、僕は今でもプラモが大好きなんだと思います。
プラモ人生において切っても切れない。それが「セメダインの接着剤」

藤島:セメダインの「C」のロゴですね。プラモを作る際に初めて触った接着剤の多くに、このロゴが輝いていました。セメダインのロゴが入った接着剤を使いながら兄と一緒にプラモを楽しんできた時間は、僕の人生においても特別。だから僕の人生においてセメダインの接着剤は切っても切れないアイテムです。
今でもセメダインの2液混合タイプであるエポキシ樹脂系接着剤は特にお気に入りで、よく使っています。瞬間接着剤のようにすぐに固まるタイプではないのですが、接着位置を適度に調整できる余裕があり、しかも硬化すると強固に固まるという点が気に入っています。
プラモが教えてくれた「物をよく観察する」ということ
ーー漫画やキャラクターデザインをする際に、プラモ製作が活かされたことってありますでしょうか?
藤島:「ものをよく見る」ということです。プラモを作る時、箱絵や実車・実機の写真をじっくりと観察します。そこで見たものをどうやって模型に投影していくかという工程を繰り返して、自分の中のリアルを模型化していきます。これは絵も同じで、描くモチーフの各部のディテールやサイズ感、動きなどをじっくりと観察します。その上で漫画だったらシーンに合うように描いていきます。「ものをよく見る」ことを、プラモ製作は教えてくれました。
ここにある模型も様々な資料を見ながら楽しんでいます。完全再現とかではないですけど、自分の中で「ここのパーツはもっと薄い方がいいな〜」とか「フィギュアの皺はもっと膨らむかも?」など目で見た情報から、自分なりに改造しています。このように切ったり貼ったりして自分好みの形にしていく工程には絶対に「接着剤」が必要なんです。





「タミヤ 1/35 ドイツ重駆逐戦車 ヤークトタイガー」。ドイツ軍の戦車長は、実際の写真や服の作りを調べながら、キットのフィギュアを改造。腕を上げた時にできる、肩あたりの服の膨らみ方には特にこだわったとのこと
1パーツ貼ってみるだけで開ける楽しい模型の世界
ーー金属パーツの接着、3Dプリントパーツの接着もとても綺麗で、とってもかっこいいです!
藤島:本当に接着剤が進化しているので、金属パーツや特殊素材のパーツも楽しく接着できます。これは、そういったパーツだけでなく通常のプラスチックパーツにも言えることです。少年時代のように接着剤でベタベタになるなんてことはなく、多くの人がきれいにプラモを組み立てられる時代が今なのです。組み立てるだけなら多くの人が幸せな気持ちになれますよ。だから臆せずタミヤのプラモと接着剤を買ってきて、1パーツ貼ってみてください。それだけで本当にプラモの世界が開けます。
僕は工作が好きだから、ここにある模型もあちこち自分なりに弄っています。金属のエッチングパーツや3Dプリンターで出力されたパーツなども使用しています。実際の写真とか見て製作イメージを妄想するのが大好きなんです。そうなると、プラモには入っていない別売の改造パーツなども使いたくなってしまんですね。絵を自分の理想まで描きこむように、プラモも「ここをカッコ良くしたい!」と思ったら突き詰めていきます。

こちらは陸上自衛隊車両のプラモ「タミヤ 1/35 陸上自衛隊 軽装甲機動車 イラク派遣仕様」。ライトガードなど細部を金属パーツに置き換えてディテールアップし、より実写の雰囲気に近づけている。金属パーツの取り付けには接着剤が必須なのだ


飛行機模型雑誌「スケールアヴィエーション」にも掲載された「ファルツ D.IIIa(ウイングナットウイングス 1/32)」。第一次世界大戦に登場した複葉機。翼を支える貼り線の接着には瞬間接着剤が大活躍する。美しいマーキングはキットのデカールを使用

接着剤を使うからこその「組みやすさ」がある!
ーー今は「接着剤を使わないで作れるプラモデル」というのが各プラモのセールスポイントにもなっていますよね。
藤島:そうですよね。接着剤を使うのって決して悪いことじゃなくて、むしろプラモが組みやすくなったりして良いことも多いんです。僕は接着剤大好き人間なので、プラモを作ると言ったら「パーツは貼るもの」という感覚があります。プラスチックの嵌合同士でハメ合わせていくプラモも楽しいのですが、接着剤を使ったプラモほどの自由さはありません。小さなパーツ、金属製のパーツ、薄いパーツ……これらは接着剤があるからこそ貼り合わせて形になり、自分にかっこいい景色を見せてくれます。
過去のものとは比べ物にならないくらい進化している「接着剤」
藤島:「接着」というテーマが模型の世界でも大きく取り上げられるのは、やっぱりあの「プラモと同梱された接着剤」の思い出がいまだに多くの人の心に残っているからだと思います。僕らの世代はプラモと同梱された接着剤の思い出話しをすると止まらないくらい、様々な経験をさせていただきました。だからこそ各メーカーのプラモ開発において「接着する」のか「接着しない」のかということに対して、いまだにメーカーの中でも様々な意見が生まれていると思うのです。
特に今「プラモデル用接着剤」は過去のものとは比べものにならないくらい進化しています。接着剤の蓋には、塗りやすいように刷毛や細い面相筆がセットされています。流し込み接着剤なんかは、パーツとパーツの間にきれいに流れ込んでくれるので、接着跡もほとんど目立ちません。スイスイとプラモのパーツを接着していけます。そしてセメダインからも発売されている「ハイグレード模型用」のように、クリアーパーツを曇らず接着できる&メッキパーツもそのまま接着できるという夢のような「多用途接着剤」も発売されています。接着剤がとても進化しているからこそ、僕たちが過去の思い出を振り払って接着剤に寄り添っていけば、大元のプラモももっと自由な発想のアイテムが発売されてくると思います。
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自由に貼れるからこそ、自分のイメージが作れる

接着剤の高性能化のおかげで、プラモのパーツをきれいに接着するというハードルはとても低くなっています。これから初めて接着剤を使って模型を作る人にとっては「今の接着剤ってここまできれいに貼れるのか!」と思える、魔法のような体験が待っていると思います。ぜひ接着剤を使って、思いっきりプラモを楽しんで欲しいですね。本当にプラモは楽しい趣味ですから。
ーー本日はありがとうございました。
ーー本日はありがとうございました。
ライター:丹文聡(たんふみとし)
1983年生まれ。12年務めた株式会社ホビージャパンで、月刊ホビージャパンの編集と広告営業を担当。その後フィギュアメーカー・マックスファクトリーで3年務めたのち、フリーランスの編集として独立。模型ウェブサイト「nippper」の副編集長も務める。
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