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ものづくり
2025年05月09日
回転寿司にある湯が出る蛇口で手を洗いたい

回転寿司の店には、押すと湯が出る蛇口がある。
ネット上では、「これは何に使うものなの?」「寿司を食べる前に手を洗うところだよ」というやりとりがよく見られる。もちろん熱湯で火傷してしまうので、単なるジョークである。でも本当に手が洗える蛇口があったとしたら?
ネット上のジョークを現実のものにすべく、手洗いができる蛇口を作ってみることにした。
回転寿司にある湯が出る蛇口をご家庭に

話題にしているのはこれのことだ。改めて見てみると説明は何もないし、あのジョークが生まれるのも分かる

湯飲みを押し付けると湯が出る。誤動作防止のためか、ボタン部分が異様に固い店が多い
この蛇口、どこの店にでもあって認知度も高いけど、逆に回転寿司でしか見たことがない不思議な設備だ。蛇口部分だけでも購入できないかと思い調べてみたけれど、正式名称も分からないし、AIに聞いても嘘っぽい回答しか得られなかった。一般人には不要なもの(もっと言うと、回転寿司店にしか需要がなさそう)なので、ネット上に情報がほとんどないのだろう。
現物が手に入らないとなると、もう自作するしかない。自分で形状を設計し、3Dプリンタを使って「あの蛇口」を自宅に再現してみた。

これが自宅に降臨した回転寿司の蛇口だ!

さっそく湯を入れてみよう……!?

出てきたのは泡!
そう、この装置はハンドソープが出てくる「ハンドソープ ディスペンサー」なのであった。
「これは何に使うものなの?」
「寿司を食べる前に手を洗うところだよ」

「ホントだ、手が洗えるようになってる! 教えてくれてありがとう!」
そう、これがやりたかったのだ。本当に手が洗える回転寿司の蛇口……もとい「回転寿司の蛇口風ディスペンサー」の誕生である。
手が洗える回転寿司の蛇口を自作する
いまでは一般的になった、手を差し出すと自動でハンドソープが出てくるディスペンサー。あのパーツを流用して、回転寿司の蛇口風ディスペンサーを制作した。

市販のディスペンサーを分解したところ

こちらのポンプを流用させてもらう
ディスペンサーの仕組みは単純で、電動ポンプを動かしてハンドソープを吸い上げているだけである。なので、蛇口のボタン部分(湯飲みを押し当てるところ)にスイッチを仕込み、押すとポンプが動くように改造してやれば所望の蛇口風ディスペンサーが完成するという寸法だ。

外装部分は3Dプリンタで制作した
一番時間がかかるのはこの設計で、特に今回は流用するパーツにぴったり合うよう作る必要があったので、何度も印刷して現物でサイズ合わせをしながら作り込んでいった。

湯飲みを押しつけるボタン部分にはバネを入れ、奥まで押し込むとスイッチがONになるという構造に


ポンプを収納する本体部分。なんとなく「星のカービィ」の一面のボス(ウィスピーウッズ)を思い出すビジュアル
回転寿司の蛇口は木製のカウンターから出ているイメージだったので、木の雰囲気を出した本体に仕上げてみた。
今回3Dプリンタ用の木質フィラメントを初めて使ってみたのだが、木材の粉末が配合されているらしく、印刷するときに木の焦げる匂いがしてとても良かった。ただ、「焦げ臭い、火事か!?」と一瞬ビクッとしたので、心臓に悪いフィラメントかもしれない。


ハンドソープを貯めておく部分も、市販品ディスペンサーのパーツをそのまま流用する
3Dプリンタで作ったパーツには細かな隙間があるので、水を貯めると漏れ出してしまう。なので液体を扱う場合には、このように市販品を組み合わせて作るのが楽である。

そこに、先ほど作ったボタン部分をはめ込む

ボタンを押すと電源がONになるだけなので、配線は単純だ
基板上のコネクタ部分に電源(単三電池4本=6V)とポンプをつなぎ、その接続をスイッチでON/OFFできるようにしただけである。
基板上に付けているスライドスイッチは緊急停止用。不具合でポンプが止まらなくなると、そこらじゅう泡だらけになってしまうので、それを防ぐためのものである。ちょっと見てみたい気もしたが、泡だらけになるトラブルはまだ一度も起きていない。

蛇口部分を取付け、その内側にホースを通す
ポンプのホースを上手く通せるように、逆算で蛇口部分の形状を決めていった。なので特定のお店の蛇口をモデルにしているわけではなく、いろんな制約を満たしたそれっぽいオリジナル蛇口になっている。

最後に上部に蓋をすれば完成!

これが「回転寿司の蛇口風ディスペンサー」の全貌である

ボタン部分は、ぷにぷにとしたほどよい弾力がある

ボタンを奥まで押し込むと、白い部分(ホースの先端)から泡が出てくることになる
実際にこのディスペンサーを使ってみよう。
回転寿司の蛇口で手を洗う

泡ハンドソープを用意し、ディスペンサーにセット!
普通の回転寿司であれば、
「これは何に使うものなの?」
「湯飲みを押し当てるとお湯が出てくるので、それで粉末のお茶を溶かして飲むんだよ」
というのが正しい。しかし現実は……

ここの絵面は完全に回転寿司だが

ジャーっと出てきたのは白い泡……。もちろん飲んではいけない
「おい、これ手を洗うところじゃん! 嘘つくなよ!」
そう、正しくは手を洗うところだったのである。手を洗っていこう。

泡がモリモリ

寿司を食べる前には、ちゃんと手を洗おう!

指の先で押すスタイルがしっくりくる

勢いよく飛び出してくる泡
ここは、ジョークが現実になった世界線。しょうもないウソだとはもう言わせない。お前は立派な「手を洗うやつ」だよ!
ただ、最後に冷静になって見てみると、

鳥のくちばしのように飛び出した蛇口部分。邪魔である

ボタンを強く押さないといけないので、どうしても本体側が動かないように手で押さえておく必要がある
つまり必ず両手を使う必要があり、どう考えても手をかざすと自動で泡が出るタイプのディスペンサーの方が使いやすい。
洗面所の壁にこの蛇口が埋め込まれているなら、多少は使いやすいかもしれない。公共のトイレならあっても違和感はなさそうだ。でもわざわざ、そんな変なディスペンサーを使うメリットはないよなあ。
……深く考えてはいけないことが分かった。回転寿司にある湯が出る蛇口で手を洗う。それが実現できただけで十分なのだ。
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