ものづくり 2025年07月07日

どんな風に完成させようかと考えて、想像力を膨らませることができるのがプラモデルの最大の魅力だと思っています。(グラビアアイドル 東雲うみ)

 グラビアアイドルとして活動する中で、趣味的にガンプラの制作動画をYouTubeにアップしたことがきっかけで注目を集めるようになった東雲うみさん。しっかりとした制作環境を整え、プラモデルの塗装や改造、ジオラマなどの情景モデルなどの制作を行うスタイルはまさに本格派。東雲さんが制作するプラモデルは、クオリティの高さが評価され模型専門雑誌の作例として紹介されたり、モデラー同士の模型コンペに参加するなど、活動の幅を広げている。
 現在はグラビアアイドルに加えて俳優業にも進出し、マルチな才能を発揮。そんな東雲さんにプラモデルづくりの魅力を伺った。

手探りで始めたプラモデル制作

——東雲さんはプラモデルとはどのように出会ったのでしょうか?
 
東雲:大学1年生くらいの時に、当時欲しかったアニメキャラのフィギュアを秋葉原に探しに行ったんです。その時に、たまたま店頭にZガンダムのプラモデルが飾ってあって。その時は『機動戦士ガンダム』に関係する作品もシリーズも全然知らないし、観たことも無かったんですが、海外の『パシフィック・リム』や『トランスフォーマー』などの海外の映画を観ていたというのもあって、もともとロボットは好きだったんです。そんな、知識がまったくない状態で見つけたZガンダムがめちゃくちゃ格好いいと思いまして。そのお店に飾ってあったZガンダムのプラモデルも売っていたので、ひと目惚れきっかけで買って帰りました。
 
——その時、プラモデルの知識はまったく無かったわけですよね?
 
東雲:無かったですね。ニッパーが無いと組み立てられないというのを知ってニッパーを後から買ったくらいで。当時のプラモデルに対するイメージは、組んで楽しむ3Dのパズルみたいなものだと思っていたので、説明書通りに組み立てたんですが、それだけでもすごく楽しくて。完成したらものすごい達成感があって、すっかり気に入って飾っていました。その後、何の背景も知らずにZガンダムを組み立てたので、「この子はどんなメカなんだろう?」、「どんな風にアニメで描かれるんだろう?」と思って、そこから『ガンダム』のアニメも見始めました。
 
——当初は組み立てるだけでも楽しかったはずですが、それが本格的な模型趣味となっていったのは何かきっかけがあったのでしょうか?
 
東雲:最初は塗装もしないで何体か組み立てて、コレクション好きだったのもあって、集めていきたいなと思っていた程度でした。買うのも箱絵が格好いいとか、デザインが気に入ったという感じでしたね。そうやって作っていくうちに、SNSで他の人は自分と同じキットをどのように作っているのか見てみようと思って検索をしてみたんです。そうしたら、同じキットのはずなのに全然様子が違うぞと。色も違うし、ツノがシャープになっていたりして「私のよりも格好良くない?」って思ったんです。最初はキットのバージョン違いかと思っていたんですが、よく調べると加工したり塗装をして手を加えていたんですね。私はもともと油絵を描いたりしていたし、細かい作業も好きだったので「じゃあ自分でもプラモデルの塗装や改造をやってみよう」と思って、本屋さんでガンプラの入門書を片っ端から買って、それを読んで見よう見まねで始めたところ、どんどんハマっていった感じですね。

接着剤で異素材同士でもくっつけることができるのが大きな発見

——東雲さんがプラモデルを始めた頃は、すでに接着剤を使用しないで組み立てる「スナップフィット」が一般的だったと思いますが、初めて模型制作に接着剤を使ったのはどのようなきっかけからでしょうか?
 
東雲:3年くらい前にタカラトミーさんの「ダイアクロン」という変形合体するロボット玩具の大きなジオラマを作った時ですね。アスファルトを表現した土台の上にロボットや瓦礫を接着しなければならなくて。それまで接着剤を使ったことが無かったので、ネットで検索して何を使えばいいかをとにかく調べました。さらに何種類か買ってきて実際に試してみて、その中から一番合うものを使いました。その時はまだ不器用だったので、模索しながら作業したんですが、ジオラマは接着剤がないと出来上がらなかったので、いいものがあって本当に助かりました。
 
——そこからわりと接着剤は積極的に使っていったわけですね。
 
東雲:そうですね。異素材同士をくっつけることができるというのは大きな発見でしたね。木と発泡スチロールをくっつけることができて、「なんでもくっつけられるんだ」って驚きましたし、いろんな種類を試したことでその後の模型制作に役立ついくつもの発見がありました。

透明パーツも接着できるハイグレード模型用を愛用

 ——セメダインと聞いてまずイメージすることは何でしょうか?
東雲:やっぱり「お世話になっています」ですね。私はセメダインさんの商品だと「ハイグレード模型用」を重宝しています。戦闘機のキャノピー部分なんかのクリアパーツの接着を綺麗にできるので使った時に感動しました。あとは木工用のエポキシパテもよく使っています。半分硬化した状態の時が扱いやすくて、そのタイミングで削って形を調整したりと、すごく使い勝手がいいですね。私はYouTubeだと「折れちゃった」とか「ここ失敗したから接着しなくちゃ」という修正している部分は映像のテンポを重視して映していないんですが、実際には結構セメダインさんの接着剤は使わせていただいています。

紹介した製品

  • P20ml

    ハイグレード模型用

    クリアパーツを曇らず接着!はみ出しても拭き取れるプラモデル用接着剤!

発信することで広がったプラモ仲間との交流

 ——プラモデル趣味をYouTubeに発信しようと思ったのはなぜですか?
 
東雲:グラビアアイドルとしてデビューしてからも公式的にはプラモデルが好きだと言ってなかったんです。理由は、グラドルの子がプラモデルが好きというと媚びているように思われそうで、それが嫌だったからです。本当に趣味として好きだったのでキャラとして売りたくなくて。いろんな現場で、プラモデルが好きだと話をするうちに、模型仲間も増えていって、「それ、公開したほうがいいんじゃない?」、「面白いから1回何かで発信してみたら?」と言われて、それで始めたのがYouTubeだったんです。
 
——プラモデルが好きだと公言して良かったことはありますか?
 
東雲:最初はひとりで黙々とやっていたわけですが、人にプラモデルの話をしてみたら、意外と周りに模型趣味の人がたくさんいて、距離が近づいて友達になれるんですよね。しかも世代を超えて友達ができるのがすごく良くて。小学生くらいの子から60代くらいの方まで、プラモデルをやっている方は幅広い。そんな形で全世代が夢中になれる趣味ってなかなかいと思いますし、とにかく人との交流が増えて孤独な趣味では無いと思えたのが良かったです。
 
——プラモデルの魅力はどこにあると思いますか?
 
東雲:とにかく無心になれるところがいいなと思います。今は、何かあるとすぐにスマホを見ちゃいますよね。それでつい無駄な時間を取られてしまったりするんですが、プラモデルと向き合っている時間は本当にスマホをいじらないし、頭を空っぽにして好きな音楽を流しながら、ひとつのことに集中する時間が作れる。それが自分のメンタルにもすごく良くて。スマホを見ていただけで無駄に過ごした後は何も残っていなくて「私、今日何していたっけ?」となりがちなんですが、プラモデルは成果物が目の前にある。「これだけ進められた」というのが目に見えてわかるのがいいんですよね。あと、私は自分が作ったものを発信して評価されるのが好きなので、自分で作ったものをSNSに上げて、みんなからコメントをもらえたりして交流できるのも魅力だと思っています。そうした部分に加えて、妄想を形に出来るという部分もすごくいいなと。オリジナルの設定を考えて作り込んだり、自分が想像した世界みたいなものやアニメの印象的なシーンを再現してみるなど、プラモデルは無限大にいろんな作り方ができるんですよね。
 
——プラモデルは作る前の段階からいろいろと考えるのも楽しいということですね。
 
東雲:そうですね。私はプラモデルを買って家に持ち帰って、「どういう風に作ろうかな?」とまずは箱を眺めて考えることから始めます。私の場合は、作る前に仕上げの仕方のテーマを決めるんです。「今回はアニメのリスペクトで完全再現しよう」とか「朝日が昇っていく空の様子みたいなものを模型の塗装で表現しよう」というように想像からスタートさせます。初期の頃はなんとなく完成図が頭にある状態だときちんとイメージ通りに完成させることができるか不安だったので、iPadに改造プランの絵を描いたり、カラーパターンを描いて、確認しながらやっていました。実際に描くことでいろんな発見があって、「ここにスジボリが入ってもいいかも」とか「この配色はどうかな?」ということも試すことができる。そういう部分での想像力が作る前から刺激されるのがプラモデルの最大の魅力だと思います。

趣味の活動から作例制作などを行うモデラーへ

——そうした活動の結果、模型雑誌や展示会用の作例制作の依頼を受けるなど、モデラーとしての幅が大きく広がっていますね。趣味と仕事でプラモデルとの向き合い方は違いますか?
 
東雲:全然違いますね。作例の依頼が来るときは雑誌掲載や展示の1ヶ月前だったりするんですが、実際に手を付けたら2週間しか時間が無かったりするんですよね。今までは趣味なので自分のタイミングで2ヶ月とかかけても良かったし、納得がいかなかったらやり直しもしたりできる。やりたいタイミングで、無限に時間をかけられるのが趣味のいいところなんですが、作例の納品となるとそうはいかない。バランスが難しいですね。完成品のクオリティは自分の中の100点を目指し過ぎない、80点でいいから締め切りに間に合わせると考えるようにしています。雑誌は多くの人に見られるし、同じキットを買った人も見たりするので、結構責任を感じながら作っています。その注目されているプラモデルをより格好良く、いいなと思ってもらえるようにしないといけない。どうしたら魅力的に見えるだろうとか考える部分が大変です。でも、趣味とは違うところが刺激になって、自分の実力が上がる感じがします。「急いで作らなくちゃ」となると、追い込まれて頑張れたり、思っていた以上の能力が発揮できたりすることは感じますね。「自分ってこんなにできるんだ」みたいな。そういう意味ではいい機会をいただけていると思っています。
 
——最近は、グラビアアイドルからバラエティ番組や大河ドラマに出演するなど活躍の幅が広がっていますね。
 
東雲:お仕事が増えるのは嬉しいんですが、趣味との両立が本当に難しくて。でも、今の事務所は自分がやりたい趣味とかに時間を割くことに関しては結構寛容なので、「オタ活休暇」みたいなものがもらえるんです。スケジュールの中に「この期間はプラモを作りたいです」と申請しておくとなるべく避けてくれたりするので。私自身は趣味がないと生きていけない、趣味に助けられて生きてきたので、どんなに忙しくてもプラモデルを作れる時間は調整して設けて、ちゃんと皆さんに動画をお見せできるようにしたいと思っています。

まだまだ広がる模型趣味としての夢

 ——では最後に、今後プラモデルに関することでやってみたいことを教えてください。
東雲:昨年、私が監修した「東雲ブルー」という塗料をモデルカステンさんというメーカーから出させていただいたんですが、今年は「東雲レッド」を出す予定です。こちらもたくさんの方に手に取ってもらいたいですね。自分の塗料を出すメリットは、自分が好きな色味で作った赤や青を使った作例がたくさん出てきて、SNSで見ることができることですね。みなさんがそれぞれに自由に塗料を使ってもらうと、そこからいろんな可能性を感じることができて嬉しいです。今後は、自分で監修する塗料も1年に1本みたいな感じでやっていきたいと思ってて、来年はイエローかグリーンを発売できないかなと考えています。あとは、以前MAX FACTORYというメーカーのPLAMAXというブランドで私を3Dスキャンしたプラモデルを発売していただいたんです。これはかなりリアルに寄ったプラモデルだったので、今度はもっと美少女プラモデルに寄ったデフォルメがされた二次元チックな東雲うみのプラモデルもいつか出せたらいいなと思っています。プラモデルに関しては、まだ何も決まっていないので完全に私の希望というか、妄想なんですが(笑)。
 
——東雲さんが監修した「東雲カラー」を使って塗装したプラモデルを一同に集めるコンペなんかも面白そうですね。
 
東雲:私が審査員になるのはおこがましいですが、みんなで完成した模型を持ち寄っての展示会はやりたいですね。審査とか評価したり、点数をつけたりするのは難しいですが、どこか広い展示スペースを借りて、みんながそれぞれ作ったものを飾ってもらって、「これ、ここがいいね」とコメントするようなものは面白そうですね。3本目の東雲カラーが出せた時には、そういう部活みたいな活動もしてみたいです。
 
——今後の活躍にも期待しております。本日はありがとうございました。
 
石井誠
1971年生まれ。茨城県出身。アニメ、ホビー、映画などのジャンルを中心に執筆するフリーランスライター。月刊ホビージャパン、月刊ニュータイプ、MOVIE WALKER PRESSなどで作品解説、コラム、インタビュー記事などを執筆。主な著書に『安彦良和 マイ・バック・ページズ』(太田出版・安彦良和と共著)、『マスターグレード ガンプラのイズム』(太田出版)などがある。

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