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ものづくり
2026年02月13日
小学生ロボコン全国大会観戦記 普通にすごいロボコンと小学生のワチャワチャ感を同時に堪能できる、良すぎイベントでした
小学生ロボコンがすごいらしい。小学生なのに超ハイレベルらしい。前々からそんな話は聞いていました。
そう聞くと、逆に「天才小学生たちがよくわからないロボット工学の技術を駆使して戦う難しい大会」、みたいなイメージになりません?あるいは、「そうはいっても小学生、たかが知れてるでしょ」と思う人もいるかもしれません。
ところが実際に全国大会を見てみたら……どっちでもないんですよ。
そこにあったのは、「誰でも理解可能な『工作』に工夫をガチ盛りして」「あどけなさを残す小学生たちが競う」という、めちゃめちゃに親しみやすく、そしてそれだけに誰でもすごさを実感できる大会だったんです。
この記事はそんな小学生ロボコン、2025年の全国大会のレポートです!
最初の魅力は小学生のワチャワチャ感
大会は、12月7日に二子玉川ライズ スタジオ&ホールにて行われました。
まずは競技開始前の様子をお見せして、会場の雰囲気をつかんでいただきましょう。
選手席。直前まで機体の調整&作戦会議が行われていました
選手入場。出場チームは6チーム。1チームずつ順に競技を行い、得点を競います。それを2回くりかえす2ラウンド制。
この「おー!」のタイミングが、揃ったり揃わなかったりするんですよね(上の写真は一回やり直してやっと揃ったところ)。しかし揃ってなくても声はでかくて元気いっぱい!というのも小学生っぽくて良い。
このように、競技が始まるまでは小学生の小学生らしさを思う存分満喫することができます。
小学生ロボコンでは、こういった「小学生のワチャワチャ感」と、この先で紹介する「ロボットの工夫のすごさ」が両方見られます。対極にありそうな2つの魅力が波状攻撃のように次々やってくる、そこが小学生ロボコン最大の特徴なのです。
橋をかけるロボットたち
ではロボットについても、見ていきましょう。
今年の競技課題は「グレート・ビッグ・ブリッジ」。
詳しいことは追って説明していきますが、ざっくりいうと「紙コップを並べて、割り箸で橋をかける」競技です。時間制限もあるので、できるだけ素早く、たくさんの紙コップを橋でつないでいきたいわけです。そのためにどうするか。
この4台は、あとに紹介したものほど一気に長い橋を作れます。つまりロボットとして完成度が高いということ!……と思ってしまいがちですが、そんな単純な話ではないんですね。
たくさんのことを一気にやろうと思うほど、そのうちのいくつかがうまくいかない確率が高まります。つまり作戦に不確定性が生まれるということ。
また、競技後半になってくるとフィールドにたくさんの橋がかけられた状態で作業を進めるため、小さくて小回りの利くロボットの方が作業を進めやすくなってきます。なので一長一短あるわけです。
戦略の違いがすでに面白いですよね。
そのうえで競技においては、この個性をいかにチームで活かしあい、補いあっていくかも見どころとなってくるわけです。
機体後ろに注目。中には「ボディ内にコップを格納する」なんて独自のスタイルもいました(「北斗号」工藤洵介さん)
箸ひとつ置くにも工夫のかたまり
そしてもうひとつ、今回の競技における必須動作「箸を置く」がどんな形で実装されているかも見てみましょう。
ちょっと考えてみてほしいのですが、物を狙った場所に置くロボットをつくるとき、どういう仕組みにしたらいいと思います?
きっとロボットハンドやクレーンのような、対象物をつかんで置く機構を想像する人が多いんじゃないでしょうか。
でも今回の大会ではそれは登場しません。ではどうしているかというと……
つかむ動作にしていないのは、決して作るのが難しいからではないんです。いや実際難しいんですけど、彼らはそれを作る技術を持っていて、過去大会にはそういうロボットも登場していました。
ではなぜなのか。実は、小学生ロボコンでは使える部品がかなり制限されています。動きを作るのに使える部品は、軸が回転運動するモーターだけ。数も4つまで。
そのうち2つは左右の車輪に使いますし、もうひとつはコップをつかむのに使うし……と思うと、箸を置くのに使えるモーターはあと1個しかないわけです。それじゃクレーンを作るのは難しい。
だから、ベルトコンベアを回したり、アームを回したりと1個のモーターだけでできる仕組みをそれぞれ工夫して箸を置いています。
これ、ちょっと不思議じゃないですか?モーターって回ることしかできないのに、なんでこんな「押し出す」動き(往復運動)ができるんでしょう?
実は、こうなっています。
機構としてはDVDドライブのトレイ等でも使われているものですが、それをダンボールで作っちゃったのがすごい!
小学生ロボコンはモーター以外の部品も、紙や竹ひご、発泡スチロールなど「工作っぽい」部品に限定されています。ギアや金属部品は使えません。でもロボコニストたちはそういった小学生らしい部品を使って、ロボットに驚くほどいろんな機能を搭載しています。これが本当にすごくて、個人的には小学生ロボコンのいちばん驚異的なところってここだと思っています。
こっちも仕組みとしては近いものだけど、箸を押し出した瞬間に機体の後ろからバックファイヤが出るようになっているのが面白い(「G-LINE」山本桜大)
ダブルで仕事ができるということは作業速度は上がりますが、そのぶん操作が難しくなるよな……と思ったら自由自在にスイスイ動いていました。制作技術だけではない、運転技術のほうにも相当な訓練を感じました。
こうして見ると、「箸を置く」という動作ひとつとってもそれぞれ個性豊かで、そのすべてが工夫の塊です。
しかもそれが、箸を置くところだけじゃないですからね。コップを運ぶ、機体の移動などなど、全ての機能にこういったアイデアや工夫がふんだんに盛り込まれていて、それを形にする実装力も圧倒的。
そろそろ皆さん忘れかけてると思いますが、これ全部小学生が作ってますからね!?
仕組みがわかるおもしろさ
さきほど、全部の機能がモーターの回転で作られているとご説明しましたよね。
次は、これをどうやって操作してるかも見ていただきましょうか。
ぐぐぐっとズームしてみましょう。
これ、各モーターの回転&逆回転のレバーです。
なにしろ複雑な電子回路など一切使っていないので、操作は素朴に「モーターを回す」だけなんですね。「箸を置くボタン」を押すと置ける、みたいなのじゃないんです。モーターを直に回す。すごいシンプル。
このロボットたち、一般的に「ロボット」と聞いて想像するものよりずっとシンプルなんです。プログラミングも使っていません。学校の理科で習う範囲の電気回路と小学生らしい材料で、ぱっと見はわりと「工作」って感じなんですよ。
それなのに驚くほど自由自在に動いて、多機能で、そして正確。動いてるものを見るとマジでロボットなんです。これを工夫とアイデアと作り込みだけで実装しているというのがほんとうにすごい。
また観戦のポイントとして、ロボットがシンプルなだけに、動いてるのを見たら素人でもなんとなく仕組みがわかるというのも面白い。これも高専や大学のロボコンにはない、小学生ロボコンならではの魅力だと思います。
競技「グレート・ビッグ・ブリッジ」とは
ロボットの細かい話でアツくなってしまいましたが、今さらながら今回のルールの説明をしていきたいと思います。
公式ルールより、競技フィールド
この円形のフィールドの中にできるだけ長い橋をかけるのが目的です。橋が長いほど高得点。
くわえて、「スター島」と書かれた3つの島がありますよね?そのスター島と、わきにある小さなシルバー島、および真ん中のゴールド島をつなぐと、それぞれボーナス得点があります。このボーナスはとても大きいので、ぜひ狙っていきたいところ。
競技の進め方はこうです。
まず最初に、説明の右下に描かれているプログラミングロボットをフィールドの端から出発させます。これは先ほど紹介した自作のロボット達とは別で、全チーム共通で支給される全自動のロボット。改造は不可で、制御プログラムだけを書き換えることができます。
このプログラミングロボットもそれだけで記事1本くらい書ける奥深さがあるのですが、当日は全チームきれいにゴールしちゃったのでここでは割愛します。小学生ロボコニストたちの実力、容赦なし。
そのあとロボットのセッティングタイムののち、いよいよ競技開始。
まずはメンバー3人それぞれのロボットが、順番に1分ずつ、ソロで橋を作っていきます。
制限時間いっぱいまで橋を架け、ブザーが鳴ったらチャレンジ終了、といった流れ。
評価はポイント制で、橋の長さ+島を繋いだボーナスによる最大500点の競技得点にくわえ、アイデア得点として最大500点が審査員によって加点されます。
では実際の競技の様子を見てみましょう。個人的に印象に残った2チームについて、ご紹介したいと思います。
唯一無二の作戦と協力プレイ「海線勝丼JAPAN」
まず紹介したいのが、チーム「海線勝丼JAPAN」の1ラウンド目のプレイ。
ここは戦略の独特さが目立ったチームです。
まずは前半のソロ作業パートから。
頭側とお尻側にダブルでアームがあるので、ときに両方でコップを2個抱えながら、スピーディーにコップを並べていきます。
カブトムシ型のロボット。T字型の角で、コップを4個抱え込める
モーターを使わず、形状の工夫だけでここまでできるのは本当にすごいです。
で、ここまででこのチームの独特の作戦が少し見えてきます。実は最初の2台、コップを並べただけで、ほとんど橋をかけてないんですよね。
3台目の「シーラカンスくん(秋田燈史朗さん)」のマシンが登場し、いよいよ橋を架け始めます。
ところが、ここでトラブル発生!割り箸が橋として認められるには、必ず両端がコップに接している必要があります。つまり箸が重なるとNG。
上の写真の状態だと手前側が隣の割り箸の上に乗ってしまっているので、得点にならないんですね。こんなときどうするかというと…
なんと、コップをホールドするためのコの字型のアームで箸をひっかけ、見事に微調整しました!
ここまで想定されているのは抜かりなさすぎる……。
そうこうしているうちに前半パートが終了。
ここで注目しておいてほしいのが、赤で矢印をつけたコップ。これ、効率的に橋を架けるなら赤丸のあたりにいた方がいいはずなんですよ。ただ、これはきっと「あえて」の作戦だと思います。その意味は後半の協力プレイで明らかになるでしょう。
そしていよいよ後半。
後半で最重要となるのが、真ん中のゴールド島にかける橋。ここは各スター島からの3本の橋の連結点となるため、うまく三叉路を作ることができれば橋の長さが一気に稼げます。さらにゴールド島とスター島がつながることで大量のボーナス得点もゲットできる。
というわけでさっそく橋をかけに、ペンギンとシーラカンス、2台のロボットがやってきました。
ここでペンギンに注目。
これまでペンギンがかけていた橋は上のスター島からの橋なので、普通に考えたら赤点部分にコップを置いて、そこにゴールド島から橋を架けるはずなんですよ。
でもここではカブトムシがかけている右からの橋のサポートに回っている。この協力プレイが、このチームの見事なところなんです。そして前半でさっき赤丸で囲った場所にコップを置いていなかったのも、カブトムシ側のエリアまで侵入していく際に、コップが邪魔にならないようにしていたのではないかと思います。
ゴールド島からの三叉路も完成し、大きな橋になりました!!!
得点は一番長い橋にのみ与えられるので、左上につながっていない橋があるのは少し惜しいところ。しかしそれでも大きな橋ですし。
というわけで、競技得点は260点の高得点を叩き出しました!
圧倒的安定感「THK進架」
続いてもう1チーム。「THK進架」の2ラウンド目のプレイを見てみましょう。
まずはソロパートから。
これ、普通のタイヤ使ってたらこんなことできないですよね。自動車も自転車も、真横に進める製品なんて見たことないじゃないですか。でもこのロボットはできる。仕組みはどうなってるかというと……
これ、オムニホイールといって、タイヤにさらに小さなタイヤがついていて、横方向に空転できるようになっているんです。これをH型に3つ配置することで、前後左右に方向転換なしで動けるようになっています。すご。
オムニホイール自体は彼の発明というわけではなく世の中にすでにあるモノではあるのですが、それをプラダンと発泡スチロール、そして輪ゴムで自作しちゃおうと思ったのがすごい。思ったのもすごいし、実際に形にしてしまったのもすごい。
これでスイスイと橋をかけていきました。
そして3台目。さっきも登場したこのロボットは、「にゃん丸2号」(小窪大智さん)。
なんなんだこのチームの多才ぶりは。
ワシが1本かけ
クワガタが順調に2本目
なんと、全てのコップを使い、全ての島を完全につなげた巨大な橋を完成させました。競技点数は、満点の500点!
しかもこのチーム、驚くべきことに、1ラウンド目にも満点をたたき出してるんですよ。つまり理論上の最高得点を獲得。恐ろしい安定感……。
三冠受賞者、誕生
そんなこんなで全競技が終わり、結果発表。
両ラウンドで満点をたたき出したTHK進架が、小学生ロボコン大賞のチーム部門を受賞しました。
さてさて、そんな授賞式ですが、みなさん、私が冒頭で書いたことを覚えてますか?
小学生ロボコンのオープニングの醍醐味は、「小学生のワチャワチャ感」でした。そして表彰~閉会のあいだも、第二次ワチャワチャタイムなんです。
・前の子の頭を後ろからぐしゃぐしゃにする子
・もらったメダルをかじる子
・前の子の首に風を送ってちょっかいを出す子
・あくびをする子
・メダルの紐をねじってクルクル回して遊ぶ子
などなど、競技が終わって緊張の解けた小学生たちによるワチャワチャが存分に繰り広げられていました。
小学生ロボコンとは、普通にすごいロボコンと小学生のワチャワチャを同時に堪能できる、本当に稀有なイベントなのです!
激エモエピソードも
最後に、本大会で個人的に最も印象に残った激エモエピソードを紹介して記事を締めくくりたいと思います。
2ラウンド目、競技後のインタビュータイムに、THK進架チームの本多さんが使っていたコントローラーに話が及びました。
なんだか素材が派手なんですね。
途中で司会の花守さんが見破ったのですが、これ、本大会の予選会で使った競技フィールドを細長く丸めたものらしいんです。
「こんな見るも無残な姿に!」と突っ込む花守さんに対して、本多さんは笑いながらこう答えました。
「予選のときにも何百回も練習したフィールドを、本番に連れて行ってあげたかったんです。」
えっ、なにその泣ける返し……!?
即座に「私が愚かでした。本当に申し訳ない」と反省する花守さんにウケつつも、私は私で、一人一人のロボコニストたちがどれだけの想いを抱えてこの場に来ているのか、思い知ったような気がしました。
これは完全に余談なんですけど、そんな光景を見ているとなんだか胸がいっぱいになってしまって、帰りは自分の子供たちにケーキを買って帰りました。彼らはロボコン全然関係ないんですけどね。感動のやり場がなくて。会場での胸アツを家庭に還元してしまいました。
というわけで、アツくてすごくてワチャワチャしている、とにかくいろんな魅力を持った大会。それが、小学生ロボコンでした。いやもうほんと良かった…。
ライター:石川大樹
「技術力の低い人 限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者、雑な電子工作作家。共著書に初心者向け電子工作本「雑に作る」(共著、オライリー・ジャパン)。
本業は編集者・ライター。よみものサイト「デイリーポータルZ」などで編集を担当。趣味はワールドミュージック収集です。
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