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接着基礎知識
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被着材の材質が何かと同時に、意外と忘れやすいのは、つけるものが本当に接着が可能な材料なのかどうかということです。難接着材料の場合、専用の接着剤やプライマーが必要になります。
まず、接着する材料の性質を良く検討した上で接着剤を選ぶ必要があります。
接着が困難な材料 | 接着しにくい材料 | |
---|---|---|
プラスチック | ポリエチレン(PE) | ポリアセタール(POM) |
ポリプロピレン(PP) | ナイロン(PA) | |
テフロン(PTFE) etc. | 各種エンプラ etc. | |
ゴム | フッ素ゴム(FKM) | シリコーンゴム(SI) |
ブチルゴム(IIR) etc. | EPDM ウレタンゴム | |
TPE etc. |
また、接着する面の状態や形状を考慮することも重要です。
凹凸がある場合や接着する2つの面が密着せずクリアランスが空いてしまう場合には、充てん性のある接着剤を選ぶ必要があります。瞬間接着剤やゴム系溶剤形接着剤、第二世代アクリル系接着剤などは密着しない面の接着には向いていません。
他にも、油面接着性のある接着剤を選ぶ必要がある場合や、塗装面やサビなどが付いていないかなどを考慮する必要があります。
表面に付着したサビや酸化皮膜、油脂をしっかり除去することが重要となります。
また、表面を平滑にするための研磨が必要となることもあります。
プラスチックには種類も多く、前述の様に、難接着材料であるものもありますので、ご注意下さい。
熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂のほか、一般的に熱可塑性の結晶性プラスチックは接着しにくいものが多くあり、極性の小さいポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(=ポリオキシメチ レン,POM、ジュラコン®,デルリン® など)、フッ素樹脂(=ポリテトラフルオロエチレン,PTFE、テフロン® など)は難接着材料です。簡易な覚え方として、「ポリ~レン」と名の付くものは難接着材料と覚えておくと便利です。
難接着するには、プライマーを併用したり、難接着材料用接着剤であるセメダインPPXや、ポリプロピレンやポリアセタールへのノンプライマー接着を可能にしたSX-PPK1000(EXP)をお試し下さい。
ポリスチレンやアクリル樹脂、ポリカーボネートなど、瞬間接着剤や溶剤形接着剤を用いて接着後、ひび割れを生じるものがあります。また、成型ひずみが残っている場合なども、接着後のひび割れが生じることがあります。
この様な場合は、弾性接着剤をお試し下さい。
軟質塩ビに含まれた可塑剤が接着層に移行し、接着剤を軟化させ、はがれの原因になることがあります。ニトリルゴム系接着剤のNo.540や、塩ビ樹脂系接着剤のNo.201F、弾性接着剤スーパーXなどをお選び下さい。
発泡スチロールは、溶剤形接着剤や瞬間接着剤を用いると簡単に溶解してしまいます。
弾性接着剤や、2液混合形エポキシ系接着剤、第二世代アクリル樹脂系接着剤であるメタルロック、発泡スチロール用接着剤をお選び下さい。
また、発泡スチロール以外の発泡プラスチックも、発泡していない同じ樹脂に比べると、溶剤に弱い場合が多いのでご注意下さい。
ゴムの表面には、離型剤や加硫促進剤、老化防止剤などが残っていることが多く、これらをしっかりと除去することが重要となります。
また、プラスチック同様に、ゴムにも難接着材料が多くあり、シリコーンゴム、フッ素ゴム、EPDM、ウレタンゴム、ブチルゴム、天然ゴムなどがそれに該当します。
つきにくいゴムの場合、表面をサンドペーパーなどで荒らし、弾性接着剤UTや瞬間接着剤3000RXなどをお試し下さい。
ガラスを透過した紫外線が接着面に当たると、接着剤が劣化し剥がれますので、接着面に紫外線が当たらない様な接合部設計が必要となります。
ガラスと異素材を接着した場合に、熱膨張係数の違いから、ガラスが割れてしまうことがあります。その場合、弾性接着剤をお選び下さい。
接着剤にも透明性を必要とされる場合には、エクセルエポなどをお選び下さい。
ガラスからのアルカリ溶出が多い場合、時間の経過とともに接着力が低下することがあります。特に、瞬間接着剤は、時間の経過ともに著しく接着力が低下するおそれがありますので、ガラスの接着には不適です。
表面にしみ出した加脂剤などの油脂分や、染料をしっかり除去することが重要となります。
ゴム系溶剤形接着剤を、皮革の裏面に塗った場合、吸い込みによって実際には接着していない部分(欠膠部)が生じることがありますので、二度塗りするようにしてください。
表面の水分だけでなく、木材の内部の水分もよく乾燥させる必要があります。乾燥の目安としては、一般的な木材の平衡含水率である15%以下が良いとされています。
コンクリートのアルカリ性による接着剤の劣化を避けるために、打設後の養生を3~4週間以上行い、乾燥も十分にし、ph10以下、含水率8%以下に管理することが重要です。
耐アルカリ性のある弾性接着剤やエポキシ系接着剤などをお選び下さい。
また、コンクリート表面のレイタンス、ゴミ、エフロレッセンス、砂塵、油脂分などの付着物をワイヤブラシやサンドペーパーなどで完全に除去する必要があります。
接着剤をどのような目的、用途で使用するのか。
しっかりと接着してしまいたいのか、一時的な仮止め接着か、充てん性の必要性があるかなどの条件で選ぶ接着剤の種類も変わってきます。
例えば、力を伝達しなければいけない金属同士の構造接着で、力を吸収・緩和する弾性接着剤を選んでも意味がありません。
また、ポッティングする場合は低粘度のものが必要ですが、反対に垂直面などに接着する場合は高粘度の接着剤が必要になります。
目的、用途に合う接着剤を選択するには、接着剤それぞれの基本的な性状、性質のどこに着目するかが重要となります。
被着材への接着性と目的、用途に合う接着剤を大まかに選択できたら、次は、接着した後はどのような条件が加わるのかを考えてみましょう。はがれるのは、たいていの場合、ついた後のことです。接着したモノが、その後どの様な場所で、どの様な使われ方をするのか考えながら、必要な耐久性能について絞り込む必要があります。
常に水や薬品がかかる、高温にさらされる、振動がかかるなどの条件を十分に把握して、それに見合う接着剤の性能を選びます。せん断接着力が200キロもあるからといって、屋外の振動のかかるところに瞬間接着剤を使用してはいけません。
耐熱性 | 耐寒性 | Tg | 耐水性 | 耐酸性 | 耐アルカリ性 | 耐アルコール性 | 耐機械油 | ||
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弾性接着剤 | スーパーXNo.8008 | 120℃ | -60℃ | -63℃ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
エポキシ弾性接着剤 | EP001K | 120℃ | -60℃ | -65℃ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
エポキシ系接着剤 | No.1500 | 80℃ | -10℃ | 54℃ | ◯ | △ | ◯ | △ | ◯ |
アクリル系接着剤 | Y610 | 100℃ | -20℃ | 90℃ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
瞬間接着剤 | 3000RX | 70℃ | -5℃ | △ | ◯ | △ | △ | × | |
ゴム系溶剤型接着剤 | No.575F | 70℃ | -20℃ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | |
酢ビエマルション接着剤 | 木工用605 | 60℃ | -10℃ | × | △ | × | × | ◯ |
※上記の表は、各接着剤系統における標準グレード品での参考値です。この他に耐熱グレードなどのラインナップがあります。
また、接着接合部にかかる力が、どの様な方向にどの程度加わるかなども考慮する必要があります。
接着層に受ける応力は、接合部の設計や被着材の形状などにより異なりますが、基本形は下図のように「引張り」、「せん断」、「割裂」、「はく離」の4つに分けられます。
この4つの基本形のうち、「引張り」「せん断」は接着面全体に一様な応力を受けることになり、接合部設計として適していますが、「割裂」「はく離」の場合は接着面の一方あるいは端部に応力が偏り、接合部設計としては回避することが好ましいといえます。
特に、硬化後の接着層が非常に硬くなるエポキシ樹脂系接着剤や瞬間接着剤は、「割裂」や「はく離」の力が加わるところには不向きといえます。一方、弾性接着剤は柔軟な硬化物性を持ち、「引張り」「せん断」はもちろんのこと、「割裂」や「はく離」の力にも強く、安定した接着力を示します。
接着剤の選定は今まで述べた三要素を満足させることが絶対条件で、その後に選定した接着剤に合わせた塗布または接着条件を設定していくことが好ましいのですが、現実には、生産性や既存ライン条件が優先されてしまうこともあります。
塗布方法、機械適性、硬化速度、安全衛生などの限定された条件に合う接着剤を選びます。
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