建築用 2026年06月10日

指の代わりになる指・コーキングフィンガー(林雄司)

コーキングフィンガーという商品を見つけた。
 
コーキングの仕上げをするための道具だそうだが、すごく指である。爪まである。
ヘラではだめだったのか、そもそもコーキングの仕上げは指でするものなのか。使ってみるしかなかろう。
 
これがコーキングフィンガー
Why wear out your finger? Just use mine! (なぜあなたの指をすり減らす?わたしのを使って!)
 
wear out は「すり減らす」という意味だった。「なぜあなたの指をすり減らすのですか?」なんて英文は文例集にも載ってなかった。
 
コーキングフィンガーに一目惚れしてしまったので説明を飛ばしてしまったが、まずコーキングとはなにかという話をしなければならない。
 
コーキングとはシーリングとも呼ばれ、建材などの隙間を埋める作業のことである。外壁材のあいだや洗面台と壁のあいだにゴムのようなものが詰まっているあれのことだ。詰まっているのがシーリング材/コーキング材で、詰める作業をシーリング、またはコーキングと呼ぶ。
コーキングフィンガーの紹介なので本稿ではコーキングに統一する。

うちの洗面台と壁のあいだのコーキング

作業としてはすきまにシーリング材をにょろ~っと入れて、仕上げにギュッと押し込む。コーキングフィンガーはその仕上げ作業のための道具だ。
 
ではコーキングフィンガーの話に戻る。
パッケージ裏面にもいかに優れているかを伝える文が並ぶ。
 
「自分の指より優れた物を見つけた!」
「あなたの指を傷つけることなく毎回完璧な仕上げを実現します」
「柔軟な指先が表面を傷つけない」
 
「自分の指より優れた物を見つけた!」って有史以来すべての道具にあてはまりそうなキャッチコピーで強い。
 
サイトの動画はもっと強い。
動画 Introducing the Caulking Finger by FWMM Products, LLC より
発明者であるダニエル・スチーブンソンさんは30年塗装工として働いていて、コーキングの仕上げを指でやることですりむいたり、怪我をしていたしていたとのこと。

ささくれが指に刺さりそうな隙間をコーキングしている。そりゃ怪我するって。
そこでダニエルさんが発明したのがこのコーキングフィンガーだ。
指の再発明
シーリング材を押し込むのは指の腹である。爪は必要だったのだろうか。
 
でも、そんなことはどうでもいい(最後にメーカーに聞いた回答があります)。なにせコーキングをしない私が衝動買いしてしまったほどだ。説明動画の再生回数のうち50回ぐらいは私が見ている。
3分15秒ほどの動画だが、説明は30秒ほどで終わり、残りはアメリカンロックをBGMにコーキングフィンガーが活躍するシーンが続く。
インスタのアカウントもフォローしたのでリールもよく見ている。みんな猫動画を見ているあいだ、私はコーキングの動画を見ている。
 
コーキングフィンガーにどれぐらい夢中かを早口に語ってしまった。
 
さて、いよいよこれでコーキングをやってみよう。ただ気になるのは、日本でコーキングの動画を見ると、仕上げを指でやってないことである。
シーリング材はセメダインからも発売されているので、セメダイン広報の手塚さんにコーキングの仕上げについて聞いてみると「レアですが指先で仕上げることもありますけど……」という控えめな答えだった。

コーキングフィンガーの前提がぐらついているが、聞かなかったことにして(すいません!)コーキングを始めよう。

コーキング初挑戦

家にコーキングしたい隙間がなかったため、練習用の台を作った。
ホームセンターで30円で売ってた端材を切って隙間ができるように貼った。もちろん使ったのはセメダイン木工用だ。

そしてシーリング材とコーキングガン、コーキングフィンガーを用意した。
「シーリング 方法」で検索して出てきた動画を見ると、コーキングするときにはその両脇にマスキングテープか養生テープを貼るらしい。
はみ出たシーリング材がくっつかないようにだ。
才能あるな、おれと思いました。
シーリング材をにゅる~っと入れる
そしていよいよコーキングフィンガーの出番である
写真の左のほうで親方に怒られそうなことになっているのはさておき
ぐぐーっとコーキング材を押しつける
これは、いいぞ。コーキングが初体験の人間がいいと言っても説得力ゼロだが、指で押しつけている感覚なので直感的に使える。これが専用のヘラだと「ヘラ 使い方」などで調べたくなるが、なにせ指なので押すだけだ。難しいことをしている感覚がない。
比較のために指でもやってみたが、同じ感覚だった。ただやっぱり生身の指だと木材の角で指が引っかかる。指がすり減ってしまう。
手も汚れる
そしてシーリング材はなかなか落ちない。

はじめてのシーリング、きれいにできた
養生した部分をはみ出てシーリング材がついているところやシーリング材が波打っているところがあるが、それらを除けば概ね上出来である。
失敗したところを除けば成功だ。
 
ちなみに比較のために日本では一般的なヘラでも作業をしてみた。

ヘラもいい!
しなることで力が伝わりやすい。ヘラもなかなかいい道具だ。まっとうな道具である。

だがこの自分の指でやっているかのような錯覚はコーキングフィンガーだけである
使いやすいし、心理的なハードルも低い。指であることの意味も理解できた。

メーカーに聞いてみた

コーキングフィンガーのサイトにメールアドレスが書いてあったので気になることを聞いてみた。
Q. 指のモデルは発明者ダニエルさんですか?そしてなぜ爪がついているのでしょうか?
 
A. この道具は発明者ダニエルの指をモデルにしており、本物の指に見えるように爪もついています。ほとんどの人はコーキングを素手の指でやるので、本物の指そっくりの道具を発明しようと考えました。
 
とのことだった。メールの返事が1時間ぐらいで届いてびっくりした。
 
これを機会にコーキングやってみるか、と思うほどの道具である。コーキングフィンガー。



林雄司:デイリーポータルZ編集長。ウェブサイト、書籍、イベントなどコンテンツ制作を行っています。
代表作は「ペリーがパワポで提案書を持ってきたら(ウェブ)」「顔が大きくなる箱(工作)」「死ぬかと思った(書籍)」「地味ハロウィン(イベント)」など。
好きな接着剤はセメダインD。

デイリーポータルZ
https://dailyportalz.jp/

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