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建築用
2022年03月14日
「私の部屋」を絶景に持っていこう! 2人で取り組むキャンピングカーDIY(チキチキバンバン)
キャンピングカーでいろいろな場所を自由に旅できたら、とても楽しそうだ。それがおしゃれなオンリーワンのキャンピングカーならよりいっそう旅が特別なものになるはず。
大きな車をキャンピングカー風に簡易DIYをして旅をする人は珍しくないが、なんと中古の救急車を本格的なキャンピングカーにDIYしている女性たちがいると聞き、会いに行ってきた。(取材・文:菅野りえ、撮影:壬生真理子)
-------------------プロフィール----------------------
チキチキバンバン(左:ちも氏 右:まりこ氏)
DIY、キャンプ、車中泊系YouTuber。元は建築学科で先輩後輩の関係だった2人組。DIY初心者の女子2人で【移動する部屋×絶景】を目指して、中古の救急車をキャンピングカーに改造する様子をメインに配信している。チャンネル登録者は約7.4万人(2022年2月時点)
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YouTube公式チャンネル
▶https://www.youtube.com/channel/UCG7H-rQqkyJTdVtTVQ0WwhA
そのほかSNS
▶Twitter: twitter.com/cheeky2van2
▶Instagram: instagram.com/cheeky2van2
「2人で一緒に、何か面白いことをしよう」でキャンピングカーDIYをスタート
都内の駐車場に向かうと、鮮やかな黄色の車体が目に飛び込んできた。
この黄色い車の持ち主は、まりこさんとちもさん。2人はキャンピングカーを作ろうと、2020年春先になんと救急車を手に入れDIY中だ。その傍らYouTubeで「チキチキバンバン」の名前でDIY動画を作成し配信している。
中を見せてもらうと、そこはまるで小さなペンションの一室のようなかわいらしさ。
車の中ほどにはキッチンと作業台が完成していて、後部に設置するソファ兼ベッドを作っている最中だという。
女子ならだれもが「かわいい……」とつぶやきそうなこの内装は、Instagramで公開されている海外のバンライフの写真と、ホテルや部屋の写真を参考にデザインしたという。
内装会議をする2人
まりこさんとちもさんは、大学の建築学科で同じ研究室に所属していた。先輩のまりこさんをちもさんが慕い、2人はあっという間に仲良しに。
まりこさんが大学を卒業するときはちもさんがまりこさんの卒業旅行に同行。2人で南九州をヒッチハイクして回ったという。ちもさんはその旅行を通し、「この人といると楽しい」と感じたそうだ。
卒業後、まりこさんは一般企業に就職したが、「高校の先生になりたい」と考え始める。しかし教員免許を取得するためには、通信制の大学で2年間勉強しなくてはいけない。教師になるなら今の仕事を続ける必要もないと退職することに。それをちもさんに話すと、ちもさんは「私も会社を辞めるから、まりこさんの2年間を私にちょうだい。2人で何か面白いことをしよう」と提案。まりこさんはそれを承諾した。
ちも
すごく面白そうだし、バンライフはまだブルーオーシャン。やろうよ、と提案して、キャンピングカーを作ることになりました
まりこ
ちものアイデアを聞いて、すごくいいと思いました。グランピングの流行が終わった後。次はバンライフが来そうだから先取りしたい!と思ったのです。
前例のない救急車DIYは困難の連続
2人は当初、キャンピングカーのベース車として使われることの多いハイエースの購入を考えていた。しかし訪れた中古車店で店長から「救急車はどう?」と提案され、それぞれを比較したうえで中古の救急車を購入することにする。2020年春先のことだ。
救急車を選んだ最も大きな理由は、ハイエースより天井が高く空間が広いこと。また、4WS(四輪操舵)なので小回りが利き、狭い道でも運転しやすい。
車のひずみ測定試験を受ける際、この車で片道7時間以上をかけて愛知まで移動したが「シートが良くて、全然疲れなかった」と2人は声をそろえた。
ところで、建築学科卒の2人ならDIYはお手の物かと思いきや、「DIYは初めて」なのだそう。学生時代は設計図を書くことが多く、実際に何かを作ることは少なかった。
「作るとしても紙で模型を作る程度です。のこぎりも電動ドリルもDIYで初めて使いました」
そんな2人がDIYを学んだのはYouTubeだが、実際に車のDIYを始めたとたん、大きな問題にぶつかった。
YouTubeに投稿されているキャンピングカーDIYで使用されている車はハイエースばかり。しかし2人が購入したのは救急車だ。そして、ハイエースと救急車には大きな違いがあった。
「解体して初めて知ったのですが、救急車とハイエースは材料や構造が違ったのです。救急車は天井に骨組みがほとんどなかったため、木をくりぬいて骨組みのような補強材を作り、入れるところからやらなくてはいけませんでした」
建築学科を卒業していても、2人がDIYするのは建物ではなく車。そしてDIY初心者だ。お手本のない「救急車DIY」は思いがけず困難を極めた。特に大変だったのは天井。動画ではカットされているが、実際は3~4回失敗し試行錯誤したという。
かなり難しいことをしようとしているのは想像にたやすい。投げ出したくならないのだろうかと聞くと、「負けず嫌いだから突破したくなる」とまりこさん。ちもさんは「失敗するとへこむけれど、余計に火がつく」と語る。
そんな苦労をした天井は、週に4日、1日7~8時間作業して、完成まで2か月かかった。
微妙に色が違う杉板がはめ込まれている天井は、ペンキを混ぜて板を6色に塗り、配置を考えながらはめ込んだもの。2人のこだわりが詰め込まれたレッドシダー風だ。
この天井づくりで役立ったのが、セメダインの接着剤「SG-1·L」だ。内装職人におすすめされたというこの接着剤を使うまでは、「なかなか接着剤が硬化せず、板が落ちる」と悩んでいた。
「SG-1·Lは段違いに強力でした。硬化も速いし剥がれない。早い段階で教えてもらえて本当に良かった」
ほかにも内装職人が教えてくれた優れものの材料がある。そのひとつがスレンダービスだ。ビス選びは難しく、適当に選ぶと木が割れてしまうが、スレンダービスなら割れにくいという。
ペンキ特有の臭いがしないミルクペイント、狭い場所でも作業しやすいフレキシブルシャフトと電動ドリルなど、DIYをしながら見つけていった「お気に入りの材料や道具」がたくさんある。それらで作られたこのキャンピングカーは、オリジナリティにあふれてかわいらしい以上に、2人にとってかけがえのない特別な空間になっていることを感じさせた。
キャンピングカーライフについて
--キャンピングカーが完成したら、どんな風に使っていく予定ですか?
ちも
お互い家族がいるので、最短1週間、長くて1か月くらいの旅をしたいと考えています。
--最初の旅行地の候補は?
ちも
まりこが住んでいた四国にも行きたいし、2人のスタート地点である九州にも行きたい。
まりこ
実は海外にも行きたいと思っていて。船でニュージーランドとかオーストラリアに行けたらいいな。
ちも
シーズンに合わせて行き先を選びたいです。この車での最初の旅は春の予定。北海道に行って広大なところを走りたい。
まりこ
ドローン欲しくなりそう(笑)
--どんな生活をイメージしていますか。
ちも
基本自炊をすることになるので、現地の食材をたくさん食べたい。洗濯はコインランドリーか手洗いかな。
まりこ
コインランドリーがいいな。
ちも
お風呂は温泉に行きたいね。
--キャンピングカーで旅をするからこその「できること」って何だと思いますか。
まりこ
私たちのコンセプトは「移動できる部屋」×「絶景」。自分たちで作った自分たちのこだわりの部屋を好きな絶景に持っていきたいんです。それができるのがキャンピングカー。いろいろな絶景と自分たちの部屋を組み合わせて、すてきな写真を撮りたいです。
コメント欄を通じ、視聴者もキャンピングカーDIYに参加
DIY初心者の2人がDIYにチャレンジするYouTubeチャンネル「チキチキバンバン」。せっかく何か作るならSNSで発信しようと思い動画を作り始めたが、当初はそこまで本腰を入れようとは考えていなかったそうだ。
しかし、コメント欄に寄せられる数々のアイデアや応援の言葉が2人を変えていく。
「たくさんの方がコメント欄に書き込んでくださって、本当に助けられています。各分野のプロの方からのコメントも多いです。キッチンシンクの動画を出したときは水道関係の方、電気回りの動画では電気関係の方、救急車なので救急隊員の方も」
DIY初心者で電気関係の知識もなかった2人。コメント欄の言葉に助けられることも多い。そうして次第に、YouTuberとしての活動に熱が入ってきたという。
真剣に動画作りに取り込む今は、企画会議にも時間をかけ、じっくり調べてから撮影を行う。その姿勢が伝わるからこそ、視聴者もコメント欄を通じて応援したくなるのだろう。チキチキバンバンの動画にはコメントが多く、2人がお気に入り(ハート)で答える以外に、視聴者同士がつけ合う「いいね」も多い。全員がエールを送りながら、キャンピングカーDIYになんらかの形で関わっているのだ。
2人だから「IoTキャンピングカーを作る」夢に挑戦し続けられる
2人は普通のソファベッドではなく、電動ソファベッドを作ろうとしている。
なぜ電動にするのかを聞くと、ちもさんが「IoT化したい」という夢を語ってくれた。IoTとはアレクサのように、モノをネットワークで接続しスマート化すること。
「スマートハウスやスマートカーはあるけれど、IoT化されたキャンピングカーはまだありません。キャンピングカーでIoT化したらどうなるのだろうという興味がありました」
実は配線も、将来のIoT化を考えた仕様にしているのだそうだ。
けれどベッドの電動化が難しく、今はアイデアを探っているところだという。手動のソファベッドならお手本もある。もっと楽に作れるだろう。けれど、そうしないのは「IoTキャンピングカーを作る」という目標があるからだ。
実際、アイデアに詰まって「だめかも」と思うこともあるという。
「私が諦めかけてもまりこに『いける気がする』って言われると、いけるかもって思います」とちもさんが話すと、まりこさんも「2人の『いけるかも』と思うタイミングが違う。それがいいと思います。どちらかの心が折れても、どちらかが「いける」と言えるから、それに励まされて頑張れる」と笑う。
意見が違ったら、とことん話し合い合理的に決める。客観的に見て良いほうを採用する方針だ。相手の意見が採用されても、実際にできたものが良ければ「ありがとう」と思えると2人は声をそろえる。
最高の相棒がいるからこそ、きっと2人が「イメージ通りに完成したキャンピングカー」を前にしたとき感じる感動や達成感は2倍、いや、きっとそれ以上だ。早くその姿を見てみたい。
DIYキャンピングカーなら、バンライフが実現できそう
昨今、キャンピングカーはとても需要が高く生産が追い付かないため、買ったとしても納車まで2年近く待つと聞く。そもそもキャンピングカーはかなり高額で、田舎に一軒家が買えそうな値段がついている車も多い。
そういった事情から、キャンピングカーで旅をする暮らしには憧れるが無理だろうと諦めている人がほとんどだろう。しかし、初心者でもここまで作れるという事例を見せてもらえると、「キャンピングカーライフにチャレンジするのも、そこまで高いハードルではないかも?」と思えてくる。何より、DIYのキャンピングカーはとてもかわいくておしゃれで、見ているだけで気分が上がる!
チキチキバンバンのキャンピングカーは、春から日本各地を旅する予定。
もしかしたら、あなたの町をチキチキバンバンの黄色い車体が通過するかもしれない。
※まりこさんは教員免許を無事取得しましたが、「今しかできないことをやろう」という思いからチキチキバンバンの活動を続行中です
ライタープロフィール
菅野りえ
旅と取材が好きな半ノマドのライター。
医療、美容、ポップカルチャーなど執筆領域は多岐に渡る。今年は人生初の味噌づくりにチャレンジ。ベジタリアン。
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