ものづくり 2022年09月08日

「ヘボコン2022」(前編)~3年ぶりのリアル大会! 優勝(大したことない賞)したのは?

7月31日、渋谷の東京カルチャーカルチャーにて、技術力の低い人限定ロボコン2022(通称:「ヘボコン2022」)が開催されました。新型コロナの影響があり、リアルな大会は3年ぶりとなりましたが、相変わらず個性満載のユニークなロボットが32体ほど出場し、会場を大いに沸かせてくれました。このレポートでは、2回戦から準決勝、決勝に駒を進めたトーナメントの模様を中心に紹介します。(取材・文/井上猛雄 撮影/丸山光)

あのヘボさ満載の熱き戦い再び、 3年ぶりのリアルとなった「ヘボコン2022」

日本中から「腕に覚えのないものたち」が集まるヘボコンですが、念のため簡単に概要を説明しておきましょう。ヘボコンは2014年に初めて開催され、同年に文化庁メディア芸術祭で「エンタテインメント部門審査委員会推薦作品」に入賞しました。それを契機に海外でも広まり、現在では世界25ヵ国以上で100を超えるイベントが催されています。いまや「Hebocon」は「OMOTENASHI」と同様に、世界に通じる共通言語になりました。2016年には、東京で世界大会も開かれています。

基本的には100×50cmのべニア板の土俵の上で戦うロボット相撲で、土俵から出たロボットが負けとなります。予選(1回戦)は11で戦い、2回戦は4体のバトルロイヤルとなり、また準決勝から11で、続く決勝へと、ガチンコ勝負で駒を進めていきます。戦いの制限時間は1分間。それで勝負がつかないときは移動距離が長いほうが勝ち。判定ができない場合は最終的にオーディエンスの多数決で勝敗が決まります。

ロボットの規定は、サイズが50×50cm以内(高さ制限なし)、重量は1㎏以内。この規定に引っかかるロボットも多いようです。そしてヘボコンが他のロボット大会と異なるユニークな点は、優勝するような「強いロボット」はヘボコンじゃないところ。そもそも完成していないロボットもたくさん参加しています。さらにハイテクノロジーを使うとペナルティが課されます。また、いつも優勝者が申し訳なさそうにしているのも印象的なシーンです。

実は、ヘボコンで栄えある真の優勝者は、観戦者やネット視聴者からの投票で決定される「最も技術力の低い人賞」(通称:最ヘボ賞)なのでした! ヘボコンの魅力については、最ヘボ賞を3回受賞しているレジェンド、こやしゅんさんにインタビューをしていますので、こちらをご参照ください。

本レポートでは、2回戦の4体バトルロイヤル戦から報告します。すべての試合はカバーしていませんが、予選1回戦で敗退したロボットもキラリと光るユニークなヘボコンばかりなので、しっかりとご紹介していきたいと思います。

▲3年連続で「最ヘボ賞」を受賞したこやしゅんさん。トロフィーは小学生が作成した手づくり作品です。今年は4連覇できるたのか? 期待も高まります。

クローラー型で馬力のあるヘボコンに強み~2回戦/第1試合はカオス状態

さて、2回戦からの4体バトルロイヤル戦ですが、やはり第1試合から第4試合まで、まさにヘボコンらしい収拾のつかないカオス的な戦いになりました。

【第1試合】参加チーム:TOCATTI×イカサンチーム×常盤の森ねこねこカレッジ×チームノックアウト

TOCATTIさんは、クローラーの戦車の上に、北海道を象徴するヒグマのぬいぐるみをかぶせた機体を製作しました。ヒグマの両腕がぐるぐる回転しながら、相手をアッパーで倒す仕組み。北海道的な要素としてキツネのハガキや、ラベンダーと匂い袋も付けてあります。小型ながらクローラー式(キャタピラー)の車体で馬力があり、予選を勝ち抜いてきました。

▲はるばる北海道からやってきたTOCATTIの「試される大地北海道の全力Mk.180」。北海道といえば、やはりヒグマでしょう!

イカサンチームは、本体がジャンプしたり、横からイカパンチを食らわしたり、イカの日干しの回転輪で相手を吹き飛ばしたりと、ギミック満載のロボットで戦いに臨みました。オペレーターも手づくりのイカのお面を被っており、ロボット同様にキャラの濃さが印象的でした。

▲名前にすべての攻撃要素が詰まっているというイカサンチームの「ジャンピングイカパンチハリケーン」。かなり攻撃力がありそうだ。

常盤の森ねこねこカレッジは錯乱系!? のヘボコンを開発。古典制御理論の教科書を搭載し、難解な「ラプラス変換」(微分方程式を易しく解くための数学)の章を、ページめくり機構で相手に見せつけて動揺させる作戦です。必殺技を発動するスイッチのON/OFF回路を逆に配線し、スイッチを離さないとONにならないというヘボさを見せました。

▲常盤の森ねこねこカレッジの「インテリ君1号」。前面には制御理論のブロック線図の訂正も(笑)。相手を錯乱させる作戦ですが、果たして上手くいくのでしょうか?

チームノックアウトは、大阪・淀川でゴミを清掃するベルトコンベア船を模したクローラー型ヘボコンで参戦。正面に光学迷彩シートを搭載し、相手に本体が見えないように工夫しています。ただし実践ではシートを上げるため、ほとんど意味がありません(笑)。また水周りのトラブルを解決する面白い広告を装飾していた点がインパクトあり! なのでした。

▲チームノックアウトの「ベルコンI型」(べるこんいちがた)。水周りのトラブルを解決する広告が印象的だ。

第1試合の4体は、いずれも機動力に優れたロボットでした。特にクローラー型は馬力があります。ただし試合は混戦模様となり、最初に「ジャンピングイカパンチハリケーン」が場外に追いやられ戦線離脱。残り3台の戦いになりましたが、最終的に時間切れとなり、移動距離を一番稼いだチームノックアウトのベルコンI型が準決勝に駒を進めました。

▲勝負に勝つには、馬力があるクローラー型が有利。ただしヘボコンでは勝つことは第一義ではありません。

大型ロボットが集結した2回戦/第2試合~三つ巴の押し相撲で膠着状態

【第2試合】Live and JET Jet Die×エムワイ×謎の花園ナゾノハナゾノ×田中源士さん

ワシントンD.C.からやってきた外国人チーム、Live and Jet Dieのロボットは、アメリカ合衆国議会議事堂をモチーフにしていました。電気を一切使わず、車輪のシャフトに巻き付きつけた糸を、ネズミ捕りのバネで引っ張って動かす仕組みです。ネズミ捕りはアマゾンで購入したそうです。

▲Live and Jet Dieの「政治の重みを感じるロボット」。サイズが大きく重量もあるため、前輪のタイヤを外して軽量化しています。

エムワイさんのヘボコンは、自分の好きなニワトリとガリレオなどの人形を載せて、振り子の力によって相手を倒す作戦です。しかしロボット自体は移動しないため、相手から攻撃をしかけてもらわなければ戦えないという「不動」のヘボさがありました。

▲エムワイさんの「ガリレオも絶対メロメロになると思うよ。かわいいぜ」。振り子で相手をのせるのか。それは不明(笑)。

ナゾノハナゾノさんは、謎解きの問題シートを搭載し、相手のオペレータの注意を削ぐという攪乱作戦を練りました。今回は問題を5問も用意して参戦。ただクイズ好きの相手でなければ効果が発揮できません。ロボットの駆動系には、ドンキで購入したラジコンを使用しました。

▲ナゾノハナゾノさんの「ナゾノロボット」。本戦前日にキャンセルが出て参戦が決まり、急ごしらえで機体を製作。

田中源士さん(ザマプロ)は、風船を飛ばして相手を攻撃するというユニークなヘボコンを考案。ただし風船はどこに飛ぶか分からないため、相手を倒せるのかは不明です。また風船が暴発したり、風船の空気が抜けたりするというヘボポイントもあります。

▲田中源士さん(ザマプロ)の「ヘボコンライガー~バルーンフォルム~」。風船を武器にする点がユニークです。

2回戦/第2試合のロボットは、大型のものばかりが集合しました。ヘボコンライガーと、政治の重さを感じるの間に、謎の花園が挟まる形で三つ巴の戦いになりましたが、いずれも力が拮抗して膠着状態に。こちらも第1試合と同様に判定となり、移動距離が一番長いバルーンフォルムが勝者となりました。

▲第1戦/第2試合で勝者となった田中源士さんは、実戦で風船が上手く飛ばせたので、満足した様子でした。

コンパクトなヘボコン同士の2回戦/第3試合~シャボン玉を出す機体も

【第3試合】inuro×友優×●たかたけいた君×杉浦電機仙台支店

inuroさんのヘボコンは、ハリウッドをテーマにして、ヒーローのフィギュアなどをダクトテープでラジコン車体に貼り付けたもの。車体周りにもダクトテープの罠があり、相手を粘着で絡め取る作戦です。ただし、テープをぐるぐる巻き付けたので電池を交換できず、バッテリがなくなる心配がある点がヘボさのポイントとのこと。

▲inuroさんの「アメリカンヒーロー」。ヒーローのフィギュアがたくさん。相手を絡め取るダクトテープの罠は、意外と粘着性が強かった。

友優(ゆうゆう)さんは、花粉の代わりに対戦相手に胡椒を撒くロボットをつくる予定でしたが、人道的な見地!? から断念。バランを200枚取り付けて杉の木にしたそうです。車体がゆっくり回りながら、相手にソフトタッチで接触して攻撃するという作戦。まさに優しい木のコンセプトになりましたが、実際には馬力がある強いロボットに仕上がっていました。

▲友優(ゆうゆう)さんの「人に優しい杉の木」。 製作しているうちに重量がだんだん重くなって力強いヘボコンに。

最年少のたかたけいた君は、ダンボールで軽量のヘボコンを作りました。ダンボールの中にプラレールを2台入れて、動力として駆動させていました。またダンボールのフロント部に棒があり、そこで相手を突いて攻撃する点が特徴です。

▲たかたけいた君の「ダンボ―」。けいた君は、本大会では最年少で、優しいお母さんと一緒に参加しました。

杉浦電機仙台支店さんは、カプチーノの撹拌機を搭載し、その振動を台座のタワシに伝えて動くヘボコンを開発。ヘボポイントは、駆動がタワシ任せになるので、どの方向に行くのか分からない制御不能なところです。さらにシャボン玉を撒いて相手を攪乱させる作戦も、他のロボットにないユニークな点でした。

▲杉浦電機仙台支店さんの「ブルブルブールX」。どの方向に動くか分からない、ゾウリムシのようなヘボコンで参戦。

第3試合は非常にコンパクトなヘボコン同士の対戦でした。面白かった点は、ブルブルブールXから噴き出されたシャボン玉によって、アメリカンヒーローが泡だらけになってしまったこと。また人に優しい杉の木と、ダンボーの押し相撲に加えて、アメリカンヒーローのダクトテープがダンボ―に粘着して、団子状態になってしまいました。結局、試合の判定は会場の挙手によって決められ、たかたけいた君が準決勝に進みました。

▲唯我独尊のブルブルブールX以外、三つ巴の戦いになった第2戦/第3試合。泡だらけになったアメリカンヒーローは見ものでした。

サウンド系ロボットの奇妙な対戦~2回戦/第4試合~メガホンとシンバルの威力は?

【第4試合】PikoPikoFactory×イシイハジメ(ザマプロ)×四国無双

サウンド系ロボットが得意なPikoPikoFactoryさんは、昨年に引き続き、音に関係するヘボコンを製作しました。ラジコンに3つのメガホンを取り付け、マイクを通じて大声で歌って、相手を攪乱させる作戦です。当初、駆動系にランボルギーニとタイガー戦車を使う予定でしたが、重量オーバーで使えず、名前だけが残ったとのこと。

▲PikoPikoFactoryさんの「音響兵器ランボルギーニタイガー」。大声で歌ったものの、相手を攪乱はできなかったようです(笑)。

イシイハジメさんもサウンド系のロボットで参戦しました。不気味な表情のサルたちがシンバルをバチバチと叩きながら、大きな音で相手を威嚇して、戦意を削ぐという作戦を立てました。実際の試合でも、かなりの音量の騒音を立てていました。

▲イシイハジメさんの「戦慄の爆音ロボ ツインシンバル君」。サルの顔のインパクトは、騒音以上に相手を威嚇するのに絶大だった。

初戦で不戦勝となった四国無双さんは、「ドローン」という名前のロボットを製作しましたが、CDの台座に風船を取り付け、扇子でパタパタと風を送りながら動かすという原始的なヘボコンでした。四国からはるばる対戦に来ましたが、飛行機に搭乗する際に風船を没収されてしまい、郵送したもう1つの風船だけで参戦しました。これもヘボポイントでしょう(笑)。

▲四国無双さんの「ドローン」。扇子でパタパタと風を送りながら風船を動かすという、まさにヘボコンのお手本のようなロボット。

第4試合は、2台がサウンド系だったので、動きの点で四国無双さんの「ドローン」の風船が目立ちましたが、途中で場外に脱落。一方、残りの2体のロボットが、騒音を武器に対戦するというミスマッチが見どころになりました。派手な動きを見せなかった両者ですが、終盤になってから、なぜかツインシンバル君がいきなり動き出し、音響兵器ランボルギーニタイガーを土俵際まで追い詰めて、最終的にツインシンバル君が勝者になりました。

▲第2戦/第4試合ではサウンド系とドローンという名の風船!? のミスマッチ対戦。騒音を撒き散らしても勝つ要素はないが、そこがヘボコンの面白さ。

いよいよ準決勝戦と決勝戦、優勝(大したことない賞)したのは誰?

予選と2回戦を勝ち進んで、準決勝戦ぐらいになると、対戦するロボットも華やかになってきます。というのも、ヘボコンでは敗者のロボットの部品を勝者に委ねるという風習があるからです。勝者は敗者の気持ちを背負いながら、次の戦いに挑むことになります。

【準決勝戦/第1試合】チームノックアウトさん×田中源士さん

▲準決勝/第1試合の対戦。チームノックアウトさん(右)×田中源士さん(左)。ベルコンI型が、バルーンフォルムを場外まで押し出して勝利。

チームノックアウトさんの「ベルコンI型」は、敗者からもらったイカやマリモなどを搭載して参戦。一方、田中源士さんのバルーンフォルムは、ナゾノハナゾノの謎解きクイズのシートやLive and JET Dieのワシントン記念塔の尖塔などを装着。試合では機動力に優れたクローラー型のベルコンI型が、バルーンフォルムを力強く上に押し上げて、一挙に場外まで押し出しました。

【準決勝戦/第2試合】イシイハジメさん(ザマプロ)×たかたけいた君

▲準決勝戦/第2試合の対戦。イシイハジメさん(右)×たかたけいた君(左)。たかた君のダンボーの突撃は会場を沸かせた。

イシイハジメさんのツインシンバル君には、メガホンや子象など、たかたけいた君のダンボーにはアメリカンヒーローの上半身やミッフィーの腕など、敗者の要素が取り付けられました。勝敗の行方は、たかた君のダンボーが勢いよく突き進んで、重量のあるツインシンバル君を押し出して勝利をつかみました。

【決勝戦】たかたけいた君×チームノックアウトさん

▲たかたけいた君×チームノックアウトさんによる決勝戦。機動力のあるベルコンI型が、ダンボーを土俵際まで押しやって優勝!

そして、ついに決勝戦です! ただヘボコンでは決勝戦に進むロボットは強いロボットという認識なので、いうなれば消化試合のような雰囲気があります。これも価値が反転していてヘボコンの面白いところです。決勝戦では、チームノックアウトのベルコンI型が、たかたけいた君のダンボーを土俵際まで押しやり、見ごとに勝利をつかみました。子供と大人の戦いなので、勝利したチームノックアウトは「すみません」の一言で平謝り(笑)。

準優勝のたかた君には、100均の工具と工具箱セット、優勝(大したことない賞)のチームノックアウトさんには、ご褒美カップが贈られました。

▲子供だからといって手を抜かず、相手をリスペクトしながら戦ったチームノックアウトさんに賛辞が贈られた。

後編では、予選で敗退したものの、個性的でユニークだった面白いロボットをすべて紹介します。また、栄えある「最ヘボ賞」を獲得したヘボコンについても、お楽しみに!

【後編】はこちら!


井上猛雄産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、株式会社アスキー入社。「週刊アスキー」副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにエンタープライズIT、ネットワーク、セキュリティ、ロボティクス、組込み分野などを中心に、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書は、「災害とロボット」(オーム社)、「キカイはどこまで人の代わりができるか?」(SBクリエイティブ)など。

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