工業用 2022年07月11日

EVバッテリーにおける放熱ギャップフィラーの必要性(セメダインの放熱ソリューション・後編)

2020年に運用開始された、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」では、協定参加各国に対して厳しい温室効果ガス排出量の削減目標を設定しています。そうした動きにより、欧州を中心とした自動車メーカーでは、ガソリン車やハイブリッド車の開発中止を表明するなど、カーボンニュートラルを目指すビジネスに急速にシフトしています。

今後、電気自動車(EV)の生産台数が急激に増加し、2030年には世界の自動車新車販売台数の1/2がxEV(次世代車)になると予測されています。

パワートレイン別世界自動車新車販売台数推移・予測(2021年以降は予測値)
出典:(株)矢野経済研究所「次世代車(xEV)用キーデバイス/コンポーネント世界市場に関する調査(2021年)」2021年9月27日発表 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2799

「1回の充電でどれだけ走行できるか」は、EVを購入する顧客にとって非常に高い関心ごとであるため、自動車メーカー各社はいかにバッテリー容量を高めるか、しのぎを削っています。また、EVを長く愛用してもらう、あるいは保守サービスのコストを抑えるためには、バッテリーの寿命を延ばすことも重要です。そして現在のEVで主流のリチウムイオンバッテリーは、熱源の塊です。上記のような要件を満たすために、EVにとってのバッテリー放熱対策は生命線とも言えます。

EVのバッテリーパックは多くの場合、車両床面の広い範囲に搭載されます。バッテリーパック筐体には数多くのバッテリーセルが密集して詰まっています。当然ながら、非常に熱がこもった状態となります。

 

EVのバッテリーパックと放熱ギャップフィラー

そこで、バッテリーパック筐体の内側に放熱ギャップフィラーを塗布することですき間(空気の層)をなくし、筐体に熱を伝えて効率よくバッテリーの熱を逃がす構造にします。

放熱ギャップフィラーは、部品に塗布して、空気だまりや隙間を埋めるために使用します。ヒートシンクや金属ケースと組み合わせて、熱源または蓄熱部品からの熱を放散します。

セメダインの放熱ギャップフィラー「SX1502」は、ディスペンサーによる常温高速塗布(15ml/sec以上)が可能で、量産タクト向上に貢献する優れた作業性・耐久性を兼ね備えています。また感温特性が優れており、ディスペンサーや塗布条件に合わせて放熱ギャップフィラーの粘度を自在に制御できるため、素早く塗布しながら、均一かつ確実に硬化させていくことができます。

高速塗布で量産タクトを高める——2成分型放熱ギャップフィラー

SX1502は、2液を混合して使用する弾性接着剤を基に、放熱ギャップフィラーの用途に特化させた製品で、優れた追従性を備えています。塗布時の粘度を自在にコントロールできるため、製造する製品やディスペンサーの都合に合わせた、効率の良い運用ができることもメリットです。二液混合型であるため、湿気を遮断した場所でも硬化するため硬化阻害が起こりにくいので、特に大面積かつ大容量の塗布時の効率を高めることができ、未硬化の部位が生じてしまう事態も防ぎます。
さらにディスペンサーのダメージを低減する、独自開発の低摩耗充填剤を含んでいるため、設備の高寿命化につながり、メンテナンス費用の削減にも貢献します。

またバッテリーパック内に詰められたセルは使用時に熱によって膨張・収縮を繰り返します。硬化後も弾性を保持するSX1502であれば、その膨張や収縮を吸収することで接着物の剥がれ・ズレを抑制でき、放熱性能を維持します。

外部衝撃の影響のちがい

バッテリーに強い衝撃が発生した際、高硬度品ではPETフィルムが簡単に破損が発生するが、弾性品(セメダインの放熱ギャップフィラー)では発生しない。

このように、硬化後も柔らかくしなやかなセメダインの弾性接着技術が、新たな社会を築くための課題解決手段の一部としてお役に立てるということは、この上ない喜びです。それは将来の新しい接着剤を生み出すための大きなモチベーションとなっているのです。

セメダインはこれからも、省エネルギー化や長寿命化、再利用性向上といった性能で、カーボンニュートラルを目指すものづくりを支援する接着ソリューションを開発・提供してまいります。
(取材・文 小林由美)

【前編】柔らかくしなやかに熱を逃がす、セメダインの接着剤を用いた熱対策のいろいろ

img_TCA2_004.jpg

セメダインの放熱ギャップフィラー【SX1510】→詳細はこちらから


ライター:小林由美
町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、IT系メディアに入社。技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。


 

関連記事

タグ一覧

もっと見る

PAGE TOP

コピーしました