工業用 2022年07月11日

柔らかくしなやかに熱を逃がす、セメダインの接着剤を用いた熱対策のいろいろ(セメダインの放熱ソリューション・前編)

製品の高性能化・スマート化の中で高まる熱対策へのニーズと接着剤の役割

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世の中にインターネットが普及し、家電、自動車、工場設備など、あらゆるものでス マート化やIoT化、高性能化が加速しています。このような製品には小型化が求められ、狭い筐体内に数多くの電子部品や配線がひしめき合っています。今日流通する多くの製品の中身は、まさに“熱源だらけ”ともいえる状態です。そのため、極めて限られた設計制約の中で、いかに効率のよい熱対策が行えるかが、製品設計者の手腕の見せどころであるといえます。

設計課題に応じて活用できる、セメダインの熱対策製品の特長

かつて「モノを強固に接着する」ために誕生したセメダインの接着剤なのですが、顧客ニーズに真摯に向き合い、、弾性接着剤「スーパーX」のような単に強力接着するだけにとどまらない接着剤を開発してきました。近年ではこの「スーパーX」にさまざまな機能を付与した高機能型スーパーXを開発しています。この中でも昨今、セメダインユーザーのニーズが高まっているものの1つが、「熱対策」です。

ここからは、セメダインの熱対策製品について、特長別に3つに分類して紹介します。

高い接着性を有しながらも、弾性・放熱特性を保持——1液型弾性接着剤

世の中に送り出される電気・電子部品の集合体では、所狭しと部品が並び、もはや部品を追加する余地がないような状態となっていることは皆さんもご存じかと思います。このような設計の中で、当社の接着剤は2つの機能である「接着(組立)」と「放熱」を同時に成立させます。これは、放熱用途に使用されるグリスや放熱シートにはない、大きな特長となります。セメダインの熱対策向けの製品としては、1液タイプの弾性放熱接着剤「SX1008」「SX1010」「RH96L」があります。

セメダインの放熱接着剤「SX1008

これらは、部材に対する高い接着性を有しながらも、放熱性も兼ね備えている接着剤です。1液タイプのため混合やプライマー処理が不要であり、常温で硬化するため、製造工程においてシンプルかつ低コストで運用することが可能です。接着剤は、塗布時は液状で、塗布後に硬化(あるいは半硬化)するものであることから、複雑な形状の製品に対しても追従性が高く部品間のすき間をしっかりと埋めることができます。これらの特長は、放熱シートでは難しいさまざまな部品への適応性を向上させるとともに、放熱グリスでは難しい隙間充填(放熱特性の確保※)も可能にします。
※熱対策にグリスを用いた際、ポンプアウト現象(経時により部品間からグリスが揮発したり、漏れ出したりすることで隙間が発生すること)が起こりやすい。これにより、グリス本来の放熱特性を発揮できなくなる。

スーパーXの特性である、硬化後でも維持する高い柔軟性と耐久性を生かして、強い衝撃や熱サイクルにより繰り返しかかる負荷から筐体や部品を守り、部品破損や故障を防ぐことに貢献します。温度変化による物性変化が少ないことも特長です。

また、従来の部品固定につかわれる接着剤はシリコーンを原料に使っているものが多い為、接点障害の原因となる低分子シロキサンを発生させてしまいます。スーパーXは低分子シロキサンを含まない変成シリコーンポリマーを用いているので、低分子シロキサンを原因とする接点障害の心配がありません。

放熱シート・・・部品と部品の間の空隙に追従できず、密着性が劣ることで放熱性能が非効率となる。

セメダインの放熱接着剤・・・部品と部品の間の空隙にもしっかり追従でき、効率的に放熱性能を引き出すことが出来る。

部品交換時に剥がしやすい——1成分型リペアラブル放熱接着剤

放熱接着剤「SX1306」は、上記製品と同様に優れた追従性があり、接点障害を引き起こすガスを発生する低分子シロキサンを含まず、放熱性の損失が起こりづらいといった特長を備えています。これらに加え、SX1306が持つ最大の特長が「硬化後の剥離が容易」という点です。「“接着”剤なのに、剥がれてもよいのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。結論からいえば「それでよい」のです。セメダインがもつ技術の一つとして、接着性のコントロールがあります。同製品には意図的に、「剥がしやすい」設計をしているのです。

その理由は、不良の部品や、故障した部品、寿命を全うした部品などの修理や交換をやりやすくする、「リペアブル」特性を持たせるためです。

液状で自由な形状に塗布でき、硬化後はリペア性を有する

SX1306を、電子部品の放熱部材の1つである「TIM(Thermal Interface Material)」として活用する場合では、例えばTIMを塗布した後に部品の不良が発覚しても、TIMをきれいに剥がして部品交換に対応できるため、取り付け先の部品や基板ごと製品を破棄せざるを得ないといった事態を防ぐことができます。さらに製品をリサイクルやリユースする際にも、TIMが部品交換の妨げになることなく、正常に動作できる部品を生かして製品をよみがえらせることも可能になるのです。(文 小林由美)

【後編】EVバッテリーにおける放熱ギャップフィラーの必要性

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セメダインの放熱接着剤→詳細はこちらから


ライター:小林由美
町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験した後、IT系メディアに入社。技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。


 

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